沖縄尚学vs中部商
大会屈指の好投手に苦しむも、中盤から終盤にかけ奮起した打線の力で勝利した沖縄尚学
準々決勝の宮古戦、準決勝の知念戦で先発した中部商のエース米須 武瑠は、2試合とも二桁奪三振をマークするなど大会屈指の好投手。沖縄尚学も3回まで4つの三振を喫し、ノーヒットと苦しめられたが中盤攻略に成功した。
ノーヒッター美里 vs Kゲッター米須
沖縄尚学の先発は美里 大雅。三回戦の那覇戦でなんと、9回を投げノーヒットノーランの偉業を達成した。対する中部商は前日の準決勝で完投したエース米須 武瑠。これまで4試合に登板し、奪三振率10.86をマークする奪三振王だ。ノーヒッターとKゲッターというワクワクするオープニングとなった。
まずは中部商・米須 武瑠。仲宗根 皐に死球を与えたが4番知念 大河を三振に斬ってみせた。その裏、沖縄尚学・美里 大雅も、ライナー&ゴロ二つと全てショート仲宗根 皐に捌かせ三者凡退のスタートを切る互角の立ち上がりを見せた。
2回、中部商・米須 武瑠は四球一つを与えたが最後は三振。3回にも四球を出すもその後二者連続三振と、キレのあるスライダーを武器に沖縄尚学打線に手も足も出させなかった。
すると中部商打線は2回、二死一塁から7番平山 尚都が甘い球を思い切り引っ張る会心の当たり。これがレフトの頭を越えるタイムリーとなり先制した。さらに中部商は3回、沖縄尚学のミスをつき加点する。「あんなに一度にミスが出るなんて。」と、渋い顔をした比嘉 公也監督。
美里 大雅が四死球を与えると、自らのけん制悪送球、さらにワイルドピッチ、パスボールとバッテリーエラーが連鎖するように出た。たまらずエース當山 渚を投入した沖縄尚学ベンチ。ピンチの場面だったが當山 渚は落ち着いて次打者をファーストゴロに打ち取り最小限の失点で防いだことが、後々大きく返ってくることとなった。
頼れる主将の逆転打、そしてエースのダメ押し打で中部商を粉砕
反撃したい沖縄尚学は4回、四球とヒットで二死二、三塁とチャンスを掴む。ここで自らのミスを帳消しにするぞと、8番前盛 魁来が三遊間へ放つ。中部商ショート米田 光希も回り込むが、バウンドが変わり打球はレフト前へ。二者が生還しあっという間に同点に追い付いた。さらに沖縄尚学は5回、二死二塁から主将仲宗根皐がレフト前へ運び二走が生還。頼れる主将の一打で逆転に成功した。
中盤は拮抗した展開となったが9回、沖縄尚学は長濱 諒が三塁打を放つ。もう1点もやれない状況で若干手元が狂ったか。痛恨のワイルドピッチで失点。さらにその後二死二塁とし、當山 渚がジャストミート。風にも乗ってグングン伸びた打球はライトの頭上を越えるタイムリー二塁打となった。
自らのダメ押し点で楽になった當山 渚は、9回裏も三者凡退に斬りゲームセット。沖縄尚学が、2年振り10度目の選手権沖縄大会頂点に立った。
「主将の石川が前日の準決勝でケガし出られなかったのですが、代役を務めた仲本も良く守りました。本当に良いチームでした。勝たせてやれなかったのは監督の責任。選手たちは最後までよく戦いました。」昨秋の初戦敗退から努力を重ねてここまできたナインを、中部商・奥田誠吾監督は目を細めて称えた。春の大会でも対戦した両者。そのときも1点差ゲームで互角の戦いを見せており、最後の夏でも沖縄尚学を苦しめた中部商の奮闘が光った夏でもあった。お互いを認め合うからこその、試合後に両軍ナインが一緒になって父母のカメラに収まる姿が微笑ましかった。
(文=當山雅通)