Interview

福岡大学 梅野 隆太郎 選手(福岡工大城東出身)

2013.10.18

 福岡大・梅野 隆太郎は今年のドラフトの目玉の1人。大学でも№1捕手の呼び声が高い。守りはもちろん、大学通算27本塁打と打撃でも大学球界で魅了してきた。体は小さいのに豪快な打撃はどうやって生まれたのか?また、どのような練習を積んで課題を克服したのか?そこには良きアドバイザー、妥協を許さない精神力があった。

秋季リーグでMVPに輝いた梅野隆太郎

 福岡大は九州六大学野球の秋季リーグで優勝を遂げたばかり。梅野は4試合連続無安打という不調を乗り越えて、優勝を決めた九州国際大戦でも2本の二塁打を放つなど主将としてチームをけん引。リーグMVPに輝いた。

――秋季リーグ優勝おめでとうございます。今(10月16日時点)はどう過ごしていますか?

梅野 隆太郎(以下「梅野」) 体を絞るというか、体のキレを出すことに重点を置いています。ポール間の半分の距離をダッシュ、体幹中心のメニューです。インナーマッスルを鍛えることが中心です。後は捕手としてのスローイングの確認です。細かいところはドラフト後にやるつもりです。以後は九州地区選手権、神宮大会に向けて、打撃中心に練習して行こうと思っています。

福岡大 梅野隆太郎選手

――秋季リーグを振り返ってどうでしたか?

梅野 自分が入学してから秋は一度も優勝していませんでした。春はしているのに秋は落としていました。自分たちは勝たないといけない立場。落としているというのは詰めの甘さがありました。今回、1年生ら新戦力が4人入った中で優勝できたことは良かったです。ただしミスも多かった。経験が少ない中でエラーのあった試合は落としている。でも、最終戦に行くに連れてミスは減りました。攻撃面でも先制、中押し、ダメ押しと理想的な試合ができるようになりました。2、3週間、簡単に勝てなかった時期があったが、そこで気を引き締めて勝ちにいくぞという雰囲気、強い気持ちがありました。苦しみもありましたが、春までにない経験ができたことが大きかったです。

――4年で主将。声をかけるシーンも多かったですね。

梅野 厳しく言うこともあります。試合に出る選手には、責任感の話をします。試合に出られなかった選手の想いもありますし、福岡大の選手として負けられないという想いもあります。時には落ち込むぐらい厳しく話すこともあります。後で次に勝てるためにどうするかという話をして選手を落ち着かせることもあります。

――捕手として投手に話すのも一緒。

梅野 使い分けないといけないと思っています。甘やかすだけでは無理ですね。時には喝を入れることもあります。

――梅野選手自身も打てない時期もあった。4試合連続無安打もありました。

梅野 打てないことで焦りはあったけど悩みはなかったです。どうしても勝負を避けられたりしました。たとえば5打席回ってきて2打数無安打でも3四球あったりします。変に悩んでしまうと打てない時期が長くなってしまう。相手も打たせたくないと思ってきているので、常に打つ難しさも分かりました。最終週という大切な時期が分かっていたので、そこに調子を上げていこうというのはありました。九州国際大が負けていた分、楽になった分もあります。ただ、そういう気持ちで臨んだ分、最終週で力を発揮してきたと思っています。最後は自分が打たないといけないという気持ちはありました。

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理想の打球とは?

 梅野の大きな魅力は打撃だ。大学通算27本塁打の長打力はもちろん、右中間方向にも強い打球が打てる。そんな梅野にも乗り越えないといけない壁があった。それは「金属バットからの卒業」だった。手本としたのは「自分に近いタイプ」と判断したソフトバンク・松田選手だった。

――大学に入って金属から木製に変わりました。どう対応しましたか?

梅野 1年春が一番苦しみました。春季リーグでは2割弱の打率しか残せませんでした。苦労というより木のバットに慣れるのに時間がかかりました。高校時代はトレーニング用の長い木のバットを持つことはありました。他に木で打つのはティー打撃ぐらい。大学入学後、木は折れることがあるので振り切ってもミートしないといけないというのが気になって仕方なかったです。

――どうやって克服しました?

梅野 高校時代の打ち方では、大学で打てないというのは分かっていました。右肩が下がったりして、金属バットでしか打てないような悪いクセもありました。そこで、1年の夏にいろいろ考えました。最初にバットを寝かせました。肩に置く感じでそこから持ち上げて振り出す感じです。感覚としては、松田選手(ソフトバンク)のような感じです。バットを平行に出すように、打ちやすいようにフォームを考えていきました。

――その後に結果を出しました。

梅野 打ちに行くとき、右肩が最初はどうしても下がってしまいました。そうすれば打球にドライブがかかってしまいます。そうなると大きな打球も失速して飛ばないことを実感していました。平行に出してボールをとらえて45度くらいの角度で上がるように自分なりに工夫しました。練習では試行錯誤の連続でした。今の形になるまでには、かなりの時間をかかりました。

――173センチと体格も大きい方ではない。

梅野 別に気にしてはいないです。体が大きいから打てるわけでもないですからね。将来的に「体が小さくても打てる」という夢を与えていきたいという想いはあります。

――長打、ホームランにこだわりはありますか?

梅野 ホームランは求めていきたい気持ちはあります。ただ、高校や大学から上に行くにつれて難しいと思っています。今宮(現ソフトバンク)も高校時代は本塁打が多かったけど、今では違うタイプの打者になりました。遠くへ打ちたい気持ちもあるし、他選手よりは遠くに飛ばす能力はあると思っています。僕の中では、方向に関係なく強い打球を打って、その結果、ホームランになるというイメージです。それ以上にチャンスに強く、チャンスメークもできる打者になりたいですね。プロに行ったら、今後は追求していきたいです。

――理想の打球の方向はありますか?。

梅野 練習では左中間にガンガン打てば調子はいいというのがありました。一方で右方向への飛距離を延ばしたいと思っています。広角に打つというのは練習から意識はしています。距離だけではなく、幅広いヒットゾーンを求めていきます。

――確かに優勝を決めた試合でも右中間に二塁打2本でした。松田選手の右方向にいい打球を飛ばします。

梅野 真似をしようという感じではないですが、自分もポイントが少し前。松田選手と同じような感覚で打っていると思っています。試合で見ている感じだと、打っているときは下半身から始動して打っているイメージがあります。ボールの高低を、どううまくさばいて打つかという意味では勉強になりました。

――ウエイトやりますか?

梅野 自分たちの球場がない分、球場を借りながら練習をしてきました。学校で使えるウエイトルームが8時までです。野球の練習時間と重なってしまってウエイトはできないことが多かったです。どちらかというと体幹などをする機会が多くなりました。野球で必要な筋肉は野球の練習でつけたい、というのもあります。数は少ないですが、筋肉に刺激を与えるために時間をつくってウエイトに向かうときもありました。

――高校時代はどうでした?

梅野 腕立てが20回を10セット。体幹の組み合わせ50回を10セット。背筋、腹筋を500などやって、その後に各自でウエートメニューをやっていました。

――バットはどのようなものを使っていますか?

梅野 今では2種類を使い分けています。調子がいいときは34インチ、900グラムです。調子が悪いときは少し軽いものを使います。33.5インチ、890グラムのものを使っています。

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捕手としての考え

 捕手という定位置を任される限り、守備面でも妥協は許されない。リード、捕球、スローイングと学年を上がるごとに課題を克服した。「守備面に課題」という過去の評価を覆すのに十分だった。

――捕手としてリードで意識しているは何ですか?

梅野 初球打ちするチームに素直に応対すれば打たれてしまいます。1球目から振ってくるなら、最初から勝負球を使うようにすることもあります。最初にそういう配球をした後の打席で、元のセオリー通りにすると相手を「おや?」と思わせることもできます。打者を考えさせるようなリードを心がけています。投手にはいろんな性格がいます。球種と組み合わせて引き出していきます。気の強いのもいれば、捕手に任せますというのもいます。気の強い投手は直球を投げたがる。勝負所で曲げたり、落としたりして駆け引きで勝負します。

――代表でも投手とは話をしていましたか?

梅野 他のリーグで投げている投手はあまり情報が入ってこないですから、その分、勝負球、入り球はこれ、と話し合うことが多かったです。最後はフォークという投手なら、要望があれば聞いて、後は本人に任せます。

――キャッチング、スローイングでも自信を持つきっかけはありましたか?

梅野 代表の合宿中にマンツーマンで善波さん(現明大監督、現代表監督)から教えてもらいました。生田さん(現亜大監督)からの指導も受けました。2、4年の時にスローイング、3年のときはキャッチングでした。

――中身はどういう感じでしたか?

梅野 スローイングに関して、ステップは何も言われませんでした。投げるまでのトップの位置を安定させるものです。キャッチボールもなるべく頭に肩肘をつけたままするようにしました。地道にやっていました。それを続けることで感覚を身に着けられました。練習でも継続することで自分のものにできた気がします。

――キャッチングは?

梅野 「自分でつかみにいかない」ことを厳しく言われました。つかみにいくと、いいキャッチングにも見えない。あとインコースの左投手のクロスファイヤーを取るときに課題がありました。普通につかみに行くとボールがミットから逃げてします。肘をうまく使って右打者の近くに入れてハンドリングを生かして取ることを学びました。ただ取るだけでなく、盗塁などでスタートを切られたときにいいクセをつけておけば、安定した送球が投げられる確率が高いというのもあります。ボールも握りやすくなるし、ミスも少なくなる。キャッチングの大事さを学びましたね。代表では、いいアドバイスをもらえてよかったです。

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将来への思い

梅野は福岡大、大学日本代表でも攻守の要となった。目標はもちろんプロの選手となること。目標は巨人・阿部。プロでも攻守の要となるつもりだ。

――体重など体調面で気遣っていることは?

梅野 シーズンで結構変わります。リーグ戦でMAX85キロありました。やりながら絞って81キロに持っていきました。シーズン直前で絞っています。

――大学時代、思い出の残るシーンは?

梅野 神宮のセンター左への同点ホームランですね。中部学院大との試合です(2013年6月11日、大学選手権1回戦)。8回裏、頭を真っ白にして振りに行きました。打つしかないところで打てたのは大きかったです。すごく嬉しかったです。打った瞬間「入ってくれ」という気持ちになりました。

――プロ野球への想いは?

梅野 小学生のときは夢でしかなかったです。意識し始めたのは高2ですね。高校の1つ上の笠原さん(現巨人投手)いました。バッテリーを組んだのもありますし、当時から僕自身、打撃の部分でプロから注目されていたのもありました。大学に来たのも、高校時代に全国の舞台を経験していない自分が目立ちたいと思ったし、全国の舞台に立ちたいと思っていました。この4年間は無駄にしたくないと思って取り組んできました。大学日本代表にも2年から入って、いい経験が積めました。

――尊敬する人、影響を受けた人は?

梅野 高校時代の監督から受けました。杉山 繁敏さん(現東海大五監督)です。今思えば、これが言いたかったんだと分かることがあります。

――目標とする選手は?

梅野 ずっと言っているんですけど巨人の阿部さん。(関連記事:読売ジャイアンツ 阿部慎之助 選手の高校時代を教えて! 安田学園(前監督) 中根康高先生)打てる魅力があります。プロに入ってから学ぶものがあると思う。捕手として、たくさん学んで成長していきたいです。

(文=中牟田 康

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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