Interview

千葉ロッテマリーンズ 唐川侑己選手

2012.06.26

第98回 千葉ロッテマリーンズ 唐川侑己選手2012年06月29日

 2011年の昨シーズン、12勝をマークした唐川侑己投手(千葉ロッテマリーンズ)。入団4年目に大きな飛躍をみせた。これまでと、そして今と、唐川投手の中で何が変化したのか。
 また、夏を迎える高校球児に向けて、ピンチの場面の切り抜け方や、四球を出した時の考え方などアドバイスも満載!

考えて投げ続けた結果、生まれたもの

“実践することが大事”

――昨シーズンは12勝をマークした唐川投手。昨シーズンと、入団してからの3年間。結果も大きく変わりましたが、どんなところが自分自身の中で一番変化したと感じますか?

唐川侑己投手(以下「唐川」)  去年に関して言えば、過去3年間(プロで)やってきて、ある程度、自分のスタイルのイメージが出来てきました。その中で試合の状況に応じて、心に余裕を持って色んなことをたくさん考えられるようになった。考えることによって、心に余裕が生まれたかなと思いますね。一年を通じて、当然苦しい時期もありましたが、自分に余裕を持って出来たかなと。
 自分の中で、一生懸命考えながらやっていこうという思いがあったので、それが形になって出来たのが、去年が初めてでしたね。

――唐川投手は、お話しを伺っていると以前からも常に考えてプレーしていた印象がありますが、それでも1~3年目はまだまだという感じだったのでしょうか?

「唐川」  確かに考えてはいたのですけど、その考えが途中でブレたりとか、逆に考えすぎて悪い流れになっていくというのはありました。より引き出しが増えたので。それで余裕が生まれたのかなと思います。

 それに、僕に関しては圧倒的なボールがあるわけでもないし、これという変化球があるピッチャーでもなく、トータルで勝負するピッチャーなので、それは当然考える力が必要になってくる。考えて投げる。僕にはそれしかないので、それをやっているという感じです。

ピンチの場面や四球を出したあとの考え方

――実際に試合において、追い込まれた時の考え方をお伺いします。まずは、カウントが悪くなった時には、どんな心境でマウンドに立っているのでしょうか?

「唐川」  場面にもよるんですけど、例えば序盤でツーボールやスリーボールになった時は、フォアボール(四球)よりもヒットを打たれたほうがいいので、そこは開き直って、ど真ん中に投げる。これが一番大事ですよね。
 逆に、試合の終盤にカウントが悪くなった時には、ボールが甘く入ったらホームランを打たれるバッターであれば、無理してストライクを投げにいってホームランを打たれるよりは、フォアボールを出してでもしっかり切り替えて次のバッターにという考え方が大事になりますね。

――逆に、バッターと勝負しなければいけない追い込まれた場面で、フォアボールを出してしまった時の気持ちの切り替え方は?

「唐川」  フォアボールも『ヤバい』と思うから、やばくなっちゃうことが多いと思うんですよね。だからフォアボールを出してもなんとも思っていなければ大丈夫なんです。
 僕がやっていていいなと思うのは、フォアボールを出して、ノーアウトランナー一塁の場面を作った時には、ゲッツーを狙う投球をするための努力をしようとすること。ゲッツー(併殺)って高校野球では難しいですが、そういった努力をしようとすることが、最も心を落ち着かせる方法かなと。
 やっぱり『フォアボールを出してしまった!』と思うよりは、フォアボールを出してしまったのだから、『次のバッターをゲッツーで捕ろう』と思う方が心に余裕が出来ますし、ポジティブな考え方になりますよね。

[page_break:.高校時代の唐川投手はどうピンチを乗り越えてきた?]

高校時代の唐川投手はどうピンチを乗り越えてきたのか?

“軽量感をコンセプトにしたグローバルエリート”

――唐川投手が高校生のときは、四球を出したらどんな心境でしたか?

「唐川」 高校時代も変わらないですね。基本的にフォアボール(四球)を出しても、ランナーを出しても、バッター勝負だと思っていたので。バッターさえ抑えればという考えでした。だからフォアボールを出しても何とも思わなかったというのが一番ですね。当然、指導者の方やキャッチャーからは、フォアボールを出したら怒られますけど『だからなんだよ』って(笑) フォアボールはルールにあることですからね。顔には出しませんが、心の中ではそんなふうに思っていましたね。
 もちろん、高校野球ってフォアボールは一番ダメとされるので、出さないにこしたことはないですけど、フォアボールに対してもっと楽観視することも必要なのかなとは思います。

――なるほど。ちなみに、活躍された昨シーズンは、より強いハートを手にすることが出来たということなのでしょうか?

「唐川」 これも気持ちなのですけど、常にポジティブにやるっていうのと、常に楽しむっていうことを大切にしていました。

 例えばノーアウト満塁になった時に『あ、ヤバい』とは当然思いますけど、これを抑えたら試合の流れは自分たちに来ますし、かっこいいじゃないですか。そんな気持ちを持って投げていました。
 『ヤバい!』と思って投げて打たれたら『はぁー』ってなりますけど、『これ抑えたらかっこいいだろうな』と思って投げて打たれたら『あれ?』で終わるじゃないですか。やるのは、結局は自分なので。だからポジティブに考えたほうが気がラクだと思うんです。
 

全員が『自分が主役』と思うと強いチームに!

――現在の千葉ロッテもそうですが、高校時代も含めて、強い組織で追い込まれたときの力を発揮するときのチームの共通点はありますか?

「唐川」 そうですね。高校の監督さんに言われたのですが、チームはチームワークが大事と言われますが、チームは一人ひとりの集まり。
 一人が違う方向を向いていたら当然、その一人のレベルにチームは傾いてしまうし、みんなが同じ方向を見て同じ考え方をしていたら、それはまとまった一つの力になる。
 そういったことを高校の監督さんから教わったので、一人ひとりがお互いに依存しない関係というのは大切なのかな、と思いますね。とくにプロになると余計一人ひとりというのが強いので。でも、それはチームワークが無いのか?と聞かれたらそれは違うと思うんです。一人ひとりの責任が、とても大切になってくるのですよね。

――そう個々の選手が思えるためには?

「唐川」 みんなが『自分が主役』と思ってやるしかないと思います。例えばバッターがバントを狙わなければならない場面でのバントは、すごく大事なバントになる。そういう時に、『この場面は自分が主役だ』と思ってやることが大事になってきますよね。

――強いチームの雰囲気を感じながら投げるのは、ピッチャーとしても楽しいですよね。

「唐川」 やりがいはありますね。より高いレベルを全員で目指していくというのは、大切なことだと思います。

[page_break:.道具のこだわり&球児へのメッセージ]

道具のこだわり&球児へのメッセージ

“実践することが大事”

――では、最後に守備に関してお伺いしますが、唐川投手のフィールディングの上達法とは?

「唐川」  フィールディングにおいて大事なことは、速くやることよりも、正確にやること。速さじゃなくて、例えばどういう形でしっかり取って、脚はどう動かして・・・というのを確認しながらやるほうが大切なのかなと思いますね。
 上達するには、量も大事になってくると思いますけど、雑に100回やるなら、丁寧に10回やった方がいいと思うんですよね。集中して、1日10回、フィールディングの練習をやれば絶対上手くなると思いますよ。

――ピッチングはもちろん、守備も含めて、唐川投手の使いやすいグラブについてお伺いします。今は、どんなグラブを使っていますか?

「唐川」  今年は一回り大きくしたのですけど、ミズノの『グローバルエリート』を使っています。グローバルエリートは、軽量感を重視して作っているので、使いやすいですね。僕は、グラブは重いよりも、軽いほうがいいんです。

――グローブを一回り大きくしたのはなぜですか?

「唐川」  クセが出づらいように、大きいグラブが良かったのですけど、あまり大きくても邪魔になってしまう。だけど、去年使っていたグラブが小さく感じたので、もう少し大きくても大丈夫かなと思って。実は、大きさを変えたんですが、重さはそんなに変わってないんですよね。だから、今のグラブはとても使いやすいですね。

“実践することが大事”

――今年は『黒色』のグラブを使っているのですね。高校時代は何色のグローブを使っていましたか?

「唐川」  高校のイメージカラーは紫だったので、黄色が合うかなと思って、黄色のグローブを使っていました。

――それでは、最後に球児にメッセージをいただきたいのですが、今後、唐川投手のピッチングにおいて、どんなところを高校球児の皆さんに見てもらいたいと思いますか?

「唐川」  僕は調子が悪くても、何が何でも試合を作るという気持ちでいつもやっています。それは高校野球にもつながると思いますが、そういう面で、試合においてピッチャーって大事な存在だと思うのです。だからこそ、自分の役割を全うしようと思って投げているので、その辺を球児の皆さんにも見てもらえたらいいなと思います。

 唐川投手、ありがとうございました!常に考え、成長し続ける唐川投手の思考から盗めるものはあったでしょうか。投手の皆さん、この夏はピンチの場面を乗り切る強いハートで、ぜひチームを勝利に導いてくださいね。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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