野球小僧がそのまま高校3年生になったよう。多賀監督、11回2失点の大黒柱・山田を絶賛。初の決勝進出へ



山田 陽翔(近江)東京スポーツ:アフロ

<第94回選抜高校野球大会:近江5-2浦和学院>◇30日◇準決勝◇甲子園

 絶対的なエースを擁する近江(滋賀)と、投手陣の層の厚さならば全国トップクラスの浦和学院(埼玉)の一戦。

 近江のエース・山田 陽翔投手(3年)は昨夏、滋賀大会、甲子園の熱投の影響で肘を怪我した。あれほど短期間で球数を投げ、力みまくった投球フォームだったこともあり、ケガをしたのはある意味、当然だったといえる。山田は故障前の投球フォームはリスクが高いと、フォームを改善。さらに、力感を抑え、省エネ投球ができるようになった。山田と多賀監督の間で、あるエピソードがある。多賀監督はこう振り返る。

「冬の成果が出るのは4、5、6月。僕はセンバツに選ばれると思ってましたから、山田には『センバツは5試合お前で行く』と年明けの最初の練習の時に伝えた。山田も『今取り組んでいるフォームができれば絶対にいけます』と。やってくれると思っていた。それに応えてくれている」

 最初は選出漏れとなったが、代替出場で、決勝まで勝ち上がってきた。しっかりとオフシーズンにフォーム固めと、トレーニング、投球練習に励んでいた証拠だろう。

 立ち上がりは静かな入りだった。130キロ後半の速球、130キロ前半のスライダー、ツーシーム、フォークなどを駆使し、浦和学院打線を3回まで無得点に抑えていた。4回表、2本の適時打を浴び、2点を失うが、その後はギアを上げる。

 5回表には、140キロ前半の速球、切れ味鋭い変化球を武器に2三振を奪うなど、追加点を許さない。多賀監督も「調子が上がってきた」と手応えをつかんできたところで、5回裏に死球を受けた。それでも切れ味鋭い変化球を軸とした投球術で、浦和学院には単打を与えても連打を許さない投球で無失点投球を継続した。

 5回裏に足に死球を受け、マウンドに上がるまでは足を引きずりながらも投げる時になれば、気合で浦和学院に立ち向かう。山田はこう語った。
 「強気で行くしかないと思ったので、捕手の大橋には『いつも通りで大丈夫や』と声をかけた。大橋も強気のサインを出してくれた」と感謝する。

 打線もそれに応え、7回裏にスクイズで同点。そして山田が「大橋のことをすごく信頼している」と語る正捕手の大橋 大翔(3年)が延長11回に、カーブを捉え、左翼席へサヨナラ3ランを放ち、見事に決勝進出を決めた。

 多賀監督は試合後の取材で、
 「甲子園という舞台が彼をそうさせていると思うのですが、彼には何度も感動させられる場面が多くて、甲子園の試合中にこんなに涙が止まらない試合はないです」と涙ながら山田を絶賛した。

 優勝候補である浦和学院を破ったことについて、「明日を考えず『今日、この一戦に』という思いでしたが、今終わってこの準決勝という舞台で素晴らしいゲームをできたということが何よりも嬉しいです。格上のチームに束になって魂でぶつかってくれたことが嬉しい」
 選手たちを称え、さらに野球選手・山田についてはこう表現した。「魂がこもったマウンドさばき。野球小僧がそのまま高校3年生になった、そんな彼のマウンドさばきは素晴らしいと思います」

 甲子園で山田を見た高校野球ファンすべてがそう思うだろう。山田は西宮市内の病院で診察した結果、左足関節外果部の打撲症と診断された。骨には異常がなく、決勝の出場については、当日朝の様子をみて判断する。

 準決勝で170球投げた影響で、規定により山田が決勝戦で投げられる球数は116球。文字通り総力戦で大阪桐蔭に臨む必要がある。