あの外角低めの直球をもう1度!最強のセットアッパー岩嵜翔の復活が見たい
ソフトバンク時代の岩崎 翔
妙に寂しい気持ちになった。毎年シーズンが終わると、各球団による戦力外通告が行われる。今年は、中日から戦力外となり、育成契約が打診されている3504投手(市立船橋出身)に心がざわついた。ソフトバンクがFAで獲得した又吉 克樹投手(西原出身)の人的補償として中日に移籍した右腕だ。ソフトバンク担当記者時代に、取材させてもらったが、マウンド上の雰囲気同様、寡黙な表情の奥に熱い闘志を持つ男で、黙々と自分の仕事を全うするタイプだった。
苦労してきた。高校生ドラフト1位でプロ入りするも、初勝利は4年目だった。好投するも勝利から見放されることも多かったが、自分を見失うことなく、努力を重ねた結果だった。その後、先発として結果が出なかったこともあったが、今度は中継ぎとして大きく輝くことになる。14年から中継ぎとして起用されはじめ、17年には勝利の方程式の「8回の男」として、最強のセットアッパーぶりを見せつける。72試合登板、46ホールドポイントはいずれも球団記録。平成生まれでは初となる最優秀中継ぎ投手のタイトルも獲得した。150キロ後半の切れ抜群の直球と、出し入れ自在のフォークボールを武器に、相手の反撃を許さない投球には、ほれぼれしていた。特に、糸を引くような外角直球で見逃し三振を取るシーンが頭に残っている。
翌年、右肘が悲鳴を上げ手術という悲劇を味わったが19年に見事に復活。20年には2夜連続で逆転弾を浴びて2軍降格の悲劇も味わったが、シーズン終盤には復帰登板でピンチを抑えるとそこから7試合連続無失点と完全復活。ポストシーズンでは3試合無失点の好投でチームの4年連続日本一に貢献した。21年には守護神にもなった。
しかし人的補償で中日へ。そしてまたも手術を受け、リハビリを続けている。育成での契約も、球団が復活を信じているからこそだろう。
天国と地獄を知る経験豊富な中継ぎ右腕は、必ずやまた復活してくれる。寡黙な男がマウンドで雄叫びを上げる姿が見られると信じている。
(記事=浦田 由紀夫)