Interview

株式会社リアル・フリート 熊本浩志さん

2012.03.07

第6回 株式会社リアル・フリート 熊本浩志さん2012年03月08日

自分の原点である宮崎西野球部

“現役時代は創部以来初の県ベスト8に進出した。”

――まず最初に、熊本さんが小さい頃に野球を始めたキッカケというのは?

熊本さん(以下「熊本」)  僕が生まれたのが昭和50年10月12日なんですけど、ちょうど初優勝した広島と阪急の日本シリーズをやってる時で、広島の4番山本浩二選手と阪急のエース山口高志投手のその両方の字をとって名前をつけたと聞きました。親父がプロ野球選手にしたかったみたいで、僕も小さい頃から野球をするもんだと思ってやってましたね。

――高校時代は、今春のセンバツに出場する進学校の宮崎西高で野球をされていたのですよね?

「熊本」  そうですね、宮崎西が家の目の前にあって、そこで小さい時からグラウンドで遊んでいたんですよね。だから自分にとっては高校って、身近な場所でした。僕らが1年生の時に、強豪校の監督が来られて、それでごっそり自分のDNAを変えられましたね。監督さんが来られるまで目立った成績を上げてない、どちらかといえば弱い高校でした。しかし、監督の「弱者は敗者でない」という教えは、僕が今やってるビジネスでも、全てにおいてあのグランドで学んだことが実はものすごい原点になっていますね。

[page_break:宮崎西の強さの秘訣(ひけつ)]

宮崎西の強さの秘訣(ひけつ)

“当時読み込んだ野球教本を懐かしんで”

――その当時の監督さんは、どんな指導をされていたのですか?

「熊本」 宮崎西高は学業がすべてに優先される学校で、とにかく練習時間が短くて、それがハンデキャップだったんですけど、そのかわりに徹底して試合相手の分析をするとか、戦術面でも工夫しました。ダブルスチールとか2ランスクイズの練習を徹底的にやっていました。僕らは監督のそんな指導法に魅了されていましたね。自分たちがその戦法を信じこんでいるから、強い相手あっても自分たちのペースに持ち込むことができたんだと思います。そんなチームが着実に力をつけ県内でもベスト8に入る実力はありましたね。

――なるほど。自分たちの強みを持っているチームは強いですよね。

「熊本」 そうですね。当時の宮崎西は、元々実力的に県内でも底辺で、だからこそ強豪校であっても正面からぶち当たらない戦法でした。おもしろいですよ。監督は0対0で行けと言うんです。絶対、自分たちから均衡を壊すことしなくて、心理戦っていうか、僕らは耐えて耐えて中盤に持ち込んでいく。そうすると、相手が焦りだすんですよね。5回までいって、宮崎西に0対0だぞって(相手の)監督がいうんですよ。

その瞬間に、「焦りだしたぞ、今だ!」って急に戦法を変えるんです。ノーアウト1塁でも単独スチールとか・・・とにかく不思議な采配に思えてしょうがなかったので、采配の真意を探す毎日でしたね。でも今考えると、弱者が勝利するためのジャイアントキリングばかり叩き込まれて気がします(笑)だから僕には初めから野球のセオリーなんて固定概念がないんです。

――熊本さんは、高校1年生から正捕手としてマスクをかぶっていたんですよね。監督さんの指導で今でも忘れられないことは何かありますか?

「熊本」 そうですね、1年の夏から3年間全部捕手で出場しました。とにかく監督の野球は捕手が中心のチーム作りでした。リードに対しても事細かくチェックされるんですよ。「どういう意図でそういうボールを要求したのか」って。だから、リードが“積み上げ”じゃなくて、“逆算”なんですよね。「最終的にどこで打ち取りたかったのか?狙いはなんなんだ?」と厳しく言われるんで、最初はノイローゼになりそうで(笑)常に野球ノートを読み返しては考えていましたね。でも、そこを徹底的にやっていくと、自分が俯瞰してみられるようになっていくんですよ。

[page_break:グラウンドの中で学んだ”生きる知恵”]

グラウンドの中で学んだ”生きる知恵”

“コールド負けしそうな時こそ本気で勝ちに行く”

――高校卒業後、大学でも野球を続け、キャッチャーとして活躍した熊本さん。その後は、どんな道を歩んでいったのですか?

「熊本」 僕は大学を卒業するときに、社会人野球からオファーがあったんです。今考えても人生の大きな分岐点だったと思います。野球は続けたかったんですけど、社会に出て働くということは、給料をいただくということ。だけど、(プロではないので)野球でサラリーをもらうわけじゃなく、仕事でサラリーをもらう。でも野球をしに会社に入る・・・僕にはそこが理解できなくて、モチベーションにつながらなかったんですよね。
 やっぱり、(実績が)数字で返ってくるものが欲しかったので、僕はビジネスの道に行きました。

――その後、野球に変わるくらいの情熱を持てるものは、何か見つかりましたか?

「熊本」 それは、すぐには見つからなかったですね。でも、野球と同様に情熱を持ってビジネスに向き合うようになって今のビジネスにたどり着きました。ちょうど野球と決別して、一般で東芝に行き3年半後に決断した独立への道でした。

 僕はいつも人に言うんですけど、はじめからやりたいことが見つからないのは当たり前。(やりたいことが見つかる)環境は最初からそんなにあるわけじゃない。

 だから、環境は自分で創るもんだって。やっていく中で、おもしろいものがあったり、今までやってきたものとリンクして初めてなるほどってなる。
 また、そういう局面で野球に置き換えられることも多い。例えば、コールド負けしそうだなって試合がある。7点差ついていて、どう戦うのか。ここから、逆転を狙って本気で勝ちにいくのか。野球って時間じゃなくてイニングでやるスポーツなので、与えられる機会は平等。戦術を立てて戦うことで逆転の可能性は十分ある。意外と、人生とかビジネスに近いものがあるんですよね。僕がそういったビジネスで使える“生きる知恵”はすべてグラウンドの中で手に入れました。

全国の球児、宮崎西高校へのエール

――最後に、夏の大会まで残り100日を切っている全国の高校球児に向けてメッセージをお願いします。

「熊本」 最後の100日は諦めることもできる。僕の場合も最後の冬に腰を疲労骨折していて、もうダメかもしれないなって、初めて挫折を味わいました。監督にもチームメイトにも誰にも言わず、独り悩んでいました。キャプテンだったし、どうすればいいのか・・・もう真っ暗でした。だけど、自分の力を信じたかった。後悔をしたくなかった。この最後の100日の期間っていうのは、これまで3年かかってきたことが、もしかしたら1ヶ月で出来てしまうとんでもない時期でもあるんですよ(笑)だから、その時期に死ぬ気でやってみる。本気でやってみると、景色が変わると思うんです。自分を信じてやってほしいなって思いますね。人生を変える大勝負の100日。難しいかもしれないですけど、でも今振り返っても短いようで、その当時はとても長く感じた期間だったんですよね。

 最後、夏の試合で負けた試合にホームラン打ったんですよ、実は。それがあったから大学でも野球を続けようと思ったんです。今思えば、人生を変えたホームランだったんですね。このホームランはこの夏までの100日間をあきらめずに頑張ったからこそ。なので、これから夏を迎える球児の皆さんも悔いの残らないよう本気で頑張って欲しいです。

――では、最後に今春のセンバツに出場する母校の宮崎西高校にエールをお願いします!

「熊本」 いろんな伝統高や強豪校のOBと今でも野球をやってますが、宮崎西高野球部はいい意味でも悪い意味でも全く伝統のないチームです。でも今回のセンバツ出場で間違いなく新たな伝統を創れた。今の監督さんや選手には僕らOBも本当に感謝してます。なんのしがらみもプレッシャーもないので、思いっきりやってほしい!(甲子園での勝負は)そんなに甘くはないって分かっているんですけど、それでも悔いのないように全力で戦ってもらいたいですね。

(インタビュー:編集部

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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