聖光学院高等学校 園部聡 選手
10月24日のドラフトでは、オリックス・バファローズから4位指名を受けた、今年の高校生を代表するスラッガー・園部 聡(聖光学院)。高校通算59本塁打を記録した園部の長打力の原点は何なのか。技術的なポイント、トレーニング方法を語っていただいた。
小学校はサッカー少年、中学時代は控え中心
聖光学院高等学校 園部聡選手
――園部くんは、ソフトボールからスタートしているんですね。それも始めたのは小学校5年からとかなり遅かったんですね。
園部聡選手(以下、園部) ずっとサッカーをやっていたんです。サッカーを続ける予定だったんですけど、小学校5年のとき中学校のサッカー部が廃部になってしまいました。もし、中学(勿来第一中)にサッカー部があったら、今でもサッカーを続けていたかもしれません(笑)
――小学校5年でソフトボールを初めて、当時の守備位置はどこだったんですか?
園部 小学校はピッチャーで、中学校の時はピッチャーとライト、外野もやっていました。でも、中学時代は、背番号2桁をつけていることが多かったですね。
――中学時代の松風クラブ(いわき松風クラブ)では、常総学院の内田靖人くんと同じチームだったんですよね。ライバル心って、かなりありましたか?
園部 中学のときは、上の存在だったので、凄いなとは思っていたんですけど。高校に入ってお互いに活躍しだしたので、負けたくないという気持ちはありました。
――園部くんは、当時はどんなタイプの中学生だったんですか?
園部 バッティングは全然ダメでした。ずっとピッチャーをやっていました。
――球は速いほうだったんですか?
園部 そうですね。130キロは超えているとずっと言われてました。
――聖光学院に来たときは、投手それでやろうとは思わなかったの。
園部 入学する前の練習でヒジを傷めてしまったので。最初は投手をやりたい気持ちはあったんですけど、今はもうないですね(笑)
長距離を意識し始めたのは2年春から
――聖光学院入学後は、ホームランを量産しました。ヒットの延長がホームランみたいな感じでしたか?
園部 そうですね。長距離ヒッターという立場が確立できたのが高校2年生のときで。それまでも体が大きかったので長打を期待されていたと思うんですけど、自分の中ではそういう意識が全くなくて。高校2年の春の選抜(第84回選抜高等学校野球大会)が終わったぐらいから徐々に長打にこだわってやってきました。
――通算ホームランは何本ですか。
園部 59本です。
――そこまで多くホームランが打てるようになった時期ってありますか。
園部 3年の選抜が終わったぐらいからです。紅白戦とかでも打っているので、それを含めたらもっとあるんですけど、対外試合としては59本ですね。
――こうするようになってからホームランが増えたと、いう技術的なポイントってありますか。
園部 いや、それはないです。
――例えばミートポイントはどっちですか?割とキャッチャー寄りだと思っているんですが。
園部 自分の中ではあまり意識はしていなくて、ティーとかやっても結構驚かれるぐらいポイントが近かったりして、少しポイント前め(投手寄り)で打ってみろと監督に言われても、まだ近いと言われることがあります。
――近いということは、長くボールを見られるということだよね。それは長所じゃないですか。常総学院の内田くんにも聞いたら、「自分は前」だと言うんです。そうは見えないんだけどね。
園部 内田もどっちかといったら近めです。自分も内田と同じで、近めな感じで、手元でさばいている感じはしないです。
――じゃ、反応が速いということ?
園部 スイングスピードが速いということもあると思うんですけど、他の人より長くボールが見られて、他の人よりもうまく引きつけられるのかもしれません。バッティングピッチャーの人によく言われるんですけど、インコースに詰まったと思っても全部捉えられる、というようなことを聞いて、人よりそういうのは速いのかもしれません。
[page_break:18U世界選手権ではキューバ戦とアメリカとの決勝戦で活躍]18U世界選手権ではキューバ戦とアメリカとの決勝戦で活躍
――木製と金属のバットというのはどうですか。日常的に木製でやっているんですか。
園部 ティーとかでは基本、全部木です。金属は1回も握ってないです。シーズン中も試合前とかは金属で、それ以外は木にこだわってやってました。
――かえって金属のほうが違和感あるぐらいですか?
園部 春先はそういう感じがありました。逆にヘッドが走り過ぎちゃってというのはありますし、木のほうが芯で捉えたみたいな感覚があります。
――では、18U世界野球権(以下、18U選手権)で残した成績(打率.267、7打点)は物足りないぐらいじゃないですか?
園部 やってる中で課題は見つかったんですけど、バットを振ることに関してはそこまで違和感はなかったです。
――キューバ戦やアメリカとの決勝の結果をみても、レベルの高いチームとやっても、しっかり結果を残していましたね。
園部 そうですね。1次ラウンド、2次ラウンドの途中ぐらいまでは思うような結果が出ていなかったので、周りからも決勝ラウンドで打てばいいみたいな感じで言われていたので、最後は絶対結果を残してやろうと思っていました。
――1試合を除いてあとはすべて5番。内田くんがその前を打っていたんだけど、『俺が4番を打ちたかった』という気持ちはありましたか?
園部 そこまで打順にこだわってはいないです。いいところで打てたので、少し目立つことができたんじゃないかというふうには思ってます(笑)
――目立ってましたよ。前から思っていたんですが、園部くんは打ち方がきれいですよね。余分な動きがないということと、下で(足で)タイミングを取っているというのが一番ですね。上でタイミングを取る人はどうしても細かく動いたりして、あまりきれいな感じがしないんだけど、園部くんは上半身がほとんど動かない。見た感じすごく静かなんだけど、そういう自覚はありますか。
園部 横山(博英)コーチから上で追うな、下でタイミングを取れというのはにずっと言われていて、そういうのがうまく成果として表れているんじゃないかなと思っています。
――やっぱり下でタイミングを取ったほうが安定するでしょう。
園部 1年のときから下半身のブレが少ないと言われて、結構そういうところが評価されていたので。
――中学のときは、その辺はどうでしたか?
園部 本当に打った記憶がないんです。軟式が合わなかったというのもあるかもしれないです。覚えているヒットでも、バーンと跳ねて内野の頭を越えたようなのばかりで、クリーンヒットを打った記憶が本当になくて。
――これまでに狙ったホームランってありますか。
園部 高校1、2年のときはがむしゃらにヒットを狙いにいって、その結果ホームランというのがあったんですけど、だんだん打感というか打つ感覚というのがわかってきて。こういうふうにバットの角度を出せばホームランになるというような感覚がつかめてきて。
――浅い縦スイングでバットがボールの下に入っていくなという感じがあるんですが、やっぱりボールの下に浅く入れていくという感じですか?
園部 そうですね。うまく説明できないんですけど、自分の中の感覚でそういうのがあって、こういうふうな角度で出せば長打にはなるみたいなのがあります。
――どのぐらいの角度で?
園部 ヘッドをしならせるというわけじゃないんですけど、少し寝かせ気味にして。よく周りには言うんですけど、バットに乗せて押し込むみたいなイメージですね。
――ヘッドは遠回りしないぐらいに浅く、やや寝かせぎみに出していく?
園部 とりあえずバットに乗せて、意識的には乗せるようにしてここから(とインパクトの瞬間を示す)ぐっと押し込む。
――なるほど。バットにくっつけるような感じで、右手で押し込むという感じ?左手ではなく?
園部 そうです。左手はバットをコントロールして、最後に右手で押し込みます。
――すごいですね。この角度(浅い振り出し角度)で行ったときはだいたい捉えられましたか?
園部 はい、長打にはなっています。
[page_break:背筋297キロ!背筋の重要性を語る]背筋297キロ!背筋の重要性を語る
――ウエイトトレーニングについても聞かせてください。始めたのはいつぐらいから?
園部 入学したての頃からトレーナーの方に、トレーニングの形を教えていただいて、そこぐらいから本格的に始めました。
――シーズンオフは週3回で、シーズン中は週1回ぐらいのペースですか?
園部 そうですね。オフシーズンは週3回ぐらいです。シーズンに入ったら週2回程度ですね。
――さきほど、斎藤監督から聞いてびっくりしたんですけど、背筋が297キロあるんですね。また握力も右77、右74。すごいですね。
園部 握力は、今はそんなにないと思うんですけど、去年の冬にウエイトをばりばりやったので。スイングの数も増やして体を追い込んでいる状態だったので、そのとき出た数字ですね。背筋もその時の数字ですが、間違いなく、背筋は野球選手にとって大事だと思っています。
――飛距離も伸びましたか?
園部 飛距離はわからないですけど、最後のオフシーズンは1年間通して自分のスイングのスタイルを変えないで、最後の最後まで自分のスイングができるようなシーズンをつくっていきたいなというような気持ちもあって、デッドリフトという背筋を鍛えるトレーニング法があるんですけど、重さにもこだわってやってました。背筋が弱いとだんだん猫背になって、構えたときに少しこうなるので(と言って上体を屈める)。少し力のあるピッチャーだとワーッと上からくるような感じもあるので。
――だんだんグリップの位置が下がってきちゃうときもあるよね。
園部 そうです。こうなっちゃうんで(と言ってグリップ位置を下げる)。オフシーズンは筋肉ベースを上げて、シーズンに入ったらそれをいかに持続して体力ベースを保てるか、そういうところは結構意識が高くて。守備に関しても、スローイングにしても絶対的に必要だと思うので背筋はこだわってやっていました。
[page_break:ベストホームランは鳴門戦でのホームラン]ベストホームランは鳴門戦でのホームラン
――みちのくフレッシュBリーグには1年生のとき出ていたんですか?
[註]みちのくフレッシュBリーグとは横山博英部長が提唱して行ようになった東北地区6校による対抗戦である。普通の対抗戦と異なるのは、出場する選手が1、2年生主体のBチーム(二軍)のメンバーであること。参加しているのは日大山形、東海大山形、盛岡大付、一関学院、聖和学院、聖光学院の各校。Bチームのメンバーに実戦経験を積ませることによって試合に向かうモチベーションを引き出す効果がある。
園部 6回ぐらいしか打席に立ったことがないんです。
――このリーグは、いいアイデアですよね。練習だけとか声出しだけとかやっている部員は、やっぱりモチベーションが下がるじゃないですか。
園部 そうですね。何か目標がなきゃモチベーションが上がりませんから。Aチームになれば目の前にある県大会、東北大会とか甲子園という大舞台があるのでそれに向けて頑張れるというのがあるんですけど、Bチームは正直何を目指してやっていけばいいのかという問題もあったと思うんです。横山コーチはそういうのにも気づいてくれました。
――内田くんにも聞いたんですが、野球の話はそんなにしていないって。でも、他の選手の打ち方はよく見てるって言ってました。園部くんはどうですか?こいつ凄いなとか、打ち方が気になる選手はいる?内田くんなんかどうですか?
園部 内田は体の割に意外と巧打者。対応力はありますけど、もうちょっと長打を打ってもいいんじゃないかと思います。自分より体がでかいんですよ。なのに結構シュアなバッティングをするので。
あと気になるのが奥村 展征(日大山形)。よくあの足の上げ方でタイミングが取れるなと思って。森もあんなにヘッドを立てているのによくあれだけ振れるなと。相当ウエイトやってるなというのが想像ついた部分もあって、やっぱりみんな凄かったです。
――森くんのレフトへの打球はすごいですよね。流し打ちという感じじゃないですからね。しばき上げて、もっていくという感じ。
園部 相当リストが強いですね。
――園部くんはリストは強いほうですか?
園部 たぶん強いほうだと思います。でもリストを使って打ってはいないです。抜かれたときにグッといくような。
――拾うとか、そんな感じですか?
園部 はい、そういうホームランが結構あったので。
――好きなプロ野球選手はいますか。
園部 広島の堂林(翔太)さんです。
――ちょっとタイプが違うような感じがするけど。それでサードをずっと練習してるのですか?
園部 サードになったのは、去年の秋からですね。
――公式の試合以外は全てサードを守っていると聞いたんですが。
園部 そうですね、公式戦以外は練習試合もシートノックもサードに入ってました。
――ということは、もう上でやるということを想定しているわけですね。斎藤監督に「うまいんですか?」と聞いたら、「いい動きしてる」って。
園部 ファーストのときよりは全然動いてます。
――サードのほうがやっぱり動く量が多いから、合ってるのかな。
園部 どうかわからないですけど、代表のときにサードをやったときも、意外とみんなに誉められたので。
園部選手、ありがとうございました。24日に行われたドラフトでは、オリックス・バファローズから4位指名を受けました。今後の活躍も応援しています!
(インタビュー=小関 順二)