Interview

漫画家 寺嶋裕二先生

2010.08.10

第56回 漫画家 寺嶋裕二先生2010年08月11日


漫画家 寺嶋裕二先生 | 高校野球ドットコム

今回の独占インタビューは球児に大人気の「ダイヤのA」の著者:寺嶋裕二先生です。
実は2年前にもインタビューにご出演して頂き、今回は2度目のインタビューです。
今回は寺嶋先生の野球観についてお話を伺ってきました。


強いチームとは

漫画家 寺嶋裕二先生 | 高校野球ドットコム

【インタビュー秘話01】僕の中では降谷のメンタルはメチャメチャ強いですけどね。
正直、沢村は降谷がいるかぎりエースになれないかもしれない。

――今までいろんなチームを描く中で、先生が思う強いチームとはどんなチームでしょうか?

寺嶋先生(以下「寺嶋」) やっぱり。色々な話を聞いていると、何か一つの試合をきっかけにめちゃめちゃ強くなるというじゃないですか。

――ありますね。

寺嶋 選手の気持ちがバラバラだと凄く質の良い選手がいても負けたりしていますよね。高校野球の場合、「俺達は弱い」って自覚している奴らが強いんじゃないのかなと僕は思います。まぁそれはある程度レベルの高い高校に関してだと思うんですけど。
慢心してないというか。ちゃんと自分たちに出来る事をしているチームが1番強い気がします。

――どんなに個々の能力が強くても・・ということですね。今年の夏も実力校が、チームがまとまらずに敗退していくのを目にします。

寺嶋 なんですかね。どうしてかはわからないです。高校生の一致団結した時のエネルギーはすごいですよね。
それがもしかするとチーム作りで一番難しい所かもしれない。よくキャプテンがすんなり決まる年は強いって言うじゃないですか。
――えぇ。

寺嶋 強烈なリーダーシップを取れるキャプテンがいるとうまくまとまるけど、そうじゃないチームは弱いというのはやっぱりまとまっていないってことだと思いますね。


個性について

漫画家 寺嶋裕二先生 | 高校野球ドットコム

【インタビュー秘話02】
沢村は気持ちで投げる分、気持ちがなえた時はそれが投球に出てくる。
甲子園を意識し始め、どう変わっていくのか注目です。

――僕は実はコミック派で漫画を拝見しているのですが、もう21巻。それぞれのキャラクターの個性がかなり強いですよね。

寺嶋 役割があとから決まっていくというのもありますが、特に野球ってポジションと打順で名前以上にキャラクターが別れちゃうっていうか、3番ならこういう奴だなとか、みんなが持っているイメージがあり、勝手に作れちゃうんですね。だから逆に言うと3番なのにこんな奴か!と既存のイメージをうまく利用できる。ホントはこんな奴じゃないけど3番だからもうちょっと打たなきゃななんて、勝手に膨らんじゃうというか。

――つまりあとからキャラクターがついてくるんですね。
ダイヤのエースという漫画が浸透していると感じるのは、実際の球児が「俺はゾノタイプだから」とがスタンドで言っているんですね(笑)

寺嶋 それは嬉しいですね。でも、ホントはもっと描きたいんですけどね。部員全員とか。あんなチームで部員の数が多いと、単純に漫画として描ききれないから描いていないだけで、でも実際もっといるはずなんですよね。この間、モデルにしている埼玉栄に取材したときに、90人くらいいるんですね。練習風景が圧巻です。グラウンド3面全部使って。そのくらい使わないと無理です。あの人数は。あれ見ているとどんな気持ちでやっているんだと思いますよね。

――そうですね。

寺嶋 一年生とか、あと三年生とかこんなに部員がいてレギュラー取れなかったらどんなモチベーションで練習するんだろうとか。ちょっとでもそういう部分が描けたらなと思います。

 全ては無理でもちょっと触れておきたいんですよね。
ホントはもっとドロドロした気持ちもあると思うし、ゾノとか本音を言ったらもっと嫌な奴になっててもおかしくないですけど、でもそれでもやっぱ漫画だし、こうあって欲しいよなっていう。
沢村なんかは軽くいじめられてるかも知れない。(笑)

――そうかもしれない。ホント(笑)

最近の高校野球

寺嶋 ただ今いろんな取材に行っても、最近の野球部は上下関係とかうるさくないし、なんかいい感じでやっていますね。うらやましい環境で。

――そこはここ数年で変わってきているところで、毎年高校野球連盟が1年から3年までの部活を続ける継続率を発表しているですが、ここ10年で確実にも伸びているというのはあります。指導者の方の努力ですよね。いかにして指導者が3年やる意義で教えたり、そ教育的な部分に力を入れてきたり。

寺嶋 環境というのはよくなっていると思うんですけど、それでもやっぱり強いチームって空気が綺麗に張り詰めているんですよね。あれはどうやって作ってんのかなって。すごく厳しく怒っているわけではないのに、あれが出来ているということは何があるんだろうと、今の時代の野球を僕は体験していないんで、そこはちょっと気になっています。


高校時代の経験

漫画家 寺嶋裕二先生 | 高校野球ドットコム

――寺嶋先生の母校の高校で高2の時にベスト4。県内では注目されていたのでは?

寺嶋 いえ、めちゃくちゃ弱かったので、ミラクル善一と呼ばれていました。
練習試合で僕ら2勝しかしていない。そのチームがベスト4までいきました。
その体験は今の漫画にだいぶ活かされていますね。
初戦で優勝候補に勝利。そして波に乗りました。
強いチームでも負ける。僕が高校時代に体験したことです。
相手が焦ってきていることが分かるんです。焦りが普段のプレーもできなくさせる。
それはプレーしていて不思議な感覚でしたね。
一方で僕らは100%勝てると思っていないから、悔いだけはないようにやろうとみんながやっている。そこに気負いがなかったですね。だから、あれ?あれ?という感覚で。

――高校野球は強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強い。

寺嶋 そういう意味で僕は予選の準決勝、準々決勝あたりが一番好きですね。どちら目指している所は一緒で、譲れない戦い。でも勝敗がある。
甲子園より全然面白い。

――負けられないプレッシャーははるかに大きいかもしれません。

寺嶋 何が勝敗を分けるのかは分かりませんが、両チームとも気持ちが伝わってくるんですよね。

甲子園のイメージ

――では、先生にとって甲子園とは

寺嶋 「お祭り」です。予選のおまけです。野球をどれだけ楽しむことができるのか?
予選と違い意味合いはだいぶ違うのではと思いますね。
ある地域の決勝戦で勝ったチームの監督の方がインタビューで「ホッとしました」と言っているのを聞いて、まさにそうだと。そのコメントを聞いてすごく分かりますよね。
嬉しいというより、良かった、こいつらを甲子園に連れていけた、という気持ち。
そういうチームが集まってきているので純粋に野球を楽しんでほしいです。

球児にメッセージ

寺嶋 「ダイヤのA」は恋愛物がないですよね。それは僕の高校時代を表しています。
うちの監督が言っていたのは、「彼女なんていうのは大学に入ればいつでもできるのだから今のうちにやっておけよ」というのが自分の中でひっかっかっていてね。(笑)
こんなに野球に打ち込める時期は人生の中でも今しかない貴重な時間なので、思う存分とことんやってほしいです。

2年前の思い出インタビュー
寺嶋裕二先生インタビュー(2008/09/23)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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