Interview

市立習志野高等学校 宮内和也選手

2011.11.09

第86回 習志野高等学校 宮内和也選手2011年11月11日


 今夏の甲子園初戦、習志野vs静岡2011年08月07日)。場面は7回表。習志野は1点を勝ち越し、なおも二死満塁とチャンスが続く。ここで、サードランナーだった宮内和也は、2球目にベンチから「盗塁」のサインが出たのを確認すると、相手投手が投げたと同時にスタートを切り、一気にホームを陥れた。このワンプレーが、均衡していた試合の流れを習志野に傾けたことは間違いない。3対1とリードした習志野は、このあとさらに3点を追加し初戦を突破。

 2回戦以降も、宮内は攻守ともに活躍をみせた。足だけでなく、打っては打率4割超。また遊撃手としても身体能力の高さを感じさせるプレーで観客を魅了した。

 今回は、そんな宮内選手に『足を使った攻撃』について語ってもらった。


甲子園でのホームスチール

宮内の足に全国が注目したホームスチール
(photograph by 中谷明)

――あの大舞台で、ホームスチールは

宮内選手(以下「宮」) 迷いはなかったですね。(相手投手の)1球目を見て、『行けるんじゃないか』と思ったときに(盗塁の)サインが出ました。以前からフォームが大きいなと思っていて、実際に三塁に立ったときに確信しました。これは行けるんじゃないかなって。何も怖くなかったです。だけど、今考えると、『自分が本当にやったのか?』という感じですが。あの時は、勝手に体が動いて、スタートを切っていましたね。

 甲子園から帰ってきてから、周りからは普段どんな練習してるの?とか、(ホームスチールを成功させたのは)何回目?とか、どれくらい練習してるの?とか聞かれましたが、あのパターンは実は初めてなんですよ。

――初めてのプレーだったのですね。あの大舞台で、勇気を出してスタートを切れるために、普段どんな意識で野球に取り組んでいるのでしょうか?

「宮」 常に勘を磨くことですね。日頃から、そういう(盗塁できる瞬間など)見ておくことで自然と身についてくると思います。例えば、守備についていても、このバッターなら打球はこっちに飛んできそうだなとか。そのバッターをみてイメージするというのを繰り返すうちに、だんだん見えてくる。そんなもんじゃないかなって。

 自分が練習でランナー役の時も、一塁にいれば常にプレッシャーをかける。ピッチャーに『こいつ走るな』という雰囲気を出す。バッテリーが警戒するようなランナーになります。だけど、サードランナーでは出さないですね。普通にいつも通り。そこから走ります。

――盗塁の成功率には、足の速さは関係ないのでしょうか?

「宮」 僕は50メートル6.1秒。チームでも足の速さは5~6番目くらいでした。盗塁は足が速い、速くないじゃないと思うんです。スタートを切るタイミングだと思います。

 自分があのホームスチールを成功できたのも、タイミング良く走れたからです。
ピッチャーがセットに入って、投げる前に走ったけど、そこで牽制がきてアウトになったらどうしようって思ってビビったら走れないので、そこはタイミングと怖さもあるけど、躊躇しないことですね。

 だから、自分の中では『行ける』『行けない』の判断は早めの段階でするようにしています。状況を考えて『行ける』と思ったらスタートを切る。微妙な時や考えすぎると失敗しちゃうんで、判断力が重要ですね。


足を武器にして戦うために

“試合ではいつでも走れる準備をしとけば安心”

――これから後輩の球児たちが宮内選手のように足を使えるプレーヤーになるためには、どんな練習をすればいいでしょう?

「宮」 上手くなるには、数をやる。自分で数をこなしていくことです。走塁に関しても、ピッチャーが牽制練習をやってるとこに入っていくとか。自分が走塁をするために入るとか。

 やればやるほど上手くなるので、それでコツを掴むしかないですよ。あとは、なるべく軽めのスパイクを履いたり。足が速ければ速いほど、セーフになりやすいので、練習では走りこんだりもしていました。

――ピッチャーにも色んなタイプがいますが、何か工夫はされていましたか?

「宮」 同じチームにも色んなピッチャーがいると思うし、そういったところで牽制練習に入ったり。練習試合では、自分がランナーじゃなくても、タイミングを見ておくとかそういうのが大事だと思います。試合ではいつでも走れる準備をしとけば安心だと思うので。

――宮内選手が足を武器にするプレーヤーとなったのも、習志野高校で野球を学んだからこそでしょうか?

「宮」 そうです。習志野じゃなければ、足を使おうと思わなかったですね。自分がここまで成長できたのは習志野の先生方の教えがあったからこそ。 1アウト1塁で普通はバントだけど、足を使えば2塁まで行ける。バントなら3塁までいける。走ることが出来れば、そっちのがチャンスが広がる。走れる時に走ろうと自分の中ではいつも思っています。

――今後は大学進学予定とのことですが、これからどんなプレーヤーとして活躍したいと考えていますか?

「宮」 体が大きいと長打やホームランが出やすいですが、自分はそんなバッターじゃないのでヒットを重ねて塁に出て、足を使ってチャンスをつくる。そういった選手を目指したいですね。また、大学に入ったら早くレギュラーを取って、首位打者に選ばれるような選手になりたいです!

習志野で自分を最大限に生かす方法を学んだ宮内選手は、これからそのスピードを武器にさらなる高みを目指し続けていく。

(文・インタビュー:ドットコム編集部)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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