Interview

オリックス・バファローズ T-岡田選手

2011.08.12

第80回 オリックス・バファローズ T-岡田選手2011年08月22日

 やはり、彼は只者ではなかった。

 当時の登録名「岡田貴弘」だった2年前の今頃、彼は迷いの中にいたが、あの取材から数カ月後、プロ初本塁打を放ち頭角を現すと、見事なまでの成長曲線を描いた。その年は、シーズン7本塁打を記録。翌年、つまり昨年は、開幕一軍をつかむと、5月の交流戦を境に大ブレークを果たしたのである。

 交流戦のMVPを獲得、初のオールスター出場、シーズン33本塁打で5年目にして最多本塁打のタイトルを獲得したのだ。

 高校時代から「浪速のゴジラ」と称された、彼の力は本物だった。

 この2年で、チームの顔になるまで成長を続けた自身の立場を、T-岡田はどう捉えているのか。「結果が出たっていうのが、一番」と語る本人に、2年の時を経て語ってもらった。


タイトル獲得までの2年間の道のり

“5年目で獲れたというのは嬉しかったですね”

――この2年間ご自身の状況は、だいぶかわったんじゃないですか?

T-岡田選手(以下「T」) その頃に比べると変わったと思います。2軍で打てない日々もありましから。

――去年はタイトルを獲得されました。ご自身にとっても大きかったんじゃないでしょうか?

「T」 そうですね。野球をやっていて、一握りの人がプロに入れて、その中の、さらに一握りの人しかタイトルは取れないものなので、それを5年目で獲れたというのは嬉しかったですね。

――きっかけをつかんだのは?

「T」 転機になったのは交流戦だと思います。結果が残ったというのが自分では大きかった。自信が付いてきました。

――どの部分が成長したと思いますか?

「T」 自分で悪いところが、分かるようになってきたことですね。悪くなってきた時に、ここがどうなっているから悪いっていうのが、ある程度、自分でも分かる。そのあたりが、今までとは違いました。

――詳しく言えば、どういうことですか?

「T」 僕が悪い時は、どうしても反応が速くなってしまう。簡単にいったら、開くんですよね。そういうところが見えてきた。

――どう直すんですか?

「T」 そのとき、そのときによりますけど、悪い時でも練習では良い打ち方はできているんで、どれだけ試合で出せるかですね。

――詳しく言えば、どういうことですか?

「T」 僕が悪い時は、どうしても反応が速くなってしまう。簡単にいったら、開くんですよね。そういうところが見えてきた。

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ノーステップ・打法を語る

“どれだけ一つのスイング、
一つのプレーに意識をもてるか”

――ノーステップ打法がクローズアップされましたが、この打法は何が一番良かったのですか?

「T」 確実性じゃないですか。身体がぶれにくくなりました。

――打撃練習をずっと見ていると、T-岡田選手は、黙々と逆方向に打っています。練習で取り組んでいることがあるのですか?

「T」 僕の基本となる練習の一つですね。この練習を信じてやっていれば、そのうち絶対に、調子は上がってくる。逆方向に飛ばすということは、しっかりバットが内からでているということ。身体の近くから出てないと、逆方向に良い打球は行かない。逆方向にホームラン打てるのが自分の持ち味ですし、意識して打つようにしていますね。

――左手の押し込みについても以前、重要だと話されていました。

「T」 僕のバッティングの基本は下半身ですけど、左手っていうのは凄く大事。どうやって使うかと言うと、簡単に言えば、構えた所から落とすというイメージですね。高校の時に学びましたけど、一番違うのはそれまでは、左手に意識をもつということです。

――高校の時でいえば、こう言うことをやってきて良かったと思うことはありますか?

「T」 高校野球は、質より量になってしまいがちだと思います。その中で、自分でどれだけ一つのスイング、一つのプレーに意識をもてるか、だと思います。いろんな考えを持ちながら、練習できるかが大事じゃないでしょうか。

――今になって思うことはありますか?高校時代、こうしておけばよかった、とか?

「T」 う~ん。自分の調子がいい時に限って、1球の大事さという意識を忘れてしまいがちなんで、そこは気をつけないといけないと思います。 高校生だと、4番を打っていたら、遠くに飛ばしたがる。自分もそうでした。いかに自分の良いスイングができるかが試合につながるので、自己満足にならないことですね。

“野球には完成系がない”

――T-岡田選手のバッティングでもう一つ気になるのが下半身の動き。一度、右脚に体を寄せてから、軸足に体重を乗せて、体重移動しますよね。あれの意図は?

「T」 あれは、体重移動をするときに、前に一度、身体を寄せてから後ろに体重を乗せた方が、自分の重心が今どこにあるのかが分かりやすいんです。自分の体重がどの位置にあるかが把握できれば上手く移動できる。リズムも良くなりますし、体重の位置がどこにあるのかが、分かりやすいのでやっています。 

――試合の時はやっているように見えませんが?

「T」 いえ、小さくですけど、自分の中では動いています。

――その動きはいつ頃からやり始めたのですか? 

「T」 ノーステップにしてからです。最初、ノーステップでのタイミングの取り方が分からなかったんです。それに加えて、打っていても、ボールが飛ばなかった。その中で、自分でいろいろ考えて、今の形をとりいれたんです

――T-岡田選手はフォームを頻繁に変えますよね。悩みながら、積み重ねてきたという感じなのでしょうか?

「T」 そうですね。野球のバッティングに完成系があれば、それをすればいいんでしょうけど、野球には完成系がない。10割打つバッターは出ないと思うし、6、7割も出ないでしょう。完成がないんで、常に進化していかないといけないと思っています。

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4番バッターの役目と責任

“自分を信じることが一番”

――タイトルを獲ったからこそ、難しい部分を今シーズンは感じているんじゃないですか?

「T」 相手も研究してきますし、打てなかったところを攻めてくるんで、進化しながら取り組んでいかないといけないですね。

――今年は4番で起用される試合がほとんどです。4番バッターという重責もあるでしょう?

「T」 4番っていうのはチームの顔ですし、4番が打たないと試合には勝てないんで、そういうチームの勝ち負けっていう部分ものしかかっているんで、しっかり受け止めていかないといけない。ただ、自分を追い込んでしまうと、苦しいんで、できるだけシンプルに考えるようにしていますね。

――高校の時も4番でしたね。高校生もプレッシャーがある、これから大会に臨む高校生たちに、乗り越えるためのアドバイスはありますか?

「T」 僕もプレッシャーに弱いんで、よく分からないですけど、自分を信じることが一番だと思います。

――また、今回は守備についても、お聞きしたい。T-岡田選手はハンドリングが良いという印象があるのですが、意識はありますか?

「T」 そうですね。小学校の時から、クラブさばきは良いと言われてきました。けど、自分ではそんなことを思ったことはないです。守備に関しては、足が速いわけではないですし、打球判断が良いかっていったら、そうでもない。当たり前のプレーを当たり前にできるくらいにはなりたいと思っています。

――ハンドリングの巧さで、球際をさばいている印象があります。ご自身ではいかがですか?

「T」 投手からすると、打ちとった当たりで、ノーバウンドでグラブに当てて落とされるのが一番いやだと思うんですよ。球際で取れなかったって言うのが嫌だと思うので、スレスレの当たりは、僕も取りたい。ピッチャーも取ってほしいでしょうからね。

“手の動きがそのまま伝わるからいい”

――その守備に置いて、グラブに対して、どういう意識がありますか?

「T」 グラブにはこだわりはありますね。今、ミズノを使っているのですが、僕は身体が大きいのですが、グラブが大きすぎると、ハンドリングが鈍るので、少し小さめなのを使っていますね。柔らかくてしっとりした物は、自分にはあっているのかなと思います。

――柔らかいというのは、差が出るものなのですか?

「T」 他のグラブを使ったことないので何とも言えないのですが、自分には、ミズノの物が合っています。普通の人よりも若干小さいのを全部、オーダーしています。今使っているものは、手になじむ。手の動きがそのまま伝わるからいい。

――シーズンはこれから中盤に差し掛かります。どんなプレーを心掛けますか?

「T」 1、2位と差が空いているんで、一気に詰めるのは無理なので、先は長いですから徐々に詰めていきたいですね。4番として、期待にしっかり応えるようにしたいです。

――昨年のホームラン王であり、4番という仕事もある。最後に、今年はどんなシーズンにしたいですか。

「T」 今年も本塁打のタイトルを取れれば、それが一番良いですけど、ホームランばっかり狙ってて打てても、試合に負ければ、4番の仕事してはOKじゃない。ホームランが打てなくても、犠牲フライとか、『その1点で勝てた』っていう活躍をしたいと思っています。僕はそういう4番を目指しているんで、ホームランよりも、今年は打点にこだわりたいと思っています。

(文・インタビュー:氏原英明)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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