吉田 雄人選手 (北照)

寸評

　走攻守三拍子揃った外野手として高い評価を受けた吉田 雄人。三拍子タイプの外野手で、大学経由タイプとみられていたが、評価を逆転させた男だろう。彼ならば春、秋の2か月間の実戦経験の4年間よりも、1年ベースの実戦経験の4年間が成長度は違うだろうと判断したのだろう。 （打撃） 　彼は1年目でも多くの試合出場が与えられると思っている。というのもしっかりと木製バットに対応し、それなりに成績が残せる選手であるからだ。 　スタンスはオープンスタンス。グリップは高めに置いて背筋を伸ばして構えている。腰が据わっており、両目で見据えている。バランス良く構えることが出来ており、筋の良さを感じる。投手の足を降ろし始めたところから始動を仕掛けていき、足を小さく上げて状況に応じてステップを変えていく。インパクト時に踏み込んだ足はしっかりと踏ん張って、膝の開きを抑えることが出来ており、力が逃げることなく振り抜くことが出来ている。 　トップの動きを見ていくと捕手側方向に引いていき、振り出していく。グリップは体の後ろに入りすぎないので、インパクトまでロスがないスイングが出来ている。ボールを捉える能力は高く、彼は空振りすることは少ない。いずれの打席もしっかりと捉える事が出来ている。以前はタイミングに遅れて逆方向へ打ち返しても、弱い打球が目立ったが、去年と比べると逆方向でも強い打球が飛ぶようになったのは大きな成長点といえるだろう。 　軸のブレも少なく、目線の動きも小さく、安定感のあるフォームの土台となっている。気になったのは上体が立っているため、踏み込んだ時に膝の割れがなく、縦の変化球の対応の課題が気になる。膝が硬いので、上手く踏み込めないと引っかけてゴロになりやすい。下半身の柔軟性を高めて、対応力を高めたい。打撃についてはしっかりと考えながら打席に立っていて、甘い球を逃さない鋭さは備わっているので、彼は実戦をこなしていきながら、覚えていくタイプとみている。 (守備・走塁) 　実際にこの選手の守備練習を見ると、打球に対する反応は速く、守備範囲も広い。地肩の強さは標準レベル。現時点ではプロレベルでセンターを任される選手ではないが、元々の脚力が高いので、鍛えこんでいけば、いずれはセンターを任せられる選手だろう。 　塁間タイムは4.1秒前後と突出して速いタイムではなく、また盗塁タイムも3.5秒～3.6秒と遅い。このタイムはプロならば普通にアウトになっているタイム。スタートの遅さとトップスピードに乗ってからのスピードの遅さが気になる。走塁面で光る場面は見られなかった。一歩目のスタートの遅さは1年からの課題で、やはり足で生きていかないと存在感を示せない選手なので、一歩目のスタートを磨いてほしい。

将来の可能性

打撃の完成度は高い選手でプロレベルでもすぐにヒットを量産できる選手だ。ただ長打力はなく、二塁打、三塁打、出塁率、打率で勝負しなければならない選手。走塁は高校生レベルでは俊足だが、一歩目のスタートが遅く、数は多いように見えても、まだプロのバッテリーから奪えるスピードではない。足で目立たないとこの選手は一軍で輝けない。彼は無難に守れるタイプなので、試合機会はそれなりに与えられそうで、実戦機会を数多くこなすことで、プロに必要な打撃の力強さ、盗塁の一歩目のスタート、投手の癖を盗む観察力を養ってほしい。 　トップバッター候補として面白い選手だが、まだ打撃、走塁も発展途上。まずは大卒選手が入る4年間まで、しっかりと打撃、走塁のスペシャリストとなっているか大きく注目していきたい。