試合レポート

日本vsアメリカ

2017.09.03

王者・アメリカ、強力投手陣で圧倒!日本は23奪三振を記録するも悔しい完封負け

日本vsアメリカ | 高校野球ドットコム
15奪三振の快投を見せた川端健斗(秀岳館)

 これが世界レベルか…と痛感させられた試合であった。

 試合開始時間が三度変更した日米決戦。先発のマウンドに登ったのは川端健斗秀岳館)。川端が良いのはどの場面、状況になっても、表情を変えることなく、自分のピッチングができる点に尽きる。
「自分の中では心の準備、気持ちの準備ができていた」
と言葉通り、右手のグラブを突き上げ、洗練された縦振りのフォームから繰り出す直球は常時140キロ~143キロを計測。何度も143キロを計測しており、状態の良さを表していた。初回、1番M.シアニに安打を打たれるが、2番C.ヤングを3ストライク目に一塁走者が走り、捕手・中村 奨成(広島広陵)が自慢の強肩でアウトにして、三振ゲッツー。3番も三振に打ち取る上々の立ち上がりを見せた。

 アメリカの先発は、L.マーソー。上半身を鋭く振ったフォームから繰り出す直球はコンスタントに145キロ前後(最速148キロ)を計測。速球の勢いは本物で、スライダーの切れも良い。日本にはなかなかいない速球派右腕だ。

 1回裏、日本は1番藤原恭大大阪桐蔭)が左前安打で出塁したが、一死一、二塁で4番清宮幸太郎早稲田実業)が二塁正面の併殺に倒れ、チャンスをつぶす。

 2回表、アメリカは4番J.ケレニックがストレートを打って左中間を破る二塁打。ここで捕手・中村が二塁牽制で、走者を刺そうとしたが、これが暴投となり、三塁へ。まず三振で一死としたが、6番T.カサスが2ストライクから3球目。外角高めに浮いた142キロのストレートを捉えた当たりは左中間スタンドへ消える2ランでアメリカが2点を先制する。バッテリーによると外しに言ったストレートだったが、若干ストライクゾーンに入ってしまった。さらに7番A.マクネイアセイグラーを四球であるかしたところで、再び雨が降り出し、中断となる。

 ここまでの局面を振り返ると、日本バッテリーはストレート中心の配球。ストレートが走っているのを見て、おそらくこの攻めでいったのだろう。だが、勝負を焦りすぎた配球となっていた。1時間半近くの中断を待って試合は再開。雲の切れ目から光が差していた。


 日本代表バッテリーは、配球パターンを切り替えた。速球主体から変化球主体へ。スライダー、カーブの割合を増やし、ストレートは見せ球に、連続三振・川端はここまで5奪三振の快投。

 アメリカは左腕のR.ウェザーズに交代。左腕を外旋軌道で振っていく左スリークォーター。かつてDeNAに在籍していたマイク・ザガースキーを彷彿とさせるずんぶりむっくりの左腕で、この投手も日本が苦手にするような左腕だ。球速はコンスタントに常時143キロ~146キロを計測。球質が重く、前に打ち返すのも難しい投手。さらに130キロ近いスライダーの切れ味も抜群。あっさりと三者凡退に退けられた。

 なかなか点は取れないが、川端の奪三振ラッシュは続く。3回表にはアウトをすべて三振。4回表には、先ほどホームランを打たれたカサスに対して、変化球主体で攻め、最後は142キロのストレートで空振り三振に打ち取るなど、なんと10奪三振。快刀乱麻を断つピッチングを見せていた。

 しかし5回表、振り逃げで先頭打者の出塁を許すと、一死二塁から振り逃げ。これを打者走者はアウトなので、走る必要はない。しかし全速力で走る良いうすを見て、中村は一塁へ。これで一塁へ投げる間に、ホームベースカバーががら空き。これを逃さず、アメリカが3点目を入れた。

 しかしアメリカ打線にしっかりと対抗するピッチングを見せたといっても過言ではないだろう。

 6回表、川端は15三振目を奪ったが、二死二塁から1番シアニの左前適時打で4点目を失い、降板。しかしこの快投に観客は労いの拍手。2番手に田浦 文丸秀岳館)が登板。田浦は最速140キロのストレートと切れ味鋭いスライダーとチェンジアップを武器に2.1回を投げて5奪三振の快投。そして9回表には磯村峻平中京大中京)がリリーフとして登板。連投ということで、140キロ超えはなかったが、最速138キロのストレートとスライダー、フォークを織り交ぜ、アウトはすべて三振。計3投手で、23奪三振を記録した3投手の好投。そして中村、古賀 悠斗のリードは見事であった。


 しかし打線は全くアメリカ投手陣に対応できなかった。2番手・R.ウェザーズを打ち崩せないまま9回裏に突入。そして9回裏から背番号3のJ.ギンが登板。この投手はまさに世界トップクラスの逸材だった。左足をくいっと上げて、そこからコンパクトなテークバックから繰り出す直球は常時148キロ~152キロを計測し、3番安田尚憲の場面で、154キロを計測。何度も150キロ以上を計測するだけではなく、微妙に揺れ動くツーシーム気味の速球なので、捉えるのは難しい。そして速球だけではなく、130キロ近いナックルカーブもあり、速球だけの投手ではない。J.ギンについてはNPBの打者が打席に立っても苦労する。それぐらいのボールの精度があった。そんな投手と初対戦では、やはり手の打ちようがない。最後は高めの151キロのストレートで空振り三振に終わり、日本代表は2安打完封負けに終わった。

 やはりアメリカ代表、強い。23三振を喫しながらも最後まで振り切ることを意識したスイングは、1つ甘く入れば持っていくパワーはあることを証明し、登板した3投手は全員145キロ以上を計測。さらに特に二遊間の守備は洗練されており、動作に無駄がなく、全員、肩が強い。技術、フィジカルともに世界最高のレベルの野球を見せつけられた試合だった。

 だが、現状を知るには良い試合だったかもしれない。試合後、清宮は「この試合があったから勝てた、世界一につながったといえる試合にしたいですし、世界最高の野球を知って、何が足りないかをみんな学んだはずです」と話すように、ここからどうするかが大事となる。世界一の道が険しいと分かった限り、やることは戦略の再構築しかない。

 次は難敵・キューバ。苦しい試合が続くが、日本代表の真価は次の試合で問われるはずだ。


日本vsアメリカ | 高校野球ドットコム スターティングメンバー

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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