日本文理 【高校時代】

「中学校にはなかった上下関係があって、言葉遣いに戸惑いがあったり、寮生活にも慣れるのに苦労したし、最初は厳しかったです。慣れたのは1年生のちょうど、この時期、夏の大会前辺りには慣れました」

  ベンチ入りできたのは2年夏から。「練習試合で結果を出そうと思ってやっていて、だけど、秋とか春とかいいとこまでいったんですけど、結局、ダメで。最後になると落とされて」。ベンチ入りできるかどうかのライン際に到達はするものの、あと一歩で及ばない日々が続いた。

「2年生の春、負けたんですよ」。春の県大会、1回戦で新潟県央工に0-4で敗れた。「ゼロ点に抑えられたんですよ。自分とか、タメの人とか一生懸命バッティングピッチャーしていたのに全く打てなくて、本当に悔しいっていうか、なんで、こんなに打てないんだって。絶対、今度は俺らが出て打ってやるみたいな感じで。それがよかったのかわからないですけど、結局、夏、ベンチに入れました。自分たちの代でキャプテンになった中村(大地)っているんですけど、そいつと、スタンドで『なんだ!?バッピして肩、ボロボロなのに。夏入って、俺らが打とう』って言って、頑張って、夏は一緒に入りました」

 試合で打ってくれることを願い、来る日も来る日もバッティングピッチャーで投げ続けるも完封負け。チームの負け、仲間が打てなかったこと、いろいろな悔しさを発奮材料にして、夏はベンチ入りにこぎつけた。

 そして迎えた夏。2、3回戦と3番・レフトで先発出場する。「そこそこ打ったんですけど、あまり調子良くなくて、最終的に(高橋)義人が準々決勝と準決勝が先発で、自分はベンチに下がりました」。準決勝は、春の県大会1回戦で敗れた新潟県央工と対戦した。しかし、またも0-4で負けた。「自分、先発じゃなかったんです。ベンチから見ていましたが、やっぱり、強かったです」。

 新潟県央工はそのまま新潟県を制し、甲子園に出場した。

日本文理は新チームとしてスタート。秋季県大会で先発出場はなく、控えだった。「自分、あまり調子よくなくて。でも、代打でだいぶ打って、その後の練習試合でも打って、そこから4番に定着しちゃった感じです」。秋季県大会決勝では代打で決勝タイムリーを放つ活躍を見せ、チームを優勝に導いた。4番・ライトで定着した北信越大会でも優勝し、明治神宮大会に出場。鵡川(北海道)に6-11で敗れ、2年生のシーズンは終わった。

3月、センバツで初めて、甲子園の土を踏んだ。初戦は清峰。後に広島入りする今村猛と対戦した。「あんないいピッチャー、初めて見ました。すごかったです。夏の甲子園を振り返っても、センバツの今村が一番良かったです。スピード、制球、変化球、すべてがすごかったです」。

 0-4で敗れ、初めての甲子園は終わった。

 春季県大会を制し、夏に勢いを付けた。夏の新潟大会も通過。再び、甲子園に戻る権利を得た。

 「初戦を勝ち、3回戦の日本航空石川は招待試合かなんかで対戦していて、勝っていたチームだったので、気持ち的に楽に挑めました。準々決勝からですね。勝ちを意識するっていうか。立正大湘南に勝って、準決勝にいって。でも、目標は全国制覇だったので、全国制覇できるんじゃないかって気持ちになってきて。で、準決勝を勝って、決勝に行っちゃって。相手、中京大中京で『もうここまで来たんだから、最後、どんな形であれ、自分たちの最後の力を出し切ろう。絶対に気負わないで、優勝を狙うぞ』って感じでした」

 決勝戦、1回裏に2点を先制されたが、2回表、吉田がレフト線へ2ベースヒットを放ち出塁する。「甘かったんですけどね。高めの、あれジャストミートしたかったんですけどね。先っちょだったんで、ライン切れなかったんですけど」。納得のいくヒットではなかったが、回の先頭打者として出塁した。「あいつ、すごいんですよ」と脱帽する5番・高橋義人の右中間へのタイムリーでホームを踏んだ。3回表には当時2年生だった高橋隼之介が同点ソロをかっ飛ばす。試合が動いたのは6回。中京大中京が打者11人の猛攻で6点を挙げた。7回表に1点を返すも、その裏に2点を加えられた。8回表に相手の暴投で1点を返すも、8回を終了した時点で4-10と点差が開いていた。

 しかし、9回表、日本文理は2死から球史に残る怒涛の攻撃を見せる。

 1番・切手孝太が四球で歩き、高橋隼之介への4球目で盗塁。高橋隼は左中間へタイムリー2ベースヒット。さらに3番・武石光司がライト線へタイムリー3ベースヒット。ここで4番の吉田に打席が回ってきた。1ボールからの2球目、三塁ベンチ前にファウルフライを打ち上げた。取られたらゲームセットだったが、ここで命拾いをする。そして、3球目。「悲しいです。貢献したかったですね、打ってつなぎたかったです」。結果は死球。中京大中京はここで堂林翔太から森本隼平にスイッチ。その後も四球や2本のヒットで1点差に詰め寄った。最後は8番・若林尚希がサードライナー。9回に5点を奪う反撃を見せるも、9-10で敗戦。全国準優勝の銀メダルが胸元に光った。