Interview

埼玉西武ライオンズ 片岡易之選手

2011.06.20

第68回 埼玉西武ライオンズ 片岡易之選手2011年06月20日


 50メートル6秒3。

 プロ野球界の中でも、決して「超俊足」というわけではない。しかし、埼玉西武ライオンズ・片岡易之は、一軍でレギュラーを獲り活躍するために、プロ入り後は、走塁技術を磨き続けている。
そして、昨シーズンは59盗塁をマーク。ここ4年連続で『盗塁王』の座を掴んでいる。その実績こそ、片岡がこれまで走塁技術を高めるために、どれほどの工夫を凝らしてきたのかを物語っている。

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【目次】
■走れる選手を目指した理由
■盗塁成功のポイントを伝授!
■ベストパフォーマンスを常に発揮するために
■甲子園を決めた瞬間の感動

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走れる選手を目指した理由

“1軍に残れるかどうかという境目で”

――なぜ、打撃・守備にプラスして、走塁技術も高めていこうと考えたのですか?

片岡選手(以下「片」) 僕はプロ2年目のシーズンが始まったとき、1軍に残れるかどうかという境目でプレーしていました。その時に、何かをしなきゃいけない、何かでアピールしないといけないと考えた時に、ちょうどオフシーズンの間に、トレーナーから走塁の技術を教わっていたので、さらにそれを伸ばしていこうと思いました。走るのが特別速かったからではなく、1軍に残るために取り組んだことです。

――そう決意するための、きっかけとなる試合があったのですか?

「片」 プロ入り2年目にオープン戦が始まると、当時の伊東監督から「ノーサインで走っていいぞ」と言われて、代走で1度途中出場したんですけど、その際に初球から走ったんですよね。それが、そんなにスタートも良くなかったので『アウトだ』って思ったらセーフになったんです。その時に、オフシーズンにトレーナーと取り組んだ自主トレの成果かな、1年目のときと感覚が違うなと感じたんです。あのタイミングでセーフになるんだったら、もっと走れるかもという気持ちになったのがきっかけです。余計な動きが省けて、スムーズに脚が動いていたんですね。

――オフのトレーニングでは、どのように走り方を修正したのですか?

「片」 これまで、自分で映像を見ていても走り方がかっこよくないなって前から感じてはいたんです。かといって、どうやったらかっこよく見えるのかってところまでは、行き着かなかった。それをトレーナーからは、『状態の横ブレをなくすように』と、まず言われました。これが一番のロスなんだと。陸上選手のように、真っ直ぐ走れるように。それを意識していきました。


盗塁成功のポイントを伝授!

“自分の足元をみる”

――盗塁を成功させるためのポイントというのは?

「片」 よくスタートだとか、中間走だとか、スライディングとかいいますけど、その中でも強いているならスタートですね。

 僕の場合は、スタートするときに上体が浮いてしまっていた。パッとスタートを切るときに、低い姿勢のままいったほうがスピードに乗るんですよね。パッと浮いてしまうと、加速するまでに時間がかかってしまうので、一歩目を切ったあとにどういうふうにやったら上体が浮かないのか。

 それをただ単に、スタートを切ったときに二塁ベースを見るんじゃなくて、自分の膝でもいいし、つま先でもいいし、そこを見る。右でも左足でもどちらでもいいんですけど。自分の足元をみることによって、重心が下がるんで、それを2、3歩パンパンパンと前に進むときに自分の足をみて、バッター確認して、最後にベースを確認すると、目線が下から前に上がっていくので、そのまま二塁まで加速して行けるんです。

――他にも意識して変えた点はありますか?

「片」 今は夏の甲子園予選の直前なので、この練習は控えてほしいんですけど、スライディングをベースの近くでするようにしたことですね。

 ベースの近くでスライディングをすることによって、審判も人間ですから印象が変わると思うんです。スライディングを近くで行けば、ベースに足が入ったように見える。遠くからダーっといってしまうと印象も悪いし、タッチでパンとやられちゃったら、審判も『アウト』って言っちゃうかもしれないんで。

 ベースの近くでスライディングすると、ケガもするし、恐怖心もあるし、リスクは大きいんですよね。だから、これはオフの間ではなく、実戦練習でやらないと危ない。気持ちが入っていない練習でやると、ケガをしやすくなっちゃうんですよね。また、夏の大会前もケガのリスクが出てくるので、今の時期に取り組むのはオススメしません。

――今、盗塁する際に意識の面で心掛けていることはありますか?

「片」 僕は足が速くはないですけど、監督の配慮もあって『ノーサインで走っていいよ』と言われているんで、待てのサインがでない限りは、チャンスがあれば次の塁を狙うように心掛けています。それでも、まだ全然(走塁技術が)完成しているわけではなくて、色々ミスもありますし、もったいない走塁もある。今は、良くなかった点を振り返れる部分と、今のはしょうがないなと割り切る部分を持って取り組んでいますね。

 そして、1回(盗塁王の)タイトルをとった以上は、譲りたくないっていう気持ちは強いので、そのプライドは大事にしたいですね。

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ベストパフォーマンスを常に発揮するために

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――ベストパフォーマンスを発揮するために、日々意識していることは?

片」 一喜一憂しないことですね。一打席、一場面の結果ごとに喜んだり、悲しんだりしない。シーズンは長いから、その中で最終的にしっかりとした成績を残せるのがいい選手だと思う。さらに、どれだけ勝利に貢献できるかどうかを、ゲームの中で色々考えながら動けるかっていうことが大切だと思います。今後もチームを引っ張っていく立場としてやっていかなければいけないので、一喜一憂しないプレーを続けていきたいですね。

――常にベストパフォーマンスを出すために、体のケアにおいては、どんなことをされているのですか?

片」 
ここ数年は、スキンズのハーフタイツを履いて体のケアをするようになりましたね。ハーフタイツを履いて(段階式着圧で)筋肉をサポートすることによって、疲労回復を早くする効果があるんです。イメージとしては、お風呂に入っているような感覚なんですよね。柔らかい圧力でサポートして、プレー中に溜まってくる疲労感を軽くしてくれるんです。他にも、これを履いてトレーニングすると、筋肉痛が出にくかったりしますね。最近は、みんなスキンズを履いてますよ。

 僕は、試合以外でも使っています。車とか飛行機とかで、長時間かけて移動するときなんかは、ずっと座っていると腰が痛くなるじゃないですか。それもスキンズのハーフタイツを履いていると軽減されるし、飛行機とかでも気圧の変化で感じるだるさも出ないですから、移動ゲームのときには欠かせないですね。

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甲子園を決めた瞬間の感動

“チャンスの場面ではやっぱり野球を楽しむ”

――高校3年生、最後の夏の栃木大会決勝戦。劇的な勝利を収めたのですよね。

片」 試合が延長戦に入った時に、『このままいったら延長13回で僕にチャンスで回ってくるな』と思っていました。そしたら、本当にその通りになって延長13回、ノーアウト一、二塁で打席が回ってきたんです。サインを見たら、最初はバントのサイン。その時、僕は3番を打っていたんで、正直打ちたかったんですけどね。

 ここで、相手チームがタイムをかけて集まったんです。試合が再開した時に、サインは『打て』に変わっていました。これは、もういただいた!と思って2球目スライダーを思いっきり振りました。

――この一打がサヨナラヒットとなり、甲子園出場を決めました。この時の感情は今でも覚えていますか?

片」 ハッキリ覚えていますよ。その時点では、本当これまで頑張ってやってきてよかったなと。このために、千葉から栃木まで行って、寮に入って野球漬けの生活をして。でも、何のためにここに来たかっていったら甲子園に行くためだし、その先の人生でも、野球を続けていれば何かあるかもしれないし。そういう思いでやってましたから、甲子園出場は本当に嬉しかったですね。

――この夏、片岡選手と同じようにチャンスの場面で打席に立つ選手がいたら、どんなアドバイスを送られますか?

片」 もしチャンスの打席が回ってきたら、色々考え方はありますけど、ナカジ(埼玉西武)とかはチャンスは喜んで打席に入るんですよね。「めちゃめちゃ、おいしい!」と考えるようです。ナカジは常にチャンスを楽しんでいるんで、そういうメンタルの部分は、見習いたいなと思いますね。チャンスの場面ではやっぱり野球を楽しむことですね。

 例えば、「自分はこれだけ練習はやってきた!あとは楽しむだけ」と考えたり、相手にとってはピンチの場面なので、ピッチャーもけっこう追い込まれていますから、逆に上から見る感じで打席に立ったほうがいい結果につながると思います。

――最後に高校3年間で学んだことを教えてください。

「片」 努力する大切さですね。練習はやった分、自分に返ってくるし、結果が出なかったときは、その分どこかで練習をさぼったということなんだと教えられました。
結果が出なければ、とにかく練習する。今でもそういう気持ちでやっています。
僕の場合、高校時代はそこまで「プロ野球選手になりたい」って思っていたわけではないけど、大学でも社会人でも、もうちょっと上を目指して野球を続けたいなとは考えていました。だから、どんなことでも継続することはとても大事なことなんです。

(文・インタビュー:編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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