Interview

千葉国際高等学校 相内 誠選手

2013.03.11

第136回 千葉国際高等学校 相内 誠選手2013年3月11日

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千葉国際高校1年夏からベンチ入りし、2年の夏の千葉大会では、初回に先頭打者から9連続三振をマーク。3年生最後の夏は、千葉大会の3回戦で散ったが、2012年のドラフトでは埼玉西武ライオンズから2位指名を受けた。縦に大きく落ちるフォークと最速143キロの真っ直ぐを武器にし、打者の弱点をつく投球術で活躍を残した相内誠選手に、今回は、ピッチングのこだわりと投球術について伺いました。

キレとスピードを手に入れるための練習法

千葉国際高校 相内誠君

――高校に入るまではどんな投手だったのですか。

相内 誠選手(以下「相内」) 小学4年生で野球を始めて、それからピッチャーひと筋でやってきたのですが、中学校時代まではスピードがなくて、コントロールと変化球で勝負していました。

――高校に入ったときの球速はどれぐらいだったのでしょう。

相内 130キロぐらいだったと思います。今は最速で145キロぐらいまで出るようになりました。遠投も入ったときは97メートルだったのですが、今は118メートルです。

――スピードを上げるのに、どんな練習がいちばん効果的でしたか。

相内 小学校時代からずっとゴムチューブを使ったインナーマッスルのトレーニングをやっていました。指導者に勧められたのです。毎日、左右それぞれの内旋(内側に回転させる筋肉)と外旋(外側に回転させる筋肉)を百回ずつです。時間的には10分程度なのですが、やっている内に、じわじわと腕の中の筋肉が熱くなってくるのがわかるんです。このトレーニングを毎日続けたことで、スピードも少しずつついてきたのだと思います。

――自分の投球に対する考え方について、高校に入ってから変わったところはありますか。

相内 2年秋の県大会で東海大望洋に敗れ、大きく変わりましたね。その試合、2対2の同点で迎えた7回裏、ツーアウトから、1番打者にセンターオーバーの三塁打を打たれました。フォークを2球続けて、空振り、空振りで追い込んでいたのに、ふと「最後は真っ直ぐで空振りを取りたい」と思ってしまったんです。続く2番打者にも、初球のストレートをレフト前に弾き返され、勝ち越し点を奪われました。結局、それが決勝点になり、2対3で負けました。試合後、何であのとき、1番バッターにもう1球フォークを投げなかったのかとずっと後悔していました。あの試合を境に、自分の持ち味は、やはり変化球とコントロールなのだと切り替え、もう一度、変化球を磨き直し、変化球中心のスタイルに戻しました。そうしたら、それまでは1試合あたり7本ぐらいヒットを打たれていたのですが、2、3本ぐらいしか打たれないようになりました。

――そこで、もっとストレートを速くしようとは思わなかったのですか。

相内 今の時代は、マシンなら160キロぐらいは簡単に出ます。だから、甲子園レベルになれば、速いボールはいくらでも対応してくる。真っ直ぐで押せる投手など、そうはいません。だから、開き直って、変化球を磨いた方がいいんだと思い直しました。

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[page_break:変化球の制球力をつけるコツ/コントロールを磨くイメージトレーニング]

変化球の制球力をつけるコツ

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――高校に入ってからは、どんな変化球をマスターしたのですか。

相内 中学まではカーブとスライダーしか投げていなかったので、高校でカットボールとフォークボールを覚えました。

――スカウトの相内君に対する評価が高かったのは、「いつでも変化球でストライクが取れるから」だと聞きました。変化球の制球力をつけるコツのようなものを教えてください。

相内 いちばん大事なのはイメージだと思います。カーブだったら、僕は、ベースの上に落とすイメージで投げます。そうやって自分なりのイメージを見つけてしまえば楽になります。フォークの場合は、手首を使わず、真ん中高めに思い切り腕を振って投げます。そうすると、ショートバウンドとか、ちょうどいい感じで落ちて空振りを取れる。調子のいいときのフォークボールは、今までバットに当てられたこともありません。

――カットボールは?

相内 カットボールは、指を少しずらして、真っ直ぐの感覚で外角に思い切り投げるだけです。スライダーは、真っ直ぐ以上に腕を振るイメージです。カットボールもスライダーも、手首と握りの形を決めて、あとは基本的にストレートを投げるときの感覚と同じです。手首をひねるとか、そういうことは意識したことがありません。カーブもひねるというよりは手首を固定して、抜く感じです。

――高校に入ってから、フォームをいじったりはしましたか。

相内 3年春に、右肩を左肩にぶつけるような感じで投げるようにしました。そうすると、体の開きが抑えられて、球筋も、コントロールもよくなりました。それぐらいですね。あとは小学校のときから、ほとんど変わってないと思います。

――調子が悪いとき、チェックするフォームのポイントのようなものはありますか。

相内 いや、実は、フォームに関しては、ほとんど気にしたことがないんです。だから、そういうのもないですね。

コントロールを磨くイメージトレーニング

「1試合投げ切るイメージはよくします」

――話は変わりますが、高卒の大型右腕というと、今ドラフトでは、大阪桐蔭の藤浪晋太郎と、花巻東の大谷翔平が注目を集めました。2人のことはどう見ていますか。

相内 スピードは抜けていましたけど、コントロールはそこまでいいとは思いませんでした。

――相内君は、これまでストライクが取れなくて困ったようなことはないのですか。

相内 ないですね。フォアボールも、いちばん多かったときで3つぐらいだったと思います。

――コントロールに悩んだことがない人にこんなことを聞いても無駄かもしれませんが、コントロールにもコツのようなものはありますか。

相内 それも、僕はイメージを大事にしています。僕は普段は投球練習も30、40球しかしないのですが、頭の中ではよく投げています。自分の理想のボールが外角低めに決まるイメージを何度も繰り返すのです。遊んでいるときとか、授業中とか(笑)。一週間、まったく野球をやってなくても、頭の中でイメージさえしておけば、それだけでもぜんぜん違うと思います。試合前日とかも、1試合を投げ切るイメージはよくします。

――ボールをコントロールするということは、内角を投げるときはプレートのここを踏んで……とういうようなことではないんですね。

相内 そういうことは考えたことがありません。内角へ投げるときは、内角を意識し過ぎないよう、内角と真ん中の中間あたりに思い切り投げ込む感覚です。そうすると、ちゃんとインコースへ行くんです。「甘くなったら打たれる」とか考えると、腕が振れなくなって、逆にコントロールが甘くなる。それよりも、内角を突くときは、コースはアバウトでいいので、そのぶん思い切り腕を振った方がいいと思います。

――外角を投げるときは?

相内 外角は昔から投げていたので、何も考えなくても構えているところへ自然と行くんです。内角は高校に入ってから使うようになったので自分なりに研究しましたけど、外角はいつでも投げられるという感覚ですね。

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[page_break:常に試合を想定して投げる]

常に試合を想定して投げる

高校時代を振り返る相内君

――高校に入学したばかりの頃は、プロなんて考えていなかったと聞きましたが。

相内 監督には「おまえなら行ける」と言われていましたけど、そんなに甘くないだろろうと思っていました。自分が入れるなら、何人でも入れるのではないかと。

――自信が芽生えたのは、いつ頃ですか。

相内 3年春、千葉大会の3回戦で千葉英和に3対1で勝ったときですね(2012年05月04日)。千葉英和は前年秋の優勝チームでもあったので。あのとき初めて、自分の投球スタイルでも通用するのかなと思いました。

――続く準々決勝は、腰痛が再発し、球速が130キロぐらいしか出ない中で、強豪校の拓大紅陵に0対1と善戦したんですよね。

相内 あの日は、遅い球でどうやったら抑えられるかを考えていました。それで、たまたま相手打線の中に左打者が多かったので、シンカーを使ってみよう、と。左バッターの外に逃げながら落ちるので。打撃練習のときに、遊びで使ったことがあったんです。そうしたら、その試合でたまたま、はまりましたね。

――シンカーは、以降は、もう使っていないのですか。

相内 腰が治って、また、投げてみたのですが、拓大紅陵戦のときのようには曲がりませんでした。でも、左打者にはフォークボールがあれば十分ですからね。フォークボールは力一杯投げないと落ちないんです。だから、腰が痛かったときは、その代わりにシンカーを使ったというだけで。

――最後になりますが、今の1、2年生に、ここだけは気を付けて練習をした方がいいということがあればお願いします。

相内 繰り返しになりますが、やはり意識ですね。どこのチームもやっている練習自体はそんなに変わらないと思うんです。でも、意識するとしないでは、結果がぜんぜん違ってきます。ブルペンで投げ込むときも、後から入った僕の方が先に投げていた投手より早く上がるということがしょっちゅうありました。ただ、30球なら30球、自分のイメージを大事にしながら、試合を想定し、しっかり投げていたつもりです。インナーマッスルの練習でも、ここが効いているなということを意識しながらやったから効果があったのだと思います。自分は特に「意識、意識」と自分に言い聞かせていたわけではないのですが、自然とそういう癖が身に付いていて、結果的に、そこで差をつけられたのかなと思います。

(インタビュー=中村 計)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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