Interview

株式会社アシックス 仙田 正之 さん

2012.11.24

第119回 株式会社アシックス 仙田 正之 さん2012年12月13日

ブランドスローガン「最新、最速。」に込められたメッセージ

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▲ASICSが誇る研究施設「アシックススポーツ工学研究所」をモチーフにデザインされたメインビジュアル[/pc]

――ブランドスローガン「最新、最速。」の2文字は印象的なのですが、現場の意見を含めての2文字なのでしょうか?

仙田 正之さん(以下「仙田」) ASICSの強みは何かと考えた結果、既存のASICSブランドのイメージを高めていく必要があると考えました。そこで、ブランド調査をしたところ、ASICSブランドには「スピード」というイメージが抱かれていることが分かりました。そのイメージをさらに強く野球というカテゴリーの中に打ち出すには、何かメッセージとして持つべきではないかと。という理由で、この言葉が生まれました。ASICS BASEBALLは、一番新しいブランドであり、一番スピード感のあるブランドでもある。それを分かりやすく表現したのが「最新、最速。」になります。

アシックス株式会社 仙田 正之さん

――「最新」というワードに関してはどうでしょうか? 

仙田 一番新しいブランドが市場に出るということですので、「最新」になります。切り口としては従来の野球によく言われる“泥臭さ”“土臭さ”がない“かっこいい”“スマート”な野球。そういう意味でも新しさを切り出していこうと考えました。

――ASICS BASEBALLサイトを拝見させていただいたところ近未来的な感覚を受けました。「最新、最速。」に加え、どのようなイメージを重視されたのでしょうか?

仙田 私たちの誇りであるアシックススポーツ工学研究所です。野球だけではなく、陸上、ランニング、サッカーなど、科学的根拠に基づき、様々なカテゴリーのシューズ、用具、ウェアなどの研究開発を行なっています。その強みをモチーフとし、科学的なイメージを積極的に打ち出しています。

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[page_break:トップアスリートたちとのシューズ、ウェア開発]

トップアスリートたちとのシューズ、ウェア開発

アシックス 硬式用グラブ

――アシックススポーツ工学研究所が約30年前に出来たと聞いたのですが、具体的にどのような研究をされているのですか?

仙田 アシックススポーツ工学研究所では、選りすぐりの研究者が人体の動作分析を用いた機能研究や新素材開発を行い、科学的に効果が立証された製品を生み出しています。また、トップアスリートが数多く訪れ、足型や体型測定を行い、アスリートそれぞれにフィットしたギアを開発しています。

――トップアスリートと言えばイチロー選手ですが、イチロー選手にはスピードのイメージがありますね。

仙田 そうですね。やはりスピード系の選手といえばイチロー選手ということになりますね。イチロー選手には、スパイクなどを使っていただいていますが、我々がユーザーにブランドイメージを印象付けていくにはイチロー選手は大きな存在と考えています。

「野球を疑え。」

甲部皮部の挙動解析から生まれた
バッティング用手袋

――サイト上にある「野球を疑え」というワードも興味深かったですが、あれはどういう意図がありますか?

仙田 わりと皆さんもそうだと思うんですけど、日常変わりない習慣について何も疑うことがなく行動していると思います。このやり方でいいのかな?他にやり方がないかな?違う道を歩いたら他に発見があるかな?など、まず当たり前にあるものに疑いを持つことが大事だと気づきました。特に野球は「こうしなければならない」という既成概念が多くありますね。

 ASICS BASEBALLをデビューさせるにあたり、今までのモノをすべて否定するというわけではないんですけど、当たり前の“野球”さえもまず疑ってみようと。それは、我々メーカーの人間だけでなく、選手も同じだと思うんですね。例えば毎日100回素振りをすれば打てるようになるのか?それだけやって必ずうまくなるとは限りませんよね。それでは素振り以外に他にトレーニングする方法があるのか、素振り50回に減らして、打撃向上に活きる他のトレーニングメニューを取り入れるなど、今までの方法を変えてレベルアップを目指す。「野球を疑う」というのは野球に携わる全ての人にとって、より上を目指すには心に響くメッセージだと思っています。

――「最新、最速。」というのは「野球を疑う」という言葉がもとにあったわけですね。

仙田 大前提として野球を見つめ直す。その中でいろいろと見つめ直した結果が「最新、最速。」というなったわけです。

――野球を疑った結果、「最新、最速。」というブランドスローガンが生まれ、それがグラブ、スパイク、バットなどにも落とし込まれているんですね。

仙田 スピードベースボールというのがひとつのキーワードとなっています。プレーに還元されるメリットとしてはスピードが出ることになります。グローブであればボール半個分手が届くようになります。スパイクであれば、足が速くなる。バットであれば、スイングスピードが速くなる。ASICS BASEBALLの商品を使えばスピードが速くなるという開発者の魂がこめられているのです。

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[page_break:ASICS BASEBALLが描く野球の未来]

ASICS BASEBALL が描く野球の未来

――現場として高校球児からこういうことを言われたら嬉しい、こういう言葉を言われたいと思うものを教えて頂けますか。

仙田 「最新、最速。」をブランドスローガンとして取り組んでいますので、選手に「“最新、最速。”といえばアシックス、スピードベースボールはアシックスだよね」と認識してもらえれば成功だと思っております。

――マーケティングの仕事としてはどこの段階でゴールといえますか?

仙田 ゴールはないでしょう。売上を伸ばしていくのは会社として当然なことであって、自分で終わりと決めれば、それで終わりですので、変化を求める、さらに発展させていくのは今後も続けていくでしょうし、ゴールはないです。

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▲ASICS BASEBALL 公式サイトより[/pc]

――このスローガンをスタートして一番苦労したことは何でしょうか?

仙田 どうすれば今までの野球のイメージと違ったアシックスらしいイメージを表現できるか、多くの議論を重ねてきました。私もそうだったんですけど、野球のイメージというのは黒土があって、ドロドロとなって。クリーンなイメージというよりは汗まみれになりながらやるというものが多かったと思うのですが、ASICS BASEBALLはクールで、かっこいいイメージを表現していく。そのイメージをどうやって表現するのか。どうすれば最初にクールでかっこいいと認識させるか一番苦労した点になります。

 あまりにも情報が多いとあれもこれもということになりますので、「最新、最速。」と強く表現することが、クールでかっこいいというイメージを印象付けるには効果的だと考えています。

「『最新、最速』を体感して下さい」

――実際に開発者の皆さんが商品を開発されて、商品を見たときは求めていたものはこれだ!と思いましたか?

仙田 企画開発担当者が自信を持って商品化してくれていますので、すばらしいモノ(商品)になったと思います。あとは、お客様が商品を使用して、限界のもう一歩先に届いたり、半個分先のボールに届いたりと商品の機能から得られる効果を体感していただけると良いなと思います。

――商品開発者のお話を聞いて、コンセプトが皆さんぶれていないと思いましたし、マーケティングの方針がしっかりと伝わっていると思いました。

仙田 ASICS BASEBALLは野球市場に何を発信しなければならないのか?を全員でしっかり理解して取り組んだ結果だと思います。今度も、このコンセプトはブレることはありません。選手の皆さんに商品を使っていただいて、ASICS BASEBALLの商品を使って“良かった”と思ってもらえるように、商品開発、マーケティング一体となって、機能から得られる商品の効果を発信していきたいと思います。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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