試合レポート

滑川総合vs花咲徳栄

2022.09.19

岩井監督がU18W杯で不在の優勝候補・花咲徳栄、まさかの初戦敗退。

滑川総合vs花咲徳栄 | 高校野球ドットコム
滑川総合・齋藤タイムリー

<秋季高校野球埼玉県大会:滑川総合6-3花咲徳栄>◇18日◇2回戦◇県営大宮

 埼玉県大会でいきなりの大波乱である。何が起きたのか。

 今大会から継続試合が導入されている埼玉県大会。台風の影響で今にも雨が降りそうな中、[stadium]県営大宮球場[/stadium]の第1試合に優勝候補・花咲徳栄が登場した。初戦の相手は今夏も対戦した滑川総合である。滑川総合にとっては夏のリベンジマッチとなる。

 スタメンでは、滑川総合は前の試合からの変更点は6番に飯島 大和(2年)が入り、前の試合6番だった篠崎大智(2年)が7番に入る。

 一方、花咲徳栄は今夏のメンバーが4人残る。新人戦の獨協埼玉戦以来の取材となるが、その時からの変更点は8番の目黒 亜門(1年)が7番に上がり、それまで7番を打っていた木田 康介(2年)と入れ替わった。新チームになり1試合目の記事ということで改めて主要オーダーを説明すると、1番・齊藤 海(2年)は変わらず、今夏5番を打っていた増田 空(2年)が3番に上がる。4番には1年生の石塚裕惺(1年)を据え、今夏4番を打っていた柴田 樹(2年)は5番に下がる。そして、今夏9番を打っていた新井 大貴(2年)が6番に入る。また、岩井監督がU-18遠征中により不在で、監督には福本 真史氏が入る。

 先発は滑川総合が今夏の花咲徳栄戦で登板経験のある長身右腕・橋本 海里(2年)、一方の花咲徳栄は左腕・飯島 大聖(2年)が出遅れていたこともあり、新チームになってから良い球を投げるということで投手に転向した木田が今大会のエースナンバーを背負う。

 試合は序盤からまさかの展開となった。

 先制したのは滑川総合であった。

 3回裏、1死から1番・横溝 聖樹(2年)が右前安打を放ち出塁すると、すぐさま二盗を決める。さらに、続く小井土友駿(2年)が三遊間へのゴロを放つと遊撃手がこの打球をジャックルしたこともあり内野安打で、1死一、三塁とする。さらに一走・小井土もすぐさま二盗を決め1死二、三塁とチャンスを広げると、ここで3番・中村 諒成(2年)がスリーバントスクイズを決め1点を先制する。

 花咲徳栄としては1点を先制されたとはいえ、まだ慌てるところではない。問題は5回裏だ。

 滑川総合は5回裏、2死から1番・横溝が四球を選び出塁すると、すぐさま二盗を決め2死二塁とする。ここで続く小井土が左越えの適時二塁打を放つと、続く中村も左前適時打を放ち2点目、さらに中村がすぐさま二盗を決め2死二塁とすると、4番・齋藤 大地(2年)も中前適時打を放つなど、この回2死から一挙3点を奪い4点差をつけ花咲徳栄・木田を攻略してみせた。

 投げては滑川総合のエース橋本の制球力がさえ、序盤から縦の変化球を武器に強打の花咲徳栄打線を封じ込めてみせ、7回まで2安打に抑える好投を披露する。

 花咲徳栄の反撃は8回表であった。

 1死から代打・横山 翔也(1年)が左中間への三塁打を放ち出塁すると、2死後1番・齊藤が右前適時打を放ち1点。さらに暴投で一走・齊藤が一気に三塁を奪うと、相手のボークで2点差とする。やや流れをつかみ始めた花咲徳栄はさらに2番・吉川 琉陽(2年)が右前安打を放ち再度チャンスメークすると、続く増田も四球を選び2死一、二塁とする。だが、4番・石塚が2ボールから打ち上げてしまうなどなかなかリズムをつかみきれない。

 一方、花咲徳栄投手陣はそれまで木田、上原 堆我(1年)と懸命の継投で凌いできたが、8回裏この回からマウンドに上がった3番手・和久井 大地(1年)が滑川総合打線に捉えられる。

 滑川総合はこの回、先頭の齋藤が四球を選び出塁すると、1死後、暴投で一走・齋藤は二塁へと進む。6番・飯島も四球を選び1死一、二塁とすると、さらに暴投でそれぞれ進塁し1死二、三塁とチャンスを広げる。ここで7番・篠崎が中前へ貴重な2点適時打を放ち6対2とダメを押す。

 それでも花咲徳栄は最終回、この回先頭の柴田が左前安打を放ち出塁すると、1死後、7番・目黒が右中間へ適時三塁打を放ち1点を返すと、2死後9番・田中 辰空(2年)も四球を選び2死一、三塁と最後の反撃を試みるが後続が倒れ万事休す。

 結局、滑川総合がAシード・花咲徳栄に6対3と金星を挙げ、夏のリベンジに成功した。


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花咲徳栄・木田

 滑川総合については、この日はとにかく橋本に尽きる。終盤やや疲れを見せたが、強打の花咲徳栄打線を相手に最後まで臆することなく投げ切った。打線もこの日は序盤から盛んに一塁ベース上で大きなリードを取るなど相手バッテリーにプレッシャーをかけ、ぬかるんだピッチにも関わらず、5盗塁を決めるなど積極的だった。守備でも花咲徳栄打線を意識し、外野は前の試合同様に極端な守備位置を取るなど攻めていた。その姿勢が最後まで相手を上回った要因であろう。

「16人のキャプテンがいるそれぞれのセクションが準備してきたものを全部出して現在地を知ろうと。橋本は自分の武器は何か、何が通用して何が通用しないかがはっきりしたので課題を秋までに修正した。球速、変化球の精度や間の取り方なども含め投手としての資質全体を高めようと。今日はたまたまうまくいったが、まだまだ」「前半は変化球が(花咲)徳栄さんに効いたんですが、後半は手が滑って思うように投げられなかった。途中からワインドアップに変えたのは3、4番に関しては力勝負ということも頭に入れて」(橋本)
「左だと思っていたのですが、先発のピッチャーも球威があったので、中途半端にならず割り切ってうちにいこうと。外野守備に関しては分析班の話も交え(花咲)徳栄さんのバッティングはチョップ系で切る人が多いので、逆方向の打球には警戒して極端な守備位置をとった」(横溝)
 と、選手・監督共にこれだけの準備をしていた。勢いに乗るためにこれ以上のスタートはない。滑川総合旋風が吹き荒れるか。

 一方の花咲徳栄は、これにより来春のセンバツは絶望的。来春の埼玉県大会も地区からの出場となる。確かに岩井監督がU-18で不在、左腕・飯島も出遅れているというエクスキューズもあったが、旧チームからのスタメンが4人残っており今大会も上位進出は有望視されていただけに痛恨の敗戦だ。

「序盤の攻撃が全てかなと。フォームの緩急に対応できず、ズレて捉えきれなかった。4点ビハインドで折り返しはキツかった。戻ってくる岩井監督に勝って繋げず情けない」(福本監督)
「変化球が抜けてしまった。夏甲子園に行けるように。走られたのは想定外。間の取り方を考えなければ」(木田)
「(橋本に対して)一回対戦した相手ということで多少緩みもあったかもしれない。夏はコントロールにばらつきがあったが、今日はまとまっていて変化球もストライクが入るようになっていた。自分達で崩れてしまった」(新井)
 と、それぞれが悔しさを滲ませる。メンツは揃っているだけにこの日の敗戦を糧に来春巻き返しを図れるか。

(取材=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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