楽天高卒投手の勝ち星は安楽だけで、先発陣はゼロ
済美高校時代の安楽 智大
2021年のペナントレースは、セ・リーグがヤクルト、パ・リーグはオリックスが優勝を飾った。ヤクルトは奥川恭伸投手(星稜出身)、オリックスは宮城大弥投手(興南出身)と高卒2年目の投手が飛躍。チームに欠かせない存在となった。その他にもロッテ・佐々木朗希(大船渡出身)や阪神・及川雅貴投手(横浜高出身)ら、同じく高卒2年目の投手がクライマックスシリーズに進出したチームの戦力となった。
彼らのように生え抜きの高卒投手が早い段階で計算できるようになると、チームにとってはこの上なく大きい。国内FA権の取得までの期間が大学生や社会人出身の選手と比べ1年長いからだ。
さて、各球団の生え抜き高卒投手は、今シーズンどれだけの勝ち星を挙げているのかを振り返ってみたい。
石井 一久GM兼任監督体制で臨んだ楽天は3位に終わった。クライマックシリーズではファーストステージでロッテに対して勝ち星を挙げることができず敗退した。
先発陣を見ると、生え抜きでは則本 昂大(11勝)、瀧中 瞭太(10勝)、早川 隆久(9勝)と、大卒・社会人の投手が勝ち星の上位を占める。早川と同じく9勝の岸孝之は移籍組。その後に続くのも移籍組の涌井 秀章(6勝)と専門学校卒の西口 直人(5勝)となっており、生え抜き高卒の投手の名前は出てこない。
高卒のドラフト指名選手というくくりだと田中 将大が4勝を挙げているものの、ヤンキースで7年間プレーしており純粋な生え抜きではない。その他を見ても今シーズン先発で白星を挙げた生え抜きの高卒投手はひとりもいなかった。そもそも生え抜きの高卒投手で先発したのは、2011年ドラフト2位の釜田 佳直(金沢)の1試合だけに終わっている。
今シーズンの楽天で生え抜きの高卒投手として唯一、白星を挙げたのは中継ぎの安楽 智大だった。2014年ドラフト1位で指名され、済美から楽天に入団した右腕は、昨シーズンから中継ぎに転向。今シーズン自己最多となる58試合に登板し、3勝3敗2セーブ、22ホールド、防御率2.08と結果を残した。58試合の登板はチーム2位、22ホールドはチーム3位となっており、石井監督をはじめとした首脳陣の信頼を勝ち取った。後半戦に故障で離脱した松井 裕樹は、43試合に登板し24セーブ、防御率0.63と快投を見せるも勝ち星はなかった。
10月に行われたドラフト会議で指名した高卒の投手は、育成まで含めても泰 勝利(神村学園)ひとりだけだった。昨年も6位の内 星龍(履正社)ただひとり。これからも高卒ではなく、大卒や社会人出身の投手たちが中心となりそうだ。
<楽天・生え抜き高卒投手勝利数>
チーム勝利数:66勝
生え抜き高卒投手勝利数:3勝(4.5%)
(記事:勝田 聡)