下之薗 誠也選手 (鹿児島情報)

寸評

　チームの4番・遊撃手を務める、攻守の中心的な存在。特にボールを引っ張って巻き込む、典型的なプルヒッター。 　 （第一印象） 　 　あらかじめ捕手方向にグリップを引いて構え、トップの形をつくってボールを待ちます。また足の上げ下げはせず、その場でカカト上げ下ろす程度の踏み込み。打撃の動きを極力廃して、無駄をなくそうとする徹底ぶり。 　 （守備・走塁面） 　 　一塁までの塁間は、右打席から4.45秒強ぐらい。これは、左打者に換算すると、4.2秒前後とプロの基準レベルの脚力。高校生としては、中の上程度の走力があると考えられます。 　 　遊撃手としても基準以上の動きを魅せ、けして下手な選手ではありません。地肩も強く、上のレベルだと三塁手あたりが合っているかもしれません。 　 （打撃内容） 　 ＜構え＞　☆☆ 　 　スクエアスタンスで両足揃え、グリップの高さは平均的。ただ上記にも記したようにグリップを引いて構えているので、リストワークに遊びがありません。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなどイマイチで、かなり癖のあるフォームだと言えるでしょう。 　 ＜始動＞　遅すぎるタイミング 　 　投手がリリースを迎えたあとに、踏み出すことなくノーステップで対処します。そのため極端に遅い始動でも対処は出来るのでしょうが、打てるポイントは極限られるはず。 　 ＜下半身＞　☆☆ 　 　始動～ボール到達までの時間がないので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」が求められます。踏み込んだ足元はブレないので、外の球や低めの球にもついて行けそうですが、引っ張り専門のスイングなので、捌ける球は限られています。そのことを承知で、あえて意図してやっているのならば良いのですが、非常に扱いの難しい打ち方だと考えられます。 　 ＜上半身＞　☆☆☆☆ 　 　捕手方向にバットを引いているため、トップを作るのは遅れません。すなわち始動が遅くても、速い球に立ち遅れる可能性は低そう。ただガチガチにバットを引いてしまうと、体が固くなり柔軟性に欠けるボール捌きになります。それでも振り出しからインパクトのまでは、無駄なくシンプルにボールを捉えます。スイング軌道にも癖はなく、最後までキッチリ振りぬきます。 　 ＜軸＞　☆☆☆☆ 　 　足の上げ下げが一切ないので、目線がブレず的確にボールを追えます。体の「開き」も我慢でき、軸足を起点に綺麗に回転できています。

将来の可能性

　徹底的に無駄を取り除くことで、速い球に立ち後れないことができます。ただその分、柔軟性や打てるタイミングが限られるなど、犠牲にしているものも少なくありません。シンプルに打てる球を叩く、そういった単純明快無スイングではありますが、そこに感性は感じられません。地肩・走力の身体能力もあり、大学など上のレベルでも野球を続けて行ける素材だとは思います。かなり癖のあるフォームであり、上のレベルで壁にぶつかつ可能性も否定できません。しかし本人なりに、こだわりがあるのならばそれもありでしょう。今後彼が、どんな活躍を見せてくれるのかは、私自身大変興味深いものがあります。教科書どうりの技術よりも、自分なりの明確な意志を持った強いこだわりこそ、より大切であることを証明して頂きたいと思います。