Interview

九州国際大学付属高等学校 清水 優心 選手

2013.09.12

 九州国際大付清水優心(ゆうし)捕手は1年春から彗星のように登場してレギュラーを獲得した。春季福岡大会(春季福岡県大会春季福岡北部大会)では3位。九州大会も2回戦まで進出した。体格の良さ、パンチ力のある打撃など、早い段階からプロの注目を浴びた。現在、チーム、自分のことをどう思っているのか。また、まだ叶っていない甲子園への想いを聞いてみた。

注目と苦難

 1年春から中軸に座りながら苦難の連続だった。2年夏まで甲子園切符をつかむことはなかった。今年の夏は初戦(2回戦)敗退という屈辱も味わった。

九州国際大付 清水優心 選手

――出身は山口県の周防大島ですね。なぜ九州国際大付へ進学を希望したのですか?

清水優心選手(以下「清水」) 僕が中3の春に九州国際大付がセンバツで準優勝しました。それを見て感激しました。福岡なら近いし、若生監督という偉大な方が指導されているのも知りました。九州国際大付に行けば、夢の甲子園にも近くなると思っていました

――1年春からレギュラーを獲得しました。苦労などあったのではないですか?

清水 九州大会にも出させてもらって、いい経験ができたと思っています。先輩からもいろんなことを教わることができました。1年生の時、僕自身は残り5回のチャンスがありました。でも3年の先輩は最後のチャンスになります。『俺らは最後の夏になる。一緒に頑張っていこう』と言われてプレッシャーは感じました。同時に熱い思いも伝わってきました。3年のために一緒に甲子園に行こう!という気持ちでやっていました。同時に迷惑をかけてプレーしてはいけないというのはありました。今、自分が一番上の学年になって先輩が話してきたことが身に染みます。先輩たちには感謝の気持ちでいっぱいです。そんな方々と甲子園に行けなかったのは、とても悔しかったです。

――2年夏は初戦(福岡大会2回戦・古賀竟成館)に0対3で敗れました。清水選手も4番で4打数ノーヒットでした。

清水 チャンスで打てませんでした。大事なところで点が取れないし、大事なところで相手に点を取られた。力は自分たちが上だったけど、気迫は相手より下回っていました。どこかで初戦は勝てると思っていたのかもしれません。どれだけ気迫を出していけるかだ!ということも学べたと思います。そこが結果につながると思います。ただ3年生には申し訳ないことをしたという思いがあります

――若生監督にとっても九国では初の初戦敗退でした。

清水 夏初戦で負けて、自分でもそんなに早く負けるとは思っていませんでした。今思えば、練習を含めて油断した部分があったのかもしれません。練習中の態度を改めないと甲子園には行けないと改めて思いました

[page_break:地獄の夏合宿]

地獄の夏合宿

 屈辱の夏を終えて清水は最上級生となった。そして主将となった。個人だけでなく、チームの柱として責任感が増した。早く終わりすぎた夏…。
 九州国際大付の長く熱い夏が始まった。若生正廣監督はチームに厳しい鍛練を課した。それは「40日練習」だった。ほとんど休みがない。指揮官は「今年の夏は暑かった。選手たちもよく厳しい練習に耐えたと思う。乗り越えてチーム全体が変わってきた」と新チームへの期待を膨らませていた。その厳しい練習を乗り越えて、清水はどう変わったのか…。

――新チームになって主将になりました。

清水 キャプテンとして僕の方から選手には話をしてきました。自分からコミュニケーションを取るようにしています。意見が食い違ってもお互いに分かっていけるようにしています

――具体的には?

清水 まず誰よりも一番元気を出さないといけないと考えています。キャプテンだからと何もしないと、目立ってしまうし、口だけで何もしていないと思われるのもいけないと思う。まず自分から行動を起こして示すようにしています。行動から示して、みんなの模範になるようにしていきたいです。

 実際に、清水はキャッチボールで遠投しない選手に肩の状態を聞くなど気配りを見せていた。自身の練習が終わった後はブルペンに行き、投手の状態を見るなど細かく移動していた。時には若生監督の伝達役となり、叱られ役にもなっている。

――あの夏の大会後に40日の合宿があったそうですね。

清水 アップでは腹筋、背筋を300回ずつ。そこから、ランニングに入って50mダッシュ6本。その後にラダー、ボールを体から離れたところにおいて素早くタッチすることをやっていました。アップから追い込んでやっていました。その後が基本練習。ノックからロングティー。引っ張るだけでなく、逆方向にも打っていました。シート打撃、その後グラウンド整備。最後にダウンで腹筋、背筋を700回でした。

――腹筋も背筋も1000回ですね。それは伝統ですか?

清水 合宿前に1日1000回しようという話になりました。監督から東北高校時代に1000回していたという話を聞きました。僕らはこの夏、初戦敗退したチーム。やらないといけないと思って実行しました。本当に1日中練習でした。オフがなくて、練習試合が入るまでは毎日でした。

[page_break:打撃も守備も手を抜かない]

打撃も守備も手を抜かない

 夏場の厳しい練習を乗り越えた九州国際大付ナインと清水。最初の公式戦となった新人戦(第10回北九州市内高校野球新人大会)では準優勝だった。今の打撃、守備の状態はどうなのか?若生監督から指導を受けて変化が出てきた。

――打球にも力があります。自分の打撃をどう見ていますか?

清水 自分は4番という打順です。このチームでは3番までが出塁してくれるので走者を返すことを考えて打席に入っています。大きいのは打とういうのは、あまり考えていません。監督さんも僕にはあまりうるさく言わないので自由に打たせてもらっています。それだけ期待されているというか、信頼してもらっている部分を感じています。期待に応えたいと思っています。

――チャンスで打点にこだわりがある?

清水 そうですね。自分でもチャンスには強い方だと思っています。打たないと4番ではないです。ホームランはこれまで15本(9月2日現在)です。ただ、あまり意識していないし、こだわりもありません。

 この夏、清水は打撃フォームをマイナーチェンジ。またロングティーで足元を意識したフォームを磨いてきた。「最近の清水の打球がすごくなったんですよ。ホームランも8月だけで立て続けに5本ぐらい増えました」と若生監督も認める成長ぶりを見せている。同時に「ダルビッシュは毎日、取材を受けていた。もっと取材してもらえる選手になってほしい」と激励していた。
 若生監督はチームについて「今年は能力のある選手が多い。期待している」と笑顔で話した。

――打撃フォームをどう考えていますか?

清水 この夏、監督さんに教えてもらってホームランが増えました。タイミング重視でやっていきました。元々スタンスもそんなに広くなかったです。しっかり足でタイミングを取って、スタンスを広げることによって自然に大きな当たりが打てるようになりました。これまで、なかなか大きな打球はなかったけど、今では自信になりました。習ってきたことが打席でも自然にできるようになっています

――キャッチャーとしてはどうですか。九州国際大付には投手がたくさんいます。

清水 自分が思ったことをうるさく言っています。なかなか聞いてもらえないことはあります。それでも正しいと思ったことは何度も伝えます。投手も分かっていないことがある。何度も話し合いをして説明するようにしています。よく話しているのは、先に追い込むことです。追い込むことで、その後の投球に幅ができますし、打ち取ることもできます。そこから投球のパターンも増えていくと考えています。

――アドバイスはどのようにしていますか?

清水 投手によってアドバイスも変えますね。初球からストライクが入る投手もいれば、まっすぐで押して行く投手もいる。ファウルで詰まらせてカウントを稼ぐようにしています。変化球の得意な投手なら先にカウントを取って幅を広げた投球をさせるように心がけています。

――肩、送球に自信はありますか?

清水 遠投は計ったことがないですが、自信はあります。コントロールよく、ベースの上に投げておけば、しっかりアウトが奪えると思っています。走者いるときに気にし過ぎることを監督やコーチから指摘されることがあります。打者に集中する場面との切り替えも大事ですね。

[page_break:夢をかなえる]

夢をかなえる

 清水の想い描く未来予想図は?目標とする選手は同校の先輩の髙城 俊人捕手(現・横浜DeNA)だという。最初の目標は甲子園出場。その次は髙城も果たせなかった日本一だ。

――今年は夏の甲子園は見ましたか?

清水 ほとんど見ることができませんでした。試合が長いときに寮に戻って少し見ることができたぐらいです。

――同級生である2年生も活躍した。その辺は気になりましたか?

清水 意識しないことはないです。先輩にも出ていた選手がいました。自由ケ丘にも同級生がいました。やはり…気になりますね。

――目標、あこがれの選手は誰ですか?

清水 九州国際大付の先輩の髙城さんです。尊敬しています。監督さんにもよく比較されます。将来的に追い抜きたいというのはあります。監督さんに『髙城はこうだった』と言われると意識しますね。将来、『清水はこんな選手だった』と言われるよう、目標とされる選手になっていきたいです。

――では、将来の目標は何ですか?

清水 監督さんへの恩返しをしたいです。そのためにはプロ野球選手になることだと思っています。

――打つ方の目標はありますか?

清水 ホームランは自信がないです。髙城さん、三好さんが20本ぐらい打っているので、まず20本を一つの目標にしたいです。

――甲子園への想いは強そうですね。

清水 監督さんや周りから、高城さんらのことを言われ続けた。僕は高2の夏まで残念ながら一度も行くことはできませんでした。最上級生になった高2の秋は福岡県大会、九州大会でまず優勝したいです。甲子園に行って、高城さんを越えて日本一になりたいです。

(インタビュー・中牟田 康

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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