Interview

上武大学 大谷 昇吾 選手(樟南出身)

2013.10.21

 6月の全日本大学野球選手権で初の全国制覇を成し遂げた上武大学で不動のトップバッターを任されている大谷 昇吾選手(3年)。選手権では打率3割6分8厘をマークしてチームを牽引したが、関甲新学生野球リーグではホームランを春5本、秋もここまで2本と、身長は172cmながら長打力も兼備する。樟南高校時代は通算9本だった大谷選手がホームランを量産できるようになった理由を聞いた。

アベレージヒッターだった高校時代

――高校時代は決してホームランバッターというわけではなかったんですよね。

大谷 昇吾(以下「大谷」) 全然です。どちらかといえばアベレージヒッターで、公式戦でのホームランも1本だけ。ホームランを狙うこともなかったですし、いつも出塁することを考えていました。イチローさんのようにヒットをたくさん打って、走ってというのを目指していましたね。体の線も細くて、ホームランは頭にまったくありませんでした。

――では、大学に入ってホームランを意識するようになったわけですか。

大谷 いえ、そういう考えはなかったですし、それ以前にまず木製バットに苦労しました。まったく打球が飛ばなかったですし、バットの芯にも当たらない。1年生の春から試合に出させてもらいましたが、小さく構えて、ただ当てるだけというバッティングでした。怪我もあったりしましたが、打ち方をいろいろと模索しながら、少しずつ対応できるようになったのは夏くらいです。それでもそんなにバットを強く振れませんでしたし、長打は出なかったですね。単打ばかりでした。

上武大学 大谷昇吾選手(樟南出身)

――それでも着実に力をつけていき、2年の春に2本塁打、秋にも1本アーチを架けた。

大谷 2年生秋までの3本のホームランは勢いというか、本当にたまたま入ったという感覚でした。手応えというか、このコースならホームランが打てると思えるようになったのは3年生の春からです。

――何が変わったのでしょうか。

大谷 1番大きかったのは体重を増やしたことです。入学したときは65㎏とか、66㎏くらいで、監督さんからも2年生の春ごろから増やすように言われていたんです。でも、もともと食が太い方ではなくて、なかなか増やせませんでした。秋のリーグが終わった時点で68㎏くらい。プロでやろうと思えば体も大事ですから、冬に体を大きくしようと決意して、とにかく食べる量を増やしました。朝と昼はそれまで通りですが、昼と夕食の間におにぎりやパンを間食として食べて、夕食はご飯を漫画に出てくるような感じで山盛り。その後のトレーニングを終えたら夜食を食べる。そんな感じです。

――「食」のトレーニングですね。

大谷 かなり自分を追い込んだのでつらかったです。食べたら体重を測定して、足りないと思えばもう少し追加して食べたり。でも、そのおかげで今は73、74㎏くらいになりました。もちろん、ただ食べていただけでなく、ウェイトトレーニングを行ったり、バットを振り込んだりもしました。スイングは普通のバットとマスコットバットを交互に振ったり、1日500くらい振りました。


ひと冬こえて飛距離アップ

――特に鍛えた部分はどこでしょうか。

大谷 全般的にやりましたけど、特に下半身ですね。ウェイトトレーニング以外にもサブグラウンドでタイヤ押しをしたり。トラック用の直径810mmの大きなタイヤなので重さもかなりあります。個別練習ですので一人でやった日もありましたね。太ももはかなり太くなったと思います。どこを鍛える必要があるのか、そのために何をすればいいのかということを自分で考えて行いました。

――ビルドアップした効果はどんなところに現れましたか。

大谷 スイングスピードはかなり速くなったと思います。それによって打つポイントも体の近くになって球も長く見られるようになりました。それと、みんなからも体が大きくなったと言われましたし、鏡を見れば明らかに体つきが変わったことがわかりましたから、自信のようなものも芽生えましたね。

――腕も太いですね。

大谷 みんなに顔と合っていないって言われます(笑)

――やはり打球の飛距離も伸びたんですか。

大谷 そうですね。年内はトレーニングがメインで技術的なことはあまりやらなかったんですが、年が明けてバッティング練習が始まって打ってみたら飛ぶようになっていました。飛距離だけでなく、打球の強さ、速さも変わりました。これは効果が出ているなと思いました。ただ、もっと打球を飛ばしたいという気持ちもありましたが、それよりも速い打球、強い打球を目指して体作りをしたので、その後もホームランは考えていません。練習のフリーバッティングでも心掛けているのはライナーで伸びていく打球です。あとは球をバットに乗せて押すというか、接地時間を長くすることを意識しています。

――実戦で変化を感じた場面などはありましたか。

大谷 春のリーグ戦前の東京国際大学とのオープン戦で好きなコースだったんですけど、ホームランを打てたんです。このときはたまたま打てたと思ったのではなく、このコースはホームランにできるんだなと思いました。

――春のリーグ戦前はホームランが増えるという手応えがあったのでは。

大谷 それまでよりも強い打球が打てるんじゃないかなとは思いましたが、ホームランが増えるとは考えていませんでした。2年生までと違って今は試合で余裕が持てるようになってきて、カウントが有利なときや戦況を考えてホームランを狙うことも出てきましたが、ホームランはあくまでヒットの延長だと思っています。記録、記録と言われると少し意識してしまいますけど、打順は1番ですし塁に出ることをまず考えています。打順は1番がもっとも好きですし、自分のスタイルが変わったということもありません。


頭を使ってプレーすることの重要性を感じた

樟南時代の大谷選手

――技術的な部分で変わったところはありますか。

大谷 基本的には自分が打ちやすいフォームで打っていて、特別に変えたところはないです。構えは2年生の秋くらいに今の形に落ち着きましたし、タイミングの取り方も一緒です。ピッチャーがステップ脚を下ろすときに、右足を上げる感じですね。スイングの軌道もレベルで振ろうとしていることは変わっていません。チームメイトからは「バットが下から出ている。おまえ、ホームラン狙っているだろ」と言われるんですけど、自分の中ではレベルスイングを心掛けています。ただ、軌道も独特だと言われていて、「バットが下から出ているのに最後は右脇がちゃんと締まっている」と。

――リストが強いということですか。

大谷 そうなんですかね。自覚はありませんけど、監督さんにもリストが強いとは言われます。「リストが強いんだから、まずはミートすることを意識しよう」と。でも、確かにリストに頼って打っているところもあるので、インサイドアウトを意識してもっとレベルアップしたいです。

――その谷口英規監督からは何かアドバイスをもらっていますか。

大谷 自分はバッティングの調子を落とすと戻すのに時間がかかるタイプでした。それで監督さんから「どうして調子がいいのか、何をやっているから結果が出ているのかを考えるように」と言われました。それでノートにもつけるようにしたんですけど、以来、調子のよさが長続きするようになりました。技術的なことも、今こうなっているとか、的確に指摘してくれます。本当にすごくて、いろいろと学ばせていただいています。

――打席ではどんなことを考えていますか。

大谷 打席に入ったら相手の球に合わせて振るのではなく、自分のスイングをしっかりすることと積極的に振っていくことだけですね。他にいろいろ考えると迷ってしまうので。振っていく中で球も見ていこうと考えています。

――よく行っている練習はどういうものでしょうか。

大谷 全体練習のフリーバッティング以外には、連続ティーで体のキレを出したり、あとはフォームが小さくなっているなと思ったときにはロングティーでフォームを大きくしたりします。

――ロングティーも飛ぶようになったんじゃないですか。

大谷 そうですね。うちのグラウンドは両翼95mですが、フェンスを越えるようになりました。

――バットは同じものをずっと使っているんですか。

大谷 いえ、今のものは2年生のときから使っているものです。それまではミドルバランスだったのですが、トップバランスに変えました。その方がしっくりくるんです。

――やっぱり長距離砲の資質があるんでしょうね。元千葉ロッテで今は四国アイランドリーグプラスの徳島で活躍するお兄さんの龍次さんも長打が売り。体に力がついたことで飛ばす才能が開花したということなんでしょう。高校球児も冬場は体作りがメインになりますが、この時期にしっかりトレーニングを行うがいかに大事かということですね。

大谷 そう思います。

――最後に大学での経験から、高校のときにこうしておけばよかったことなど、高校球児へのアドバイスをお願いします。

大谷 高校のときは何も考えずに、ただひたすらやっている感じでした。全体練習をやって、あと自主練習という形が多かったのでやらされているというわけではなかったんですが、もっと考えてやっておけばよかったかなと。大学に入って野球に関していろいろと学んだのですが、高校のときからもっと頭を使って取り組んでいたらとは思います。それはどんな高校球児にもできることだと思いますので、少し意識を変えてみてください。

(文=鷲崎 文彦

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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