98年世代左腕の中でNo.1の実績を残した堀瑞輝。飛躍を予感させたアジア大会と国体の快投
高校時代の堀 瑞輝(広島新庄)
今年、最優秀中継ぎ投手賞を受賞した日本ハム・堀瑞輝投手(広島新庄出身)。今季は39ホールドを挙げ、一流選手の仲間入りを果たした。堀はオリックス山本由伸投手(都城高出身)と同じ98年世代の投手だが、左投手で最も成功を収めている。
あるウェブラジオに出演し、ドラフト候補生の順位付けをしたことがある。1位にしたのは西武の今井達也投手(作新学院出身)。2位にしたのが堀だった。
この年、人気だった左腕は寺島成輝投手(履正社-ヤクルト)、高橋 昂也投手(花咲徳栄-広島)の2人だった。寺島については16年年明けからドラ1候補として注目されていた。堀が2人より高い評価をするきっかけとなったのは甲子園後のアジア大会、国体だ。
堀は3年夏の甲子園でも十分良かった。関東一(東東京)戦では延長12回を投げきり、1失点完投勝利、続く富山第一戦も1失点完投勝利。木更津総合(千葉)戦は敗れはしたが、9回2失点、7奪三振の好投。大きく評価を上げていた。
ただ、この時は「外れ1位候補」になるとは思わなかっただろう。U-18代表に選ばれ第11回 BFA U-18アジア選手権で快投した。ホスト国・台湾戦で2試合に登板した。第1ラウンドでは今井のあとをつないで、5回途中から登板し4.2回を投げ、7奪三振。そして決勝戦では6回から登板し、4イニングで8奪三振。最速148キロのストレートは唸りを上げ、左スリークォーター特有の曲がりを見せる切れ味抜群のスライダーは全く打たれる気がしなかった。胴上げ投手となり、アジア大会優勝に大きく貢献。まさにMVP級の快投だった。
堀は岩手国体でも凄みが増していた。明徳義塾(高知)戦では、5回途中から登板し、4.1回を投げて5奪三振の好投、さらに東邦(愛知)戦では中継局のスピードガンで150キロを計測。ストレートだけではなく、140キロ台のストレートを見せてから、100キロ台のカーブを交ぜるなど、緩急自在の投球で14奪三振、1失点完投勝利を挙げた。そして準決勝の聖光学院(福島)戦は、雨天順延の影響で、ダブルヘッダーに。堀は同日で2試合に登板したがそれでも2.2回を投げて、4奪三振。最速147キロをマークし、連投でもクオリティーが落ちていなかった。
決勝戦では登板がなく、これが堀最後の高校野球の公式戦登板となった。甲子園、アジア大会の快投により人気は上がっており、岩手国体では堀を応援していた女性ファンは多かった。
甲子園終了後からの成長率はこの世代ではダントツで、それを国際大会や公式戦で示したことで各球団からの評価は急上昇。11球団の調査書が届き、日本ハムから外れ1位指名を受けた。
同世代であまり結果が出ていない投手の中には、実績の割にストレートの勢いが感じられず、不安を覚える投手もいる。実際にプロで苦しんでいるので、高校生は最後まで状態を見極めないといけないと痛感させられた。
その点、堀は高校3年秋の状態をベースにうまく技術を身に着けていると思う。現在の成功はプロ入りしてから、色々な指導や、出会いがあったと考えられる。今後も実績を重ねてほしい。
(文・河嶋宗一)