左腕2人の力投、劣勢覆す!・樟南

樟南9点目・坂口優サヨナラ打
<春季九州高校野球鹿児島大会:樟南9-8神村学園>◇31日◇準々決勝◇平和リース
樟南と神村学園。鹿児島を代表する名門同士の準々決勝は、間違いなく今大会屈指の好勝負として語られる一戦となった。
序盤ペースを握ったのは神村学園だった。
初回に4番・正林 輝大(2年)、5番・岩下 吏玖(2年)の連続適時打で2点を先取。3回には先頭の3番・秋元 悠汰(3年)が初球をバックスクリーンに運ぶ特大ソロを放つ。4回には1番・今岡 歩夢(3年)が右中間スタンドに2ランを放ち、リードを6点に広げた。
樟南は2番手の左腕・濵田 晢成(3年)をリリーフで送る。安打、四死球で1死満塁のピンチを無失点で切り抜けると、5回以降を無失点で切り抜け試合を立て直した。
5回に1点を返した樟南は6回裏、5番・前田 晟那(3年)の中越え二塁打と犠飛で2点を加点し3点差に迫る。
打線の当たりが止まった神村学園は8回表1死、2番手のマウンドに上がった9番・松永 優斗(3年)が右翼席に飛び込むソロを放った。
その裏、樟南打線が爆発。6安打を集中し、1番・茶園 将太(3年)の右中間を深々と破る三塁打で同点に追いついた。
勝負は今大会5試合目となるタイブレークの延長戦へ。樟南3番手左腕・新藤 侑志(2年)、神村学園・松永、両投手の力投で10、11回は両者無得点だった。
12回表、神村学園は8番・増田 有紀(2年)の犠飛で待望の勝ち越し点を得るが、その裏、樟南は1死二、三塁とし、4番・坂口 優志(2年)の中前2点適時打で3時間25分の熱戦は劇的な幕切れとなった。
「負けゲーム」(山之口和也監督)だった樟南の劣勢を覆したのは、3年生・濵田、2年生・新藤、リリーフした左腕2人の力投だった。
4回途中まで本塁打2本を浴び6失点。神村学園の強打の前に攻守とも弱気になっていた。立て直すカギは「強気で攻める投球ができるか」(山之口監督)だった。
3回戦・鹿児島商戦、濵田は先発を任されながら打たれて2回途中で降板。「チームに迷惑をかけた分、借りを返す」意気込みで4回途中からマウンドに上がる。トルネード気味に身体をねじって投げる独特な投法で、丁寧にコースを突く持ち味を存分に発揮した。
「左打者の内角を強気で攻められた」と濵田。強打の相手にも臆せず内角を突いた分、外角との「幅」を有効に使えた。8回に出合い頭のソロを浴びたが、9回1死まで2安打1失点の好投で試合を立て直した。
9回1死からマウンドを託された新藤も「バックを信じて低めを突いて打たせて取る」一念で腕を振り続け、タイブレークに入った12回まで内野安打1本、犠飛による1失点のみで切り抜けた。投手陣の我慢が中盤以降打線のつながりを生み、4番・坂口優の逆転打につながった。「20人全員がそれぞれの役割を果たし、全員野球で勝てた」と新藤は胸を張った。
今大会4戦いずれも先制されての逆転勝ち。タイブレークの延長も2試合あった。苦しい戦いが続くが「冬場どこよりも練習したので最後まであきらめない気持ちで野球ができている」と新藤は言う。山之口監督は「勝って1試合でも多く公式戦を経験できることが成長につながる」と期待していた。
(取材=政 純一郎)