母親思いの優しすぎる少年

百崎 蒼生(東海大星翔)
地元の熊本に戻った百崎は、同じ東海大学の付属校である東海大星翔へと転入した。チームを指導する野仲義高監督は、中学時代にもプレーを何度か見て、百崎には大きなポテンシャルを感じていた。
仲間から孤立した経緯を聞き、チームに溶け込めるか一抹の不安もあったというが、最初にグラウンドを見学にきた姿を見て意外な印象を持った。
「チームメートと上手くいかなかったと聞いて、どんな子だろうと思っていましたが、本当に心優しい子で正直少し驚きました。お母様と一緒にグラウンドを見学に来ましたが、『足元、気を付けて』と声かけたり、そこまで母親に気を遣うのかという感じで。
百崎は、お母様に女手一つで育ててもらっています。母親を楽させてやりたいという思いがとても強い子で、思いが強すぎる故に、自分を大きく見せようとか、大人びた振る舞いをしようとか、そういった行動に繋がったのではないでしょうか。優しすぎる思いが、悪い方向に出てしまったのだと思います」
野仲監督の考察を、本人にも伝えた。
百崎は否定することなく、母への思いを素直に口にする。
「確かに、そういったところがあったのかもしれないです。母には本当に迷惑ばかりかけてきたので、絶対に恩返ししたいなという気持ちがあります。結果的に東海大相模を辞めてまた迷惑をかけてしまいましたが、今は自分が甲子園でプレーしている姿を見せて、そしてプロに入って楽させてあげたいと思って頑張っています」