Interview

株式会社アシックス 井上 堅一 さん

2012.11.19

第115回 株式会社アシックス 井上 堅一 さん2012年11月29日

動きやすさとパフォーマンスアップを求めたアンダーウェア

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▲ASICS BASEBALL アンダーウェア[/pc]

――今回ASICS BASEBALLでは、最新のテクノロジーを取り入れたアンダーウェアが発売されました。どれくらいの年月をかけて開発されたのでしょうか?また、開発時は、どんなことをテーマにされていたのでしょうか?

井上 堅一さん(以下「井上」) 開発から発売までは2年半ほどですね。どんなアンダーウェアを野球の選手たちが求めているのか調査した時にやっぱり『動きやすさ』を重視していたんですね。ASICSとしては、これまで他の競技でも、動きやすさを求めたアンダーウェアは発売はしていましたが、ASICS BASEBALLとして動きやすさを求めるなら、どこに特化すればいいのか研究した結果、まずは肩周りと腕周りといった腕の可動域が広がること。そこに着目して開発を進めていきました。

筋肉の動きに即したパターン設計

――肩周りと腕周りの動きやすさを目指したパターン設計で、工夫した点はどんなところでしょうか?

井上 プレーしている時の選手の皮膚や関節の動きに合わせた独自のカッティングを試していきました。腕を上げた時にツッパリ感がなく、腕をおろした時に全くシワにならないカッティングが一番理想なんですよね。
そういう意味で、逆に伸びが必要な部分ってどこなのかを研究所で分析しながらパターン制作を進めてきました。
生地は縦と横で伸びが違うので、それぞれのパーツで伸びが必要な方向に合わせて、生地のパーツの置き方を変えていきました。
その結果、皮膚の動きと筋の伸びに比例したパターン設計が出来あがったんです。

――そこまで細かく研究されていったのですね。このウェアを着用することで、身体の負担も軽減されるのでしょうか?

井上 アシックススポーツ工学研究所では、腕を上げる動作時の筋の負担が約6%軽減されるという数字も出ました。実際に着用した時の選手の最初の感想は『ラクですねー!』という声が最も多かったですね。これまで選手が着ていたアンダーウェアと比べても、『ツッパリ感がなくて、とてもラクです!』と言っていただけますね。

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[page_break:体幹と回転力の強化、さらに肩の可動域を広げた工夫]

体幹と回転力の強化、さらに肩の可動域を広げた工夫

株式会社アシックス 井上 堅一さん

――まだまだ、こだわりのポイントがあるようですね。このウエスト部分ですが、体軸を固定する機能をアンダーシャツに搭載したことで、パフォーマンスアップにもつながったそうですね。

井上 ウエスト脇の部分が、ストレッチの強い素材で二重になっていることで、締め付け感を出しています。これによって、体軸が固定されて、バッティングやスローイングのパフォーマンスアップにもつながってくるんです。
実際に着用した方からは、『体軸が安定して、投げた時のフォームがキレイになった』という声もいただきました。体軸の締め付けは過度になりすぎると違和感はありますが、適度な締め付けは大事なんですね。

――なるほど。このウェアの背中の肩付近にも、ウエスト部分とは違う生地の工夫がほどこされていますね。

井上 肩甲骨を抑えることによって可動域を広くする『トライアングルバック』を搭載しています。もともと他の競技でも、ウォーキングを中心に腕を低い位置で動かしやすいアンダーウェアを開発していたのですが、野球の場合は、投げる動作の中で肘をいかに上げやすく出来るかがポイントになります。

そこで、腕上げの動作をする際に、どういうパターン形状がいいのか研究する中で、このトライアングルの形が生まれました。
肩甲骨の下側を抑えることで、肩の動きやすさが出るんですね。球速が速くなったり、コントロールが良くなったり、遠くに投げられるんじゃないかとイメージして作り上げたのですが、実際に検証すると、球速が約1%アップ(※)したという数字も出ました。約1%といえば、138~139キロ投げられる選手が140キロに届く数字ですね。

――肩甲骨を安定させることでも、パフォーマンスアップにつながっていくのですね。

井上 肩甲骨の位置をアンダーシャツでロックすることで投げやすいフォームになってきます。これが『トライアングルバック』です。それにウエスト脇のストレッチの強い二重構造がパフォーマンスアップに繋がっています。
このアンダーウェアは、体軸も固定されてピタッとしたイメージに感じるかもしれませんが、実はとても脱ぎやすいんですね。選手たちはよく試合中に汗をかいて着替える時に、アンダーウェアがピタピタになって自分一人で脱ぎ着できないくらいになることがあるようですが、私たちはそこも工夫をしていきました。どういうパーツをつければ、試合でも簡単に脱ぎ着出来るのか。その結果、脇の部分は締めても、ウエスト周りの生地がヨコ伸びすることが出来れば着脱しやすくなるんです。ですから、汗をかいても脱ぎ着もラクに行うことができます。

立体昇華の技術を取り入れたマーク

――1着のアンダーウェアの中でも、アシックススポーツ工学研究所での実験を取り入れた最新のテクノロジーがたくさん取り入れられているのですね。

井上 僕たちは選手たちに、一度このウェアを着たら、『もう一回着たいです!』そう言ってもらえるブランドを目指してきました。『これを着て勝負したい』、そう思ってもらいたいんです。
 またアンダーウェアだけでなく、ユニフォームも、ユニフォームの胸元にいれる高校名のマークを重たい縁取り刺繍ではなく、薄くて軽く、さらに3Dのような立体昇華の技術を取り入れたプリントを開発しました。マークが、単色のプリントではなく、刺繍のようにみえるユニフォームです。
 こういった形で、ASICS BASEBALLは、アンダーウェアにしても、ユニフォームにしても、『こうであるべき』という概念ではなく、新しいスタイルのものをこれからも提案していきたいと考えています。

※手首速度はボール速度と比例するため。アシックススポーツ工学研究所調べ。10代男性野球実施者の検証結果の平均値。効果には個人差があります。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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