Interview

九州共立大 大瀬良 大地 投手 「大進化をもたらした大学4年間」

2013.12.05

 九州共立大大瀬良 大地投手は間違いなく、今年の大学№1投手である。福岡六大学野球ではリーグ通算38勝。大学日本代表だけでなく、今年11月には侍JAPANの一員として選出された。3球団の抽選で交渉権を獲得した広島東洋カープでプロ生活をスタートする。大学4年間で学んだことは何だったのか?150キロ台の直球を生み出したのは何なのか?カットボールを覚えたきっかけは?大瀬良投手に直撃した。

成長できる環境だった九州共立大

――九州共立大学を選んだ理由は?

大瀬良 大地投手(以下「大瀬良」) 高校(長崎日大)時代に練習試合を何度かさせてもらいました。他の大学からも誘いは受けていました。グラウンド、練習環境をよく分かっていた部分が共立だったし、仲里(清)監督が新垣さん(渚投手、現ソフトバンク)や馬原さん(孝浩投手、現オリックス)のようなすごい投手をプロに輩出していたのが大きな理由です。監督の教えを聞いてプロに行きたいという希望もありました。

――1年春のデビューから大活躍でしたね。

大瀬良 春は5勝(0敗)しました。でも高校の時より、しんどい投球でした。変化球で全然カウントを取れない試合もありました。本当にみんなの支えがあって5勝できた感じでした。防御率のタイトルも獲ったので成績だけを見ればいいかもしれないですが、勝ったから「行ける!」という感覚はありませんでした。

――球速を高めるためにやったことは?

大瀬良 高校時代まで体が細かったですね。体をしっかりつくれば球速は出ると思っていました。一番細かったころは68キロしかありませんでした。今は90キロぐらいあります。大学1年のときに80キロまで増えました。ずっと食事を多く食べていましたが、なかなか太れませんでした。だから時間があるときは、ずっと何かを食べていましたね。並行してトレーニングするにつれて自然と体が大きくなりました。走り込みなどで体のキレを失わないように気をつけました。食べる量も多かったし、トレーニングも人の何倍もしていました。だから、体も強くなったと思っています。同時に150キロぐらいのスピードもついてきました。

――「行ける」と思っていなかったということは、球速以外で悩む時期があったのですか?

大瀬良 そうですね。スライダーは(高3夏に出場した)甲子園では使えると思っていました。大学入学後は力みがあって思ったように投げられない時期がありました。「もっと速い球を投げたい」という想いも影響していたのかもしれません。コントロールも定まらない。このまま悪い方に行ってしまうんじゃないかなという不安がありました。1年春の後ぐらいから、徐々に考え方、技術を改めないといけないと思いました。

――改めた部分とは具体的に何でしたか?

大瀬良 1年のときは「速い球を投げればいいや」という感覚がまだありました。1年冬以降に7、8割の力加減でキレのいい球を投げたいというように切り替えました。思い切り投げれば150キロを超える球を投げられるのは分かったので、スピードを追い求めずに140キロ台前半の質のいい球を投げることを心がけるようになりました。そのときから体幹トレーニングにも取り組むようになりました。

――体幹トレーニングではどんなことをしましたか?

大瀬良 基本的なものが多かったです。肘で体を支えて同じ姿勢をキープするもの、バランスを取るものなどでした。2年生になると、ピラティスも採り入れました。仲里監督から「ピラティスというものがあるんだけど、試してみるか?」と言われたのが最初でした。僕は「自分にプラスになることは何でもやりたい」という性格なので挑戦しました。大学近くに教室があって、祖父母世代や年配の方々と一緒にやっていました。それを週に2回通っていました。あと週1回はヨガにも通いました。合わせて週3回ですね。体質も変わって野球をする上で、かなりプラスになりました。

――ウエートトレーニングはどうですか?

大瀬良 2年生の頃まではやっていましたが、ガツガツする方ではなかったです。本格的に始めたのは3年生から。トレーナーさんにメニューを組んでもらってやっていました。

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カットボール習得への道

――高校時代の球種は?

大瀬良 直球とスライダーがほとんどでした。カーブとチェンジアップもありましたが、使えるほどの球ではなかったですね。

――大学の時にはカットボールも投げ始めましたね。きっかけは?

大瀬良 2年春のリーグが開幕する3日前でした。球数が多いタイプなので「もっと簡単にバッターを打ち取れる球はないか?」と考えて、カットボールに挑戦しようと決めました。自分には合っていたみたいで、すぐに使えるようになりました。

――どのような発想からですか?

大瀬良 僕の場合はストレートが基準でした。ストレートから握りを少し変えていきました。投げるときのフォームは基本ストレートとカットボールは、ほとんど変わりません。縫い目を利用しました。カットボール習得を決めた後、すぐに覚えられました。僕には合っていました。キャッチャーからも「これなら、すぐに使えるよ」といういい答えが返ってきました。そこで、すぐに使う決断をしました。小さい頃からマンガを読んでいた発想が役に立ちましたね(笑)。(※大瀬良投手の「読書のススメ」参照)

――最後のリーグ戦では110キロ前後のカーブを試合で投げていました。

大瀬良 カーブに関して本格的に使い始めたのは4年秋からです。練習では、いつも投げていました。自分の中ではずっと「まだ投げる必要はない」と思っていました。自分は直球タイプの投手なので、カープを投げて打たれると悔いが残るというのが頭の中にありました。でも、将来的には必要な球だと思って、試合でも4年秋に使っていきました。

代表への道、侍JAPANでの経験

――大学2年春には大学日本代表にも選ばれました。

大瀬良 2年の時はすごく嬉しかったです。信じられない気持ちでした。会場に行くと、菅野さん(智之投手、東海大、現巨人)や藤岡さん(貴裕投手、東洋大、現ロッテ。2011年4月5日 独占インタビュー)など、すごい投手ばかりでした。来る場所を間違えたのかなと思ったぐらいでした(笑)。3日間の合宿の中で話ができたのはいい経験でした。本戦になってからも、もっと深い話をさせてもらえるようになりました。自分の中でも考え方が一段上に変わっていきました。

――どんな話をしました?

大瀬良 技術的なことでも僕が考えていないようなこともありました。試合前の動き方1つを取っても、登板にいかに100%の力を出せるように持っていくかというのを学びました。みんな自分の世界を持っていて、まだまだ自分も野球に対する考え方が甘かったことを痛感しました。カーブに関しては菅野さんから「将来、絶対に投げられるようになった方がいい」というススメがありました。そこでカーブや緩急の必要な部分を教わったのが最初でした。菅野さんも自分と似ていて、真っすぐで押していくタイプ。試合では緩いカーブを混ぜてくる。(4年秋に)カーブを投げる勇気を与えてくれたのは菅野さんでした。

――今年11月には侍JAPANの一員として国際強化試合(台湾)も経験しました。

大瀬良 トップの代表だったので、周囲はプロ野球選手ばっかりだったし、野球の動きや私生活など今までの代表にない動きでした。台湾での国際強化試合まで、ナイターを経験したことがありませんでした。試合後に食事に出ることは今までなかったことです。いつもなら寝ている時間帯にご飯を食べているのは不思議でした。ご飯のときは眠くて大変でした。技術的にも経験したことのない全く違う世界でやらせてもらって、無意識に溶け込める経験ができたのは良かったですね。この場で「どうしよう?」と悩む余裕さえなかったです。だから、プロの動きに沿って自然とやることができました。

――試合(11月9日、2回無失点)では直球勝負と決めていましたか?

大瀬良 「直球で押せる」と思ったときはそうします。実際、どこまで通じるかやってみたいと思っていました。伊藤さん(光捕手、オリックス)とは配球など深い話をする時間もなかった。正直、ぶっつけ本番に近かったです。それでも、僕の良さを引き出してくれた配球だったと思います。

――試合後に食事に連れていってもらったりしましたか?

大瀬良 カープの方が多かったですね。野村さん(祐輔投手・2010年8月4日 独占インタビュー)に連れていってもらいました。ホテルでも2人で一緒に話をしてもらったり、気にかけてもらったりしました。丸さん(佳浩外野手)、菊池さん(涼介内野手)にも気さくに声をかけてもらいました。

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[page_break最上級生としての苦悩]

最上級生としての苦悩

――大学生活4年間を振り返って、満足だったこと、不満だったことは?

大瀬良 4年間で成長させてもらったのは感謝しています。これまでの歩みとしてはいい形でこられたと思っています。ただ、チームとして日本一を目標にやってきて、1度も獲れなかったのは悔いが残ります。特にチームの柱として4年生の1年間は春秋ともにリーグ優勝ができなくて、大学選手権、明治神宮大会にさえ出られなかった。自分でも「何やっているんだろう」というぐらい悔しかったですね。本当に「1年間通して申し訳ない」という気持ちでした。福岡大の梅野(隆太郎捕手、阪神4位指名・2013年10月23日 独占インタビュー)が春秋ともに全国大会に出ていたのはうらやましかったです。「大会に一緒に出場しよう」とお互いに言いながら、自分が出られなかったのは悔しかったです。

――思い出に残る試合はありますか?

大瀬良 いい思い出も悪い思い出もあります。成長させてくれたのは2年秋の明治神宮大会で創価大に負けた(2回戦、0-3)試合でした。小川さん(泰弘投手、現ヤクルト)と投げ合いました。

3年春の大学選手権では再び創価大と対戦して(準々決勝)、2-0でそのときは小川さんとの投手戦で勝つことができました。小川さんとの対戦は印象に残っています。投手戦で投げ合って負けたから、その後の冬のトレーニングで「春は必ず神宮に行って、小川さんのチームともう一度対戦する」と思って、ひらすら練習に打ち込んでいました。

――長崎日大の金城(孝夫)監督、仲里監督から受けた影響はありました?

大瀬良 高校時代、金城さんは怖かったです。話しにくかった部分が多かったです。卒業後はそうでもなくて、会ったときにいろんな話をするようになりました。仲里監督は気さくで何でもフレンドリーに話をしてくれる方でした。疑問があれば、何でも聞くことができました。野球以外の話も多かったですね。いろんな面で勉強させてもらいました。一方的に「これを練習しろ」というのはなかったです。たとえば新しい練習メニューがあったとすれば、「これはどういう意味があるのか?」というのを質問しやすい関係でした。今までの「監督というイメージ」とは違う方でした。

――九州共立大ではスポーツ学部でした。

大瀬良 体の構造を学びました。今後、どう野球に生かすかを考えました。実際、授業でマッサージをする方に回ったこともあります。マッサージする側の考え方、視線を感じ取れたのは大きかったですね。いろんな目線を確認できました。

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[page_break将来は球界を代表する投手へ]

将来は球界を代表する投手へ

――現在はどんな練習に取り組んでいますか?

大瀬良 走り込み、ウエートなど基礎体力向上が中心です。投げる方は、この時期はキャッチボールぐらいです。距離30メートルぐらいで質のボールを投げるイメージで週に2、3回やっている状況です。

――プロ入りするに当たって今後、課題にしていることはありますか?

大瀬良 技術面ではもっとカーブを有効に使いたいですね。あと、細かいコントロールを身につけないとプロでは厳しいし、長く続けられないという想いはあります。プロになってからの起用方法は分からないですが、大学のシーズンの過ごし方とは全く違っていきますので、年間通してベストを出せるような体つくりをしっかり取り組んでいきたいです。

――同世代の選手が活躍しているという意識はありますか?

大瀬良 新聞やテレビを通じて「頑張っているんだな」という意識はあります。自分にとって、いい刺激になったし、「頑張ろう」という気持ちになります。今村投手(猛投手、現広島)ともメールしています。高校3年夏の大会後に連絡を取ってメールアドレスを交換しました。それ以来、連絡を取り合うようになりました。

――カープでは背番号「14」です。津田 恒美さん、外木場 義郎さん、沢崎 俊和さん(現広島コーチ)などが付けていた背番号でもあります。

大瀬良 カープにとっては大切な番号。ファンや関係者にも思い入れのある番号ですね。津田さんの現役時代はよく分からないですが、エピソードを聞くと、そういう精神面などを受け継いでやっていかないといけないという気持ちでいっぱいです。

――対戦したいバッターはいますか?

大瀬良 誰というのはないですね。僕はどうやって全体的に打線を抑えて勝つかということを考えるタイプです。個人相手でなく、打順の組み立てなどを見て、戦略を組み立てるのが好きです。

――大学時代、プロ野球は見ていましたか?

大瀬良 大学時代、プロ野球は見ていましたか?
大瀬良 テレビでよく見ていました。自分でシチュエーションを考えながら見ていましたね。「この場面なら攻めの投球をしたい」というのを考えながらでした。他に「この投手は、どうやって打者に対して攻めていくのか」など想像しながら見ている機会が多かったです。それを、ずっと続けていました。

――将来はどんな投手になりたいですか?

大瀬良 1年目から活躍できる選手になりたいですね。いずれはカープを背負って立てるぐらいのピッチャーになって、球界を代表するようになりたいです。それが1番の目標です。

(インタビュー=中牟田 康

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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