Interview

阪神タイガース 西岡剛選手

2013.02.18

第139回 阪神タイガース 西岡剛選手2013年3月16日

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 千葉ロッテ時代の2010年、打率.346(安打206)でパ・リーグ首位打者に輝いたのち、2年間のメジャー挑戦を経て今季、阪神の選手として日本プロ野球に復帰する西岡剛選手にバッティング、盗塁で心がけていることについて語ってもらいました。

バットは内側から振り出す

阪神タイガース 西岡剛選手

―― 一塁ベースに近い左打席で打ったほうがヒットになる確率が高いということで、今の高校生には右投げ左打ちが非常に多いんですが、彼らに助言をするとしたらどういうことを言ってあげますか?

西岡 剛選手(以下「西岡」) バットに当てることが重要という前提で話すと、走り打ちは賛成しません。たとえば、イチロー(ヤンキース)さんはそういうスタイルでやっているように見えるんですけど、スロービデオで見ると、走りながら打っているように見えて、実はしっかり芯で捉えてから走っているのがわかります。

――強くバットを振るための技術的なアドバイスというのは?

西岡 まずはしっかりと打席の中で自分のスイングをすること。そこから走っても、足の速い選手なら三遊間に転がればセーフになる確率は高いし、しっかり捉えれば三遊間で捕られるようなゴロもレフトまでしっかりと転がると思うので、やっぱりそういうものをめざしてほしいです。

――バッティング練習をしている大阪桐蔭高校2年生の西岡さんをネット裏から見ていたときの話なんですが、バットが内側から出ているのを見て、打てる選手は形が違うと納得しました。

西岡 内側から振り出すというのは、ゴルフでもサッカーでも野球でも基本だと思います。バッティングならバットが外から出ていくより、脇を締めて内から振り出していくほうが力は出やすいです。腕相撲だってそうじゃないですか。直線的に倒すより、内側に向けて倒していくほうが力は出るでしょ。そういう意味では、肘を内側に入れるというのは理に叶っていると思います。

全力疾走の重要さについて語る西岡選手

――脚力も西岡さんの持ち味で、05、06年にはパ・リーグの盗塁王にも輝いています。盗塁の技術的な助言はもちろん聞きたいのですが、その前にバッターランナーの全力疾走が非常に大事だと思っているんです。そういうところは西岡さんも、アメリカに行く前ぐらいから強く出てきたんじゃないかなと思っているんですけど?

西岡 高校野球のときはピッチャーゴロでも全力疾走で一塁まで行きますよね。それは本当にいいことで、ピッチャーがちょっとでもポロッとすれば足の速い選手ならそれがセーフになる。1万回に1回でもそういうことがあればそのセーフはすごく価値があって、それで流れが変わります。
 でもプロになると、フライやボテボテのゴロで打ち取られたときまず悔しさに気がいってしまって、そこから全力で走ることを忘れてしまいがちです。僕もプロに入って(全力疾走を)抜いていた時期があったんですけど、それではいけないと気づきました。

――どういうシチュエーションのとき気づいたんですか?

西岡 同点の場面の9回裏、先頭打者で確かボテボテのショートゴロを打ちました。力を抜いて走ってぎりぎりのタイミングでアウトになって、次のバッターが三塁打を打ったんです。もし僕が一塁に生きていたら、それで1点入ってサヨナラ勝ちじゃないですか。でも、そのあとの打者が続かずに、次の10回表か何かに点を入れられて負けた試合があって、ああこれではいけないなと思いました。

[page_break:基本にとらわれすぎないことも大切]

基本にとらわれすぎないことも大切

「自分に合ったやり方がベストです」

――盗塁の技術的なこともお聞かせください。1月(2012年)に技術者講習会を受けたとき講師役のプロ野球OBが、「二盗するときの一歩目は左足から行く」という話をされていました。

西岡 基本はそうですね。基本はそうなんですけど、本当に自分が一番やりやすいやり方で僕はいいと思うんです。基本がこうだから、教科書に載っているのはこのやり方だからそれに当てはめるというのは、その選手にもし合わなければマイナスになってしまいます。僕は「左足からスタートしなさい」とは言いたくないですね。

――西岡さんの場合はどっちからですか?

西岡 アメリカに行ってからは、右足からスタートしていました。

――それはどういう理由で?

西岡 左足でスタートするというのは、本当に強い力がないと蹴り出せないんです。でも年齢を重ねるごとに、ちょっとでも体に負担を与えたくないという考えになって。どうしたら一番楽なのか考えて、右足からスタートしたほうが体重も乗りやすいし、そこまで力を使わず一歩目を踏み出せるという意味でもやっているんですけど。それが他の選手に当てはまるかどうかはわからないです。

――「一塁に帰塁するときは足がクロスしないように」ということもその講習会で聞きました。

西岡 それも基本だと思います。基本はその通りだと思うし、小さい子とかアマチュアの子に教えるのはそれで大正解だと思います。でもプロになると、基本通りにできずに戻らなければいけない状況が年間を通して何回かあります。そういうときにもどう対応できるかという技を、プロになると身につけていきますよね。

――基本は大事だけれど、それにとらわれ過ぎてはいけないということですね。

西岡 はい。基本ができたら応用問題にもトライしていくという考え方ですね。

――ディフェンス面に目を向けると、日本のアマチュア指導者が「三遊間のゴロでも正面で捕りなさい」と教えることが多いのに対して、アメリカでは「逆シングル」を守備練習でも多く取り入れています。やっぱり逆シングルは必要ですよね。

西岡 必要ですね。僕も日本にいるときはそれほど気にならなかったんです。人工芝が多くなっているので、正面に回っても球足が弱くならないのでアウトにできるんです。でも、土のグランドだったり芝が間に入っていたりすると、そういうプレー(逆シングル)が必要になってきます。

――セカンドとショートというのもだいぶ違うものですか?

西岡 セカンドのほうが確実に難しいですね。ショートのほうが華やかに見えるし、捕ってからスローイングする距離も長いので花形だと思うんですけど。

――傍目で見ていると、ショートのほうが難しいのかなという気がしてしまうのですけど。

西岡 ショートはもう流れに沿っていくだけなので。セカンドの場合はゲッツーのとき二塁ベースの方向に放らなければいけないし、ダブルプレーでも一回停止して、静止した状態から一塁にスナップスローしなければいけないし。そういう意味では技術が問われる場所だなと思います。

[page_break:高校生に伝えたいこと]

高校生に伝えたいこと

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――野球全体を見渡して、高校生に一番伝えたいことは何でしょう。いろいろ悩んでいる時期だと思うんですけれども。

西岡 オンとオフをきっちりとしてほしいなと思いますね。野球をやっていると24時間野球のことを考えがちなんですけど、僕は夜の12時を過ぎたら気分を切り替えようと思っていました。

――では、最後に4月からの新入部員の参考までに、スパイクとグローブの選び方の重要ポイント、いつも重要視しているポイントを教えていただいていいですか。

西岡 重要なのは手入れです。グローブとスパイクというのは本当に自分がプロ野球選手だったら必要なものであって、体の一部にならなければいけないものだと思うんです。今の子どもたちは環境が恵まれているせいか、道具の手入れをきちんとしている子が少ないと感じます。野球教室では毎回「道具を大切に」と言っています。当たり前のことだし、そういうことができないのであれば、僕は野球をやる資格がないと思います。

西岡選手、ありがとうございました。
今季から阪神タイガースの一員となり華やかなフットライトを浴び続けている西岡選手が口にした道具への深い愛情。一流選手への道はこういう部分にこそ隠されているのだと感じられました。

(インタビュアー:小関順二)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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