Interview

慶應義塾大学 横尾 俊建 選手

2012.07.23

第106回 慶應義塾大学 横尾 俊建 選手2012年07月30日

 2011年、昨夏の甲子園で、日大三の4番打者として長打を量産。日本一に貢献した横尾俊建選手。高校卒業後は、慶應大に進学しました。

――高校時代は、通算58本塁打を記録しました。横尾選手自身、この数字はどう捉えているのでしょうか?

横尾俊建選手(以下「横尾」) 少ないと思っています。正直、もっといけました。でも、高校時代はホームランを狙っていたわけじゃないんです。当時、高山(現・明治大)や畔上(現・法政大)がいて、みんなが打っているので、自分もホームランよりも打率を残したかった。
 でも、もし今、高校時代に戻れるなら、全打席ホームランを狙いたいなという気持ちはありますね。

――打率を残したいと思って、実際に結果が残せた理由は?

「横尾」 そうはいっても打率というのは、結果論なんですよね。目標はそうでも、結果的に終わったら打率が高かったということ。一番は集中すること。また、練習ではバッティングのことについてたくさん考えて練習する。それで、試合では集中する。そうやって高校時代は取り組んでいました。

そう語る横尾選手に今回は、高校球児たちに多くのアドバイスをいただきました。

【目次】
1・横尾選手が見出したバッティング理論
2・バリー・ボンズ選手のバッティングフォームから学ぶ
3・毎日の練習や試合での振り返り方
4・横尾選手が実践している集中力を高める方法

横尾選手が見出したバッティング理論

”慶應大学 横尾選手”

――高校時代は、常に結果を残してきた横尾選手ですが、3年の春のセンバツ時は、結果が出ずに苦しんでいたようですね。そこからどうやって夏まで調子をあげていったのでしょうか?

「横尾」 正直、本当に悩んでいました。僕のキャリアの中でも一番苦しんだ時期でした。これまでは経験したことがなかったバットにボールが当たらないという現象が起きた。
夏に入る前に監督さんに『僕はもう4番は打てません』と言いに行こうと思ったぐらいでした。でも、それがあったから夏に向けて、調子を上げて、結果を残せたんだと思うんです。その頃は、相当苦しみながら練習していましたね。

――そこからどのようにバッティングフォームを変えて、調子を取り戻していったのでしょうか?

「横尾」 センバツの時の映像をみて、自分のバッティングフォームを振り返りました。
 自分の理想はトップが45度になってほしいんです。でも3年のセンバツの時はここが真っ直ぐになってたんです。ここから打ちに行くからワンテンポ遅れるし、ヘッドが下がる。

 それが僕がビデオでフォームをみて研究して出てきた答え。『あ、ここだな』って分かりました。スイングスピード自体は、甲子園に出て、自信になった部分もあったので、トップの位置さえ直せば、夏の予選から甲子園に出ても結果が出るなと思いました。実際に、そこからグンと伸びていきましたね。

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[page_break:バリー・ボンズ選手のバッティングフォームから学ぶ]

バリー・ボンズ選手のバッティングフォームから学ぶ

”バリーボンズ選手のスイングを参考に”

――高校時代から、ご自身のバッティングフォームを自ら分析されていたのですね。そんな横尾選手のバッティングは、どんな選手を参考にされているのですか?

「横尾」 バリー・ボンズ選手が究極ですね。僕の場合は、色々研究して、いい選手を見て、何がいいのかを見てそれを取り入れるようにしています。

――バリー・ボンズ選手も含め、理想にされているバッティングフォームというのは?

「横尾」 まず、バットって遠心力で回りますよね。その遠心力でバットは振るとどんどん下がってしまう。だから、下がらないために、どんどん前に手を出していかないとバットが出てこない。それをバリー・ボンズ選手は手を出さなくても、回転に巻きつけて、ヘッドが遅れない。それがすごいんですよね。また、腕が伸びないというのもすごいですよね。


【バリーボンズ選手のスイングを参考に回転に巻きつけてヘッドが遅れないスイングを実践】


【NG例 通常は遠心力でどんどんバットが下がってしまう】

毎日の練習や試合での振り返り方

”積み上げてきたものがあるからこそ、振り返れる”

――横尾選手は試合中も打席ごとに振り返り、修正をするそうですが、どのように考えられているのでしょうか?

「横尾」 まず、1打席目に何で悪かったのかを自分で考えて、2打席目に立ちますね。もちろん、試合だけでなくて、練習でも考えながらやります。
 練習の時の打球を意識することで、『こう振ったからこうなる』『こうなったら、こうなる』っていう引き出しがたくさん出来る。それをもとに、試合中、悪くても修正できたんですよね。

――普段の練習中にどこをポイントにチェックされているのでしょうか?

「横尾」 一言では言えないですね。やっぱり、バッティングというのは、その選手自身が自分のバッティング理論を持っていれば、すべてつながってくると思います。
 結局は、自分のフォームを知っていて、自分の理想像をしっかり持っていれば、『何が悪いんだな』というのはすぐに分かると思います。
 例えば、打球の飛び方をみても、アウトコースを右中間に打つということを考えた時に切れないとか、もし切れたら手がズレているんだなとか、そんな簡単なことですけど。打球の感じですぐに判断できるようになりますね。

――これを読んだ高校生の皆さんも明日からすぐに出来るようになりますか?

「横尾」 出来ると思いますよ。実際に僕も高校生の時にそう考えて、毎日の練習に取り組んでいたので。
 もちろん、何を意識するかというのは、その日によっても違うんですけど、『自分がどうなりがちなのか?』というのは高校生でも分かるレベルだと思います。自分がどうすると悪いのかとか、そういうのをしっかり確認しながら、どうやったらそれが直るのか?というのを自分でノートに書いたり、頭を使ってしっかり振り返って練習すれば、試合にもつながると思います。

――横尾選手は、高校時代から毎日の練習や試合を振り返りをされていたのですね。

「横尾」 そうですね。小さい時から親父に『何が悪かったのか?』というのを毎日言われていたので。『何で?』というのを持ったほうがいいと思います。
 ああなったから打てなかったのか。じゃあ、どうやったら、ああならないのか。そういうことを考えていかないとダメ。『ああなったからダメなんだ』じゃなくて、『どうだったから、ああなったのか』を考えなきゃいけない。それで、その試合でああなっちゃったから、次はこうやろうって思うんですよね。

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[page_break:横尾選手が実践している集中力を高める方法]

横尾選手が実践している集中力を高める方法

”自分に言い聞かせ集中力を高める”

――それを実際に練習から取り組んだとして、試合でその力を100パーセント発揮するためには、どうしたらいいのでしょうか?横尾選手はそのあたりが上手なイメージがありますが。

「横尾」 試合で100パーセント力を発揮するには、簡単には言えないんですけど、ゾーンに入って集中するということです。バッティングの理論は試合中にやろうと思っても、すべては出来ないですから。
 タイガーウッズ選手も『ゾーンに入ったらホールインワンの道が見える』とコメントしていましたが、それくらいゾーンに入ってしまえば誰でも打てるんですよ。それが試合で100パーセントの力が出せる方法。
 僕もまだゾーンにまで入れないんですけど、そのために『集中しろ』って自分に言い聞かせる。集中の仕方は人によって違うと思うんですけど。だけど、その集中というのが高校球児には難しいと思うんです。

――横尾選手が実際に行っていた試合前の集中力UP方法とは?

「横尾」 僕は、試合前のアップでまず誰とも話さないようにしてます。そして、キャッチボールでは誰よりも後ろで投げる。そこからスタンドの観客などを見て集中する。また、先にシートノックをやるよりも、後からのシートノックをやるほうが、汗もすごくかいて、『今から集中するぞ』と思って、より集中できますね。

日本一になったチームを振り返る

――横尾選手が考える「強いチームに必要なもの」とは、どんなことだと思われますか?

「横尾」 『言い合うこと』だと思っています。嫌われてもいいから、ダメな奴にはダメなんだと誰にでも言えること。仲良しクラブじゃダメですね。それで、キャプテンがみんなの意見をまとめる。僕たちの代の日大三は、畔上がいてくれたことも大きいですね。
 僕らの代は本当に個性があったんですよ。僕も含めて、みんながまとまらないような感じだったんですけど、畔上はアイツなりにみんなのことを理解してくれて、みんなをまとめてくれた。
 絆とかチームワークとかそういうものじゃあくて、お互いに言い合える仲間。みんなが嫌われ役じゃなきゃいけない。そういった意味で、畔上も一番頑張ってくれましたし、本当にいいチームでしたね。

――高校時代は、ずっと4番を任されてきた横尾選手ですが、4番の役割というのはどういうふうに捉えてきたのでしょうか?

「横尾」 試合を決める一打を打てるかどうかだと思っています。例えば、初回にツーアウト・ランナー一塁の場面でホームランを打てば試合は決まると思っているんですよね。初回の1打席目でインパクトを残すというのが4番の役目だと僕は考えています。

――では、最後に今後の横尾選手のプレースタイルについてお伺いします。
高校を卒業されて、いまは慶応大でプレーされていますが、高校と比べて何か意識が変わった部分はありますか?

「横尾」 大学ではホームランを狙うようになりました。大学はトーナメントではなくリーグ戦なので、長いスパンで自分自身を見つめていかなければいけないなということで、自分のタイプを確立しながら、自分はホームランバッターで行こうと春のリーグ戦で決めました。

横尾俊建選手、ありがとうございました。
高校時代から様々な選手をみて研究し、自らのバッティングフォームを見つけていったのですね。また日々の練習の振り返りから自分のプレースタイルを確立していった姿勢や考え方は、とても勉強になりました。
東京六大学リーグには、現在日大三の元チームメイトたちも活躍していますが、横尾選手の今後の活躍にも注目です。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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