Interview

日本野球機構(NPB)審判員 名幸一明さん

2012.03.29

第7回 名幸一明さん2012年03月08日

 今年、NPB審判員15年目を迎える名幸一明氏。そのうちの9年は、「選手が選ぶベストアンパイア賞」を連続で受賞。高校卒業後は、すぐにプロ入りを果たすも、引退後は、NPB審判員として活躍を続ける名幸一明氏に今回はお話を伺いました。

大事なのは「絶対に叶えるんだ」という気持ち

――まず最初に、沖縄の興南高校時代の3年生最後の夏の思い出を教えてください。

名幸一明氏(以下「名幸」)  最後の夏は、(沖縄大会の)決勝戦まで勝ち進んだんですけど、相手は沖縄水産で、1対2で負けてしまったんです。
 ほんとに、いい勝負でした。ちょっとした目に見えないエラーで点が入ってしまった感じかな。ヒット数もこっちが多かったしね。
 ただ、その試合で勝ち負けと関係ないんですけど、試合中に時間が止まった感覚になった瞬間があったんです。それは守備の時だったんですけど、沖縄のあの暑い夏に、なぜか涼しい風が吹いてきて、すべてが止まったようにみえたんですよね。その瞬間、このままずっとここで野球をやりたいなって感じたあの感覚は、不思議と今でも覚えていますね。

――高校を卒業後は、横浜大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)に入団しました。高校時代からプロへの思いは強かったのでしょうか?

「名幸」 最初、僕は六大学で野球をして、力を磨いてそのあとにプロ野球選手になりたかったんです。だけど、甲子園に出ていなかったので、推薦を受けることが出来ませんでした。それで、当時は2月に『ドラフト外入団』という制度があって、そこで横浜に指名していただいて入団しました。
(ドラフト外入団とは1990年まであった制度で、通常のドラフト制度を通さずに選手をチームに入団させる制度)

――“大学に行ってから”ではありませんでしたが、プロ野球選手への夢を叶えた名幸さん。プロ入り後は、どんな思いだったのでしょうか?

「名幸」 小さい頃から、沖縄出身でプロで活躍してる人をみたら、自分も絶対にそんな選手になるんだと思って練習してました。キツい練習も、そういうこと考えてると全然ついていけるし、人の倍はやろうと思いました。
自主トレとかトレーニングの時は、人よりも多くやりましたね。プロになった時は、すごく嬉しかったですよ。父親もすごく喜んでくれましたね。

――実際に、プロの世界はどんな感じでしたか?

「名幸」 横浜スタジアムに入ったときは、こんなとこで野球が出来るんだって感動しましたが、もちろん練習もキツいですし、ダメだったら解雇になる厳しい世界。周りの選手をみても、こんなに大きいのかとも驚きました。それでも、自分はチャレンジしようっていう思いで打ち込んでいました。

 ただ思うように結果を残せなかった。選手として、8年やった後は、3年間ブルペンキャッチャーをやりました。もちろんその時はもう野球選手としてプレーできないんだって思いましたね。試合には出られないんだって。でも、選手として結果を残せなかったんだけど、指導者としての意識が今度は芽生えてきて、投手を育てたいっていう熱意に切り替えがうまくできました。

[page_break:審判からも信頼される審判になりたい]

審判からも信頼される審判になりたい

――その後、審判員になられたきっかけとは?

「名幸」 ユニフォームを脱ぐとき、球団のスタッフとして残る道もあった。だけど、体が元気で、まだグラウンドに立ちたいっていう強い気持ちがあったので審判のテスト受けました。
 実は、審判になる人って、当時は今ほどいなかったんです。やっぱり現場で、審判員にヤジが飛んでくる場面を見てきているわけですから(笑) それでも僕は、そういうことも、とっぱらって野球が好きだから出来たんだと思います。

――名幸さんは、今年でNPB審判員になられて15年目ですが、そのうちの9年、「選手が選ぶ!ベストアンパイア」に選ばれている名審判です。選手たちは、どんな理由で選んでいるのか、聞いたことはありますか?

「名幸」 詳しくは分かりませんが、4~5年程前は、投手・打者がそれぞれ5段階で評価した回答をもとに選出しているというのは聞いたことはあります。ただ今は、どうかは分からないんですけど。1試合通して、公平なジャッジが出来ているかが、評価基準になるようですね。

 受賞した最初の年は、まだ審判員になって6年目くらいで「なんで俺が選ばれるんだ?」って、自分に自信を持ちきれなかったんですが、10年目くらいからは徐々に自信がついてきましたね。
とくに去年はセ・パで一緒に選出した初めての年だったので、そこで選出された時はすごく嬉しかったですね。

――審判員というのは、ミスは許されず、多くのプレッシャーを背負いながらの仕事ですね。

「名幸」 そうですね。精神的な面がすごく大事で、選手やファンの目だけでなく、TV中継もされてる。だから、絶対にミスは許されないんですよね。そういった場所で、自信を持って落ち着いてジャッジが出来るかどうかは、それはもう経験ですね。僕自身、まだまだ審判員として未熟だと思っています。 選手だけでなく、審判からも信頼される審判にならなきゃなって思っています。

――それでは最後に、審判員に大事な素質を教えてください。また、NPBの審判員になるためのアドバイスもいただけますか?

「名幸」 今は、毎年募集をかけてNPBの審判員のテストが行われているのですが、今は非常に狭き門になっていますね。審判員のテストでは、人間の適性とかも見られたりしますよ。そのため、学生時代に、もまれてきた子は上手くいきますね。野球にしても、何にしても、もまれてきた子は社会でも通用すると思います。

 あとは、審判員は精神的に強くないとできないと思うので、人間性はもちろん、精神的な強さは必要ですね。ほかにも体が大きければ見栄えもいいし、そういうところじゃないですかね。 ただ、1年契約なので、しょっちゅうジャッジが間違っていたら、翌年は契約出来なくなる。僕らも同じ契約なので、毎年毎年が勝負。だからこそ、僕自身も今よりもっとうまくなりたいって思いますね。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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