Interview

東北福祉大学 伊藤直輝、吉田雅俊選手

2010.08.10

第57回 東北福祉大 伊藤直輝、吉田雅俊選手2010年08月19日


東北福祉大学 伊藤直輝、吉田雅俊選手 | 高校野球ドットコム

第92回甲子園大会記念企画!!~甲子園を沸かせたヒーロー達~
第57回の独占インタビューは、東北福祉大学 伊藤直輝、吉田雅俊選手です。
 1年前の夏。新潟県を制し、甲子園に乗り込むまでは、49地区代表の1校にすぎなかった日本文理。それが、日を追うごとに、「え?新潟が?」と高校野球史を揺るがす快進撃を続けた。
 甲子園の決勝に進んだだけでも快挙とされたチームが、その決勝戦でまた、ドラマチックな試合を創り出した。
中京大中京との決勝戦。6点を追う9回表に1点差まで詰め寄る、驚異的な粘りを見せたが、勝利まではあと2点足りなかった。それでも、たくさんの人々の心を震わせた1戦だったはずだ。
昨年の日本文理のエース・伊藤直輝と4番・吉田雅俊。1日違いで生まれた2人は今、生まれ育った新潟を離れ、東北屈指の強豪・東北福祉大学で腕を磨いている。
日本の、新潟の高校野球史を変えたチームのエースと4番に、1年前の夏を聞いた。


1年前の夏、振り返ってみてどうですか?

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吉田雅俊選手(以下「吉田」)「自分は、もう1年経つんだなぁって。まだ1年は経過していないけど、もう1年経つんだなぁって感じ。結構、早いなって思います。記憶が新しいっていうか」

伊藤直輝選手(以下「伊藤」)「同じ感じです。実際、早いな。もう1年経つんだぞ、あれから。もう夏大前じゃないですか(取材は7月上旬)。そう考えるとそういう季節だなって。懐かしいっていうより、この前って感じ」

吉田「そう、そう、そう」
伊藤「たぶん、2年、3年、4年ってなると遠ざかっていくかもしれないですけど、でも、この時期になると思い出しますね。絶対」
吉田「ね。この時期はね、雰囲気的に」
伊藤「大会始まる前とかしっかり覚えているし。チーム的には」

伊藤吉田「最高」

伊藤「今までで一番いい感じだったね」
吉田「バッティングにしろ、伊藤にしろ、上がっていて」
伊藤「なんかね、勝てる雰囲気っていうか。負ける雰囲気はなかったよね」

―勝てるというのは、新潟県で?

吉田「まず、そうですね。県大会優勝は焦っていなかったっていうか、安心してね」
伊藤「不安要素はなかったです」

―自分たちの野球をやれば勝てるだろう、という自信があった?

2人「そうです」

―チームとして、目標はどこに置いていたのですか?

吉田「最終的な目標は全国制覇」
伊藤「センバツで負けていたので、とりあえず、1勝を目指して」
吉田「文理はね、夏、1回も甲子園で勝ったことがなくて」
伊藤「そういうのもあって、まず、初戦突破っていうのがありました」

―全国制覇を最高目標に、まずは1勝。

吉田「意識し始めたのはね」
伊藤吉田「勝っていくうちに」
伊藤「一番意識したの、あれですね、準決勝で勝った時じゃないですか(笑)」
吉田「実際、そのくらいだよね」
伊藤「実際、そんな感じじゃないですか」
吉田「あと1回だ、って」
伊藤「目の前の相手を倒すってことだけを考えていました。県大会からそんな感じだったので。県大会優勝よりも、まず、目の前の相手を倒すっていうことをチーム内で言っていました。甲子園に行っても、とりあえず、1つ1つって感じでした」
吉田「県大会はうぬぼれとかじゃなくて、本当にもう、自信があったっていうかね」


焦りもないけど、慢心もせず。

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吉田「そうですね。伊藤が言った通り、目の前の敵を1つ、1つ倒していくって感じです」
伊藤「そういうことです」

―新潟県大会を勝ち抜いて甲子園出場を決めました。そして、目標である1勝を挙げました。

伊藤伊藤・吉田「嬉しかったですよ」
伊藤「センバツ、負けてね」
吉田「そう、そう」
伊藤「校歌を歌っていなかったので、甲子園で初めて校歌を歌って、最高でした」
吉田「そうですね」

―そこからどんどん勝ち上がっていきました。

吉田「3回戦は、対戦したことのある相手だったから」
伊藤「そういうのもあって。その相手に勝っていたので」
吉田「練習試合で」

伊藤「だいたい分かるなって」
吉田「あまり、焦りはなかったです」
伊藤「勝てるっていうか、まぁ」
吉田「勝てるというよりは、気持ち的に楽でした。初戦はね、かなりプレッシャーがあったよね」
伊藤「めちゃくちゃあった。負けると思ったもん。絶対、負けたと思った」
吉田「最初、負けそうで」
伊藤「1-3になった時、負けたと思った。自分が打たれたんですけどね(苦笑)」

―初戦の緊張があった?

伊藤「めちゃくちゃありました。人も多かったんですよ」
吉田「多かった」
伊藤PL学園聖光学院の後で」

―PL学園を見た人たちが残っていた。

伊藤「そう、そういうことです」
吉田「初めての経験だったよね」
伊藤「センバツは少なくて」
吉田「少なかった」
伊藤「(清峰の)今村が相手ってことで、当初は日曜日だったんですけど、雨で流れて月曜日になって、人が少なくて。こんなもんなのって感じだったんですけど。夏、行って」
吉田「やばかったね。プレッシャーがね」
伊藤「これね、甲子園っていうのは、って(笑)これが甲子園かと。なんだ、この観客はと。外野とか埋め尽くされていて。それが緊張に変わったとかじゃなくて、初戦ということで」

そんな中、まずは1勝を目指した。

吉田「分からない敵だと不安もあるし。ビデオとか結構、見ていましたけど」
伊藤「ビデオと実戦、全然違いますからね」
吉田「自分、無安打だったんです」
伊藤「俺も打てなかった、1戦目。自分とこいつ、ヒット打っていないのな」
吉田「ね。勝ったんですけど。伊藤は最後(ピッチャーとして)、三者三振でいい感じで終わって。でも、自分はなんかもう、あれ?あれ?と思って(笑)微妙な心境でした。まぁ、チームが勝ったので素直に嬉しかったです」

―次戦は打つっていう気持ちが強かった?

吉田「それは結構、強かったよね」
伊藤「次、打とうぜ的な話しをしていました。打たなきゃマズイでしょ的な(笑)特にお前はみたいな(笑)」
吉田「自分、センバツもヒット打っていなかったので」
伊藤「一緒なんですよ。自分もセンバツの時、打っていなくて。自分とこいつだけ」
吉田「2戦目打ちました」
伊藤「自分も打ちました」
吉田「しかも、自分、4番として無安打っていう・・・。かなりのプレッシャーの中、2戦目に挑んだわけですよ」
伊藤「第1打席な」
吉田「第1打席から打ちました」
伊藤「こいつ、左中間フェン直、打ちましたよ」


それで、楽になった?

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吉田「それはだいぶ、だいぶ、本当にだいぶ、楽になりました(笑)」
伊藤「こいつが最初、打ったので。自分、打たなきゃと思って、それしか考えていなかったです(笑)で、自分の打席回ってきて、しっかりセンター前、どんづまり(笑)」
吉田「一緒に、甲子園2戦目で初ヒット」
伊藤「本当、あれ、嬉しかったな。甲子園初ヒット。ヒットで塁に出るって楽しいよね、」
吉田「楽しかったなぁ」
伊藤「高校野球ってすごいですね。魅力的な感じです。もう、見る側なんですけど、実際、もう1回やりたいって感じもありますよ」
吉田「同じです」

―1日、1日、勝ち上がっていって、チームの雰囲気はどうでしたか?

伊藤「最高っていうか、悪くはないですよね」
吉田「普通にいい雰囲気で、飯食うときも良かったし。深く次の試合のことを考えたりしないでホテルに帰ったらリフレッシュして」
伊藤「考える時は考えます。ビデオを見るときは全員で言い合って、こうじゃないの?とか言い合うんですけど、外すときは外して」

吉田「スイッチの入れかえがね、できていたよね」
伊藤「なんていうんですかね、みんな、勝とうとしていましたし、普段の生活から次の試合のことを全員が考えていました。負けるってことを考えなかったですね。負けそうとか。ヤバイ、どうしようとか。なかったですね」
吉田「逆にね、勝てる気しかしないっていうか。負ける気がしないんですよね」
伊藤「負ける気は全然しなかったですね」

―ビデオは食事の前に見ていたのですか?それとも、後に?

吉田「後ですね」
伊藤「自分はキャッチャーとずっと見ていました。ミーティング部屋があって、そこにテレビがあったので、キャッチャーと見たり、野手とも一緒に見たり。どこもそうだと思いますよ。他(のチーム)すごいじゃないですか、データ班とかいて。なかったもんな」
吉田「ないです、データ班。ただ、ビデオを見て、癖とかみたり、バッターの特徴を把握したり。基本的にバッテリー中心に」
伊藤「見たい人が見るって感じですね。見なくていい人は自分のことをやります。見たい人は見て、イメージついたら上がるみたいな。打者はそうですよ」
吉田「自分はビデオを見た後、スパイク磨きに行ったついでに振りに行きました。伊藤はシャドー?伊藤も振っていたよね?」
伊藤「シャドーしていたし、振っていた。打ちたいから(笑)バッティングの方が好きだった。バッティングの方が面白いですよね。打てると面白い」
吉田「確かに打てると面白い」
伊藤「ピッチングにつながるからさ」

決勝の前夜はどうでしたか?

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伊藤「決勝だよ、明日みたいな感じでした(笑)ヤバくない?ヤバイでしょ、決勝とかって、って。とりあえず、全力でやろうみたいな」
吉田「監督がね『結果はどうあれ、泣くなよ。胸張って新潟帰ろう』って言って」
伊藤「とりあえず、最後まで全国に文理野球を見せようってことは言っていました」
吉田「負けちゃいけないっていうプレッシャーなかったので」
伊藤「全部、初だったので」
吉田「ベスト8でも負けちゃいけないってプレッシャーないし」
伊藤「挑戦者の気持ちしかなかったですね」
吉田「初戦が終わった後はプレッシャーなくな」
伊藤「初戦を勝てたのは大きいですよね。しかも、逆転勝ちっていうのが大きかったです」
吉田「決勝に行ってもね」
伊藤「決勝って感じしないですよ、実際、行ってみたら」
吉田「ただ、相手が中京大中京だーっていう、そのくらいのプレッシャーだよね。勝つ、負けるとかのプレッシャーより、相手」

伊藤「ヤバかったよ、実際」
吉田「相手のプレッシャーがヤバかったです。試合とか見ていて、全部、わかっていたので。選手ね、バッティングとか、ガタイとか、すごいよね」
伊藤「む、む、無理でした、自分。バッティングがあんだけいいと、ビデオを見ていても、『投げるコース、なくない?』みたいな感じで」
吉田「バッテリーも怖いと思うんですけど、守っている方もだいぶ怖いです。超バックしていましたもん」
伊藤「だいぶ、バックしていましたもん。中京シフトでした。シングルなのに、なんで、あんな後ろにいるの?って感じでした」
吉田「もう、シングルでいいからって。でも、それくらいのプレッシャーで」
伊藤「本当に、最後の最後まで来られて、って感じでした。思い切ってやろう、と。負けても勝ってもって感じでした。とりあえず、全力でやろうって。最後、力を出し切ろうって言っていましたね」

―眠ることはできましたか?

伊藤「寝られましたよ」
吉田「自分も普通に寝ました」
伊藤「熱闘甲子園見て寝ました(笑)」
吉田「俺、見ないで寝た。あ、見たか。中京と花巻見たんだ」
伊藤「俺たちも出ていたよ。熱闘甲子園に出るとか、最高だよな、マジ。夢だったし」
吉田「確かに」

―決勝の日の朝はどうでしたか?

伊藤吉田「いつも通り」
吉田「散歩して」

―緊張とかはありましたか?

伊藤「自分はなかったですね。初戦で解けました」
吉田「うん」
伊藤「ほどよい緊張はありますけど、カチカチな、周り見えないような感じではなかったですね」
吉田「逆にね、なんかもう、決勝だけじゃないけどさ、早く試合やりたいっていうか。早く始まれみたいな、そんな気持ちでした」
伊藤「試合したくてたまらなかったです」
吉田「そう、そう、そう。始まる前からムカムカして」
伊藤「ウズウズして。てか、ムカムカって、なんでキレているの?(笑)」
吉田「だってさ、延長になったり」
伊藤「それ、初戦だけじゃん」
吉田「あと、明豊と花巻東」
伊藤「あ、そうか、あった」
吉田「いろいろ、あったんですよ。結構、待ち待ちで、もうちょっとで始まるぞっていうところで延長に入って。早く始まれって。決勝もそんな感じだったよね?13時からだから結構、時間があってね」
伊藤「バスで待っているの、ヤバかったですよ。着いてすぐに降りるんじゃなくて。両校のバスが止まって、待っているんですよ。あれって、開門するまで待っているのかな?すごいですよ、人」
吉田「高速道路の下のところにあるんだよね、バスを止めるところ。バスから見える人がすごいからね」
伊藤「ヤバイ、ヤバイって、って」

このインタビューの続きは↓
■特別企画
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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