Interview

株式会社アシックス 高橋 規夫 さん

2012.11.05

第112回 株式会社アシックス 高橋 規夫 さん2012年11月17日

 2012年11月上旬に野球界に進出したASICS BASEBALL「限界のもう一歩先へ」を企画コンセプトに、軽さとフィット性にこだわった樹脂底のスパイクシューズ(SPEED TECH QT2)の企画・開発に携わった高橋 規夫さんに軽量化スパイク作りの原点となったイチロー選手とのやり取り、スパイクに対する熱い思いを語っていただきました。

「限界のもう一歩先へ」イチロー選手とのスパイクシューズ作り

株式会社アシックス 高橋 規夫さん

――スパイク作りにかかわって何年になりますか?

高橋 規夫さん(以下「高橋」) 去年の4月からやらせてもらいまして、丸1年半になります。

――前からスパイク作りに関わりたいと思いはありましたでしょうか?

高橋 私は以前までスポーツ用品店の営業担当をやらせてもらっていました。その時に思ったのは、自分で営業をしながらも、プロ野球選手が履いているアシックスのスパイク作りに興味が抱いておりました。今の仕事につけたことはありがたいと思っております。

――スパイク軽量化・耐久性という流れになってきたのはいつごろからでしょうか?

高橋 アシックスは元々、イチロー選手がオリックスにいた時からアシックスのスパイクをはいてもらっているんですけど、イチロー選手は軽さに拘っておりまして、特にメジャーに移籍してから軽さを追求してきました。我々もイチロー選手のニーズに応えられるように軽量化にこだわってきました。アシックスのスパイクはイチロー選手によって作られたものだと思っています。

――イチロー選手の要望はとてもハイレベルなものなのでしょうか?

高橋 いやシンプルです。「かっこよさ」と「軽量」というのを毎年言われまして、我々がイチロー選手のもとへスパイクを4パターンから5パターンぐらい用意をして、プレゼンしに行きました。

――イチロー選手の下へ持っていくのはとても緊張いたしますよね…。

高橋 本当にそうですね!小学校の頃からイチロー選手はあこがれの存在でしたから本当に緊張しました。

――イチロー選手はこのスパイクは良い!といってくれるのですか?

高橋 その場では言われないです。スパイクを履くのは2月の春季キャンプからになります。そこで履いてもらって、イチロー選手がどう言われるかが、こちらとしてはとても重要なことですね。

――これで良いと言われた時はほっとしますね。

高橋 そうですね。ただイチロー選手との関係の中で、これは駄目だといわれたことはなく、信頼関係で成り立っていると思います。

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軽量感と耐久性を実現するまでの道のり

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▲ASICS BASEBALLのスパイクシューズ開発コンセプトは「限界のもう一歩先へ」[/pc]

――軽量化するということは耐久性に相反するものだと思いますが、軽量化と耐久性を兼ね備えたスパイクを開発する上で苦労した点はありましたか?

高橋 耐久性という部分ではソールや、歯を強くしたりすることはできるのですが、アッパーという部分は伸びてしまうことがあります。そうならないように素材の使い方、素材の選定で工夫します。当社としてはベストパフォーマンスを発揮してもらうために試合用として使用していただくことをお勧めしています。

――試合用ということになりますと何年間使えますか?

高橋 高校野球ということならば、約1年半~2年間ほどは使えます。

――春、夏、秋の公式戦はこの1足で十分戦えるということなのですね!

高橋 もう楽々こなせます!歯も、アッパーも約1年半〜2年間ならば問題なくご使用いただけます。

”SPEED TECH QT2”

――今回の軽量化のスパイクを実現できたのは何年ぐらいになりますか?

高橋 何年というものではなく、もう1年1年の積み重ねで軽量化のスパイクが出来あがったものだと思います。先ほども述べましたが、イチロー選手が「軽さ」と「かっこよさ」を追求される以上、イチロー選手のスパイクを毎年進化させる必要があります。それに応えるために再びスパイク作りに取り組む。
 「かっこよさ」はデザイナーがデザインをあげていきますので、デザイナーのデザインが出来あがるのを待つのみですが、軽さについては常に我々が考えていかなければならないので、1年1年の結集が繋がっていると思います。

――1年1年でさらに最新のスパイクを作り上げていくのですね

高橋 そうですね。今度は今のスパイクに加味したものを作り上げていかなければなりません。今の形がゴール地点ではないので、常に今の形よりもさらに良いモノを作り上げていかなければなりませんね。

――さらに高いレベルを求められることはスパイク作りに携わるものとして楽しいものでしょうか?

高橋 そうですね。このSPEED TECH QT2は「限界のもう一歩先へ」を企画コンセプトに作りあげました。このスパイクで、もう一歩先へ進めたことで本来アウトなのに内野安打になったり、追いつけなかったフライに追いつけたりするととても嬉しいですね。
 一番嬉しいのは、当社のスパイクを履いた選手が甲子園大会などの試合で活躍してくれることですね。そういうのを見ると、もちろん本人の実力が99パーセントですけど、残りの1パーセントが力になっていたら、嬉しいですね。ほんの1%でもいいんです。それが選手の力になっていたらとても嬉しいですね。

――企画担当者としてこのスパイクを履いてこう言われると嬉しいと思える言葉はありますか?

高橋 このスパイクに関しては拘ってきたのは「履いた時に履いた感覚がしないこと。」どこでも曲がりますので、裸足感覚で履いているようなスパイク作りを心がけてきました。とにかく軽いと感じられることが一番嬉しいですね。あとは疲れにくいのも強みです。

――最後に企画担当者としての拘りを教えていただいてもよろしいでしょうか。

高橋 スパイクに関しては、軽さはもちろん継続していきますが、そこに強さを求めていきたいですね。イメージとしては、スピード感に力強さを加えたいです。軽量化に走りすぎず、力強さも兼ね備えたスパイクを開発したいと思います!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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