2010年07月02日 佐藤薬品球場

奈良大会・組み合わせと展望

2010年夏の大会 第92回奈良大会  
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安田(天理)

第92回奈良大会 組み合わせと展望

 抽選会を終えて、県高野連の理事の先生と話していると、こんなことをおっしゃった。「シードでも、一番下のシードは勝率があんまり良くない。優勝の確率が一番少ないんちゃうかな。最後、日程が詰まってくるからやと思う。今年は天理か。まぁ、ぎょうさんピッチャーおるからな、あっこは大丈夫か」。

 先生の言われるように、確かに一番下のシードの勝率は良くない。手にできるデータを見ると、2003年から優勝校が出ていない。それどころか、ベスト4にすら進めていないのだ。天理は悪いくじを引いてしまったのか。
でも、データはあくまでデータだ。天理は6月の練習試合で故障者を多数出してしまったと聞く。だから、安田主将は「亀澤とか、まだ怪我している選手が射るんで、日程が後ろになったのは良かったと思います」と、むしろ前向きにとらえている。

とにかく、今年の天理には過去、類をみないプレッシャーが振りかかるだろう。4季連続を阻止したいという、各校の思惑もあるのだが、新チームから県内無敗で優勝が「確実視」されるのは、苦しいと思う。これをどう乗り越えるか。

 

 しかし、見方を変えれば、こういうプレッシャーのかかるときに、シードの「外れ」を引いたということは、前向きにとらえていい。「これを乗り越えれば本物だ」と。数字遊びのデータを超え、目に見えないプレッシャーと言うメンタルを超えられれば、彼らは本物なのだ。いわば天理の力が試されているのだ。森川芳夫監督は、何年か前に言っていた。
「くじ運がいいとか悪いとかは、終わってからいうこと。あそことは相性が良かったなってね。プレッシャーを乗り越えられないのは、そこまでの力がないということだよ。運で甲子園に行っても、多くは勝てない。力が試されているんだ」。

 さて、天理の話はさておき、組み合わせ展望である。

【第一ブロック】

 春季大会準優勝校の登美ヶ丘が入ったわけだが、個々には粒がそろう。橿原関西中央の直接対決は面白い。指揮官が郡山高校同士という奇縁もいいが、序盤の好カードは勝った方が、自信と勢いを得るから厄介なのだ。登美ヶ丘は、開幕カードの勝者を制した後、この勢いを止めに行かなければならない。登美ヶ丘の打線は公立校の中でも屈指の破壊力を持つ。春の勢いで、勢いに乗ったチームを止められるのだろうか。まず、その前に、平城帝塚山の開幕カードの勝者も意気が上がっているはずだ。

 さらに、このブロックには優勝候補・奈良大附郡山がいる。郡山は1回戦からの登場になるが、郡山がシードを落とした時は、1回戦からどこかで弾みをつけて勝ち上がるケースが多い。ドラフト候補左腕・松田浩幸を擁する奈良大附を叩けば、03年、荻野(千葉ロッテ)・藤本を擁して破竹の勢いで勝ち上がったような、再現もあり得る。精神的に強いエースの上西としっかり者の主将・藤井のバッテリーの経験がモノを言いそうだ。

 とはいえ、奈良大附である。自分が寄稿した雑誌も含めてだが、春季大会は3回戦敗退なのに、このブロックでは一番評価が高いチームだ。理由はエースの松田が、練習試合で強豪校をなぎ倒してきたからだ。関大北陽を24奪三振、報徳学園を完封、つい先日も神戸国際大附を13奪三振にしたらしい。スカウトの評価も上々だ。つまり、前評判から勢いに乗っているチームなのだが、奈良県とは面白いもので、こういうチームには、試練を与えるのだ。
思い出すのは、02年夏、斑鳩(現法隆寺国際)がその前の春季大会で初めて県大会を制し、いきおいに乗っていた時だ。夏も当然、優勝候補の一角だったのだが、組み合わせが愕然とするものだった。天理智辯学園郡山、すべてと当たる組み合わせだったのだ。もちろん、他のチームが勝ち上がる保証はどこにもない。しかし、ヤグラを見ただけでぞっとするものだった。時の指揮官、森島監督はこういったものだ。
 「甲子園に行きたければ、天理智辯学園郡山を倒してから行けということだ」。
 奈良大附はまさに、そこにはまったのだ。これを幸運と取るのか不運と取るのかは自由だが、個人的には幸運だと捉えている。こんな組み合わせ、めったにない。奈良大附・北主将も、その気。「あんまり考えすぎるのも良くないですが、甲子園に行くにしろ、注目されている学校を倒していくことに、意味がある」そうだ。
 実力校がそろった激戦ブロック、どこが抜け出すだろうか。

【智弁学園ブロック】

 好投手がそろったブロックと言える。まず、注目したいのが二階堂の浦投手だ。上背は高くないが、キレのあるストレートとスライダーを投げ込む。投手育成に定評のある小林稔監督が育て上げた選手だ。フォームに癖がなく、投手としての様々な能力にたけている。さらに、守備面でも充実している。このチームに関しては、ミスをしたのをほとんどみたことがない。そして、カバーリングの徹底力もまた見事だ。きっちり守って勝機を見出したい。初戦の西の京戦から接戦が予想されるが、力は安定しているはずだ。

 五條智辯学園のぶつかりも楽しみ。野球どころの五條同士の対決として、レベルは高い。五條は投手陣が分厚く、左腕の日下は下級生時から注目された逸材だ。ひじが柔らかく、角度のある球を投げる。一方で智辯学園は打が魅力だ。智辯学園はというと、強力打線と言われるが、ことしの打線に強打者はいない。だが、その分、つなぐ野球は見事に徹底されている。春季大会でもフライアウトが少なく、とにかく、打者の間を抜いていく。全力疾走も、エリート集団とは思えぬほど、最後まで駆け抜け、五條二階堂に負けじとカバーリングも見事なのだ。

 

 とはいえ、この両チームが3回戦まで安泰かと言われると、そうではない。昨夏、五條は足元をすくわれている。高取国際奈良朱雀の勝者は侮れない。常に全力プレーの両チームで、闘志が前面に出る。野球だけでない部分にも力を入れているから、見えない力は計り知れない。

【高田商ブロック】

 未知数なチームが多い。高田商の指揮官、豆腰監督の就任1年目の舞台を祝うかのようだ。橿原学院は投手力が良いと評判。春季大会では打の智辯学園と1-2の接戦を演じた。指揮を執る竹村監督は青年監督だが、結構、思い切った采配をしかけてくる。磯城野は生島監督が就任3年目を迎えた。奈良商など、赴任校では必ず、好成績を残してきた。ベテラン。「部員の確保から大変」と謙遜するが、未知の力を秘めている。

 桜井高田は進学校同士だが、古澤―和田の両右腕が評判だ。重みのある球を投げ込むのが古澤で、切れで勝負するのが和田だ。両投手とも、春季大会は序盤で敗退してしまったために注目をされていないが、隠れた好投手なのだ。勢いに乗ったら怖い高田と常に冷静な試合運びが巧みな桜井と、両極端なチーム。

安井監督率いる香芝も侮れない。昨夏は開幕ゲームで快心の勝利を挙げて、勢いに乗った。当時の1番打者・中島が現チームに残り、勢いのつける。春季大会では2番を打ったが、これも、策士・安井監督の仕掛けかと勘繰ってしまう。メンタルトレーニングを多く取り入れる指揮官が、どんな野球を展開してくるのか、こちらも読めない。

 迎え撃つ、高田商は伝統の攻撃力に、今年は守備もいい。カバーリングもきっちりと徹底され、楽しみなチームだ。初めての夏を迎える豆腰監督は山下前監督と正反対で、厳しく怒ることはないが、そうしたギャップが今はチームを良い方向に導いている。昨夏はベスト8で天理の敗退。エースの松村や玉垣は、当時も出場していた選手たち。当然、準決勝までは負けられない気概を持っていることだろう。

【天理ブロック】

大和広陵一条法隆寺国際奈良。今年の評価はそう高くないが、ここ数年、準優勝、もしくはベスト4以上に入ったチームがそろった。一条は旧チームからエースの片山とトップバッターの勅使河原が残っている。昨夏準決勝、天理との激闘は、大会ベストゲームだった。ことしも起こせるのか。ちなみに、大和広陵が初戦を突破すれば、春季大会のリベンジマッチだ。法隆寺国際は植田、津田の二枚看板、伝統の粘り腰が今年もチームスタイルだ。奈良は1年秋に3位になったエース大倉、三邨の二枚看板がチームに残る。あの経験を力に変える、最後の夏なわけだ。

 王寺工のエース・桑原の評価が高い。140キロに迫るストレートとスライダーが武器の本格派。田中将大(楽天)を彷彿とさせる、気合のこもったピッチングは打者を威圧する。入れ込みすぎが彼の課題ではあるが、一生懸命やるのが王寺工のスタイルだ。そのままの、桑原らしさを貫いてほしい。エースばかりが注目されるが、4番で主将の山崎も注目したい。大方の予想は、この桑原が天理打線をいかに抑えるかだが、御所実を侮ってはいけない。1年秋からエースを争ってきた森・中島の両輪のその後が気がかりだ。もし、彼らが本来の力を発揮すれば、王寺工が安泰とは言えないはずだ。

 ことしの天理はずば抜けている。春季大会でも実証したばかりだ。昨秋は打つだけで県大会を制したが、この春は違ったところを見せた。中村、安田、内野のクリーンアップの破壊力だけでなく、好打者ぞろい。井上、柳本がゲームを作り、岩崎が6番にいることも大きい。投手陣も、安定感抜群の沼田、ストレートとスライダーのコンビネーションがいい西口、MAX152キロの西浦健、さらに、ここへきて2年生右腕・今井が急成長中だ。死角は見当たらないのだ。

 今年、3強が牙城を守れば、ついに41年目に突入する。40年を超えて、3強が覇権を独占することになるのだ。41年目を止めるのはどこか、はたまた、3強の独占は続くのか。 奈良大会は10日に開幕。平城帝塚山の試合で幕を開ける。

(文=氏原英明




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