田中 優佑選手 (四日市南)

寸評

　1回戦で敗退したが、将来性溢れる右の本格派右腕だ。身体全体を余すことなく使う事が出来るフォームの土台の良さ、変化球のキレの良さ、ピッチングセンスの良さと完成度の高さを感じられる好投手。 　右オーバーから振り下ろすストレートは常時130キロ～135キロ前後は出ていそうで、最速140キロ近くは出ていてもおかしくはない。 　ストレートの球筋の良さも光っていたが、それ以上に良かったのが変化球の精度の高さである。変化球はスライダー、カーブ、フォークの３球種。この曲がり方・コントロールが高校生の投手としては中々鋭く、コントロールもしっかりしており、ピッチングが実に組み立てやすい。 　コーナーへきっちりと投げ分ける制球力があり、得意とする変化球をギリギリに投げ分け、芯を外す投球を得意とする。高校生としてはこれほど変化球をコントロール出来ていて、130キロ台のストレートをコーナーへ投げ分ける事が出来るのならば、ある程度のレベルまで通用していくだろう。ただストレートで押していく場面で、威力が物足りず、レベルの高い打者には適応されてしまうのが課題だ。 (投球フォーム) 　ノーワインドアップから始動する。左足を頭上の近くまで引きあげていき、右足の膝を適度に伸ばしてバランス良く立つ。捻りを入れて、少しずつ重心を下げていく。お尻から先行するヒップファースト。膝を前へ送り込む事が出来ており、体の動きは縦の回転で投げるフォームとなり、カーブ、フォークを投げる下地はしっかりと出来ている。 　ただ左肩の開きが早い。これは左肩だけの問題ではなくて、踏み込んだ足の向きから繋がっていると考えられる。着地の粘りはあるが、もう少し踏み出し足のスパイクを内向きに向けられるようになると、今よりも開きは抑えられていくのではないだろうか。かといって極端なインステップはおすすめしない。 　テークバックは内回りの回旋をしていき、しっかりと肘を上げる事が出来ている。リリースでは肘をしならせてリリースすることが出来ており、良いポイントでリリースすることが出来ている。最後のフィニッシュでは踏み込んだ足が割れており、ぐっと体重が乗れていないのは残念。ぐっと勢いに乗って、さらに腕が最後まで絡めるようになると、もっと勢いのあるストレートを投げることも可能であろう。 　投球フォームの土台は良く、着地のタイミング、足の向きを工夫するだけでもだいぶ変わっていく投手ではないだろうか。フォーム改良に加えて、体力を高めていけば、ストレートの球速はしっかりと伸びていく投手だ。

将来の可能性

　しっかりとピッチングが組み立てられる好投手であり、フォームも比較的纏まっているので、将来性は光るものが感じられた投手であった。大学進学してからの成長が十分に期待出来る投手であり、出来れば投手指導が長けた環境の下で素質を開花させ、実戦的なピッチャーに育ってほしい。この先の進路が気になる存在である。