近年、野球界は急速に技術革新が進んでいると言っていい。ピッチトンネル理論、バレルゾーン、フライボール革命など、計測機器の充実に伴って、多くの理論と技術が飛び交うようになった。
その中の一種としてフレーミングを挙げていい。ストライクゾーンの際どい球をストライクに「見せる」高等技術で、メジャーから日本に技術が輸入され、プロはもちろん、アマチュアでも習得しようとする捕手が多い。
勝負どころでフレーミングを使うのが一番

木下拓哉
まさにトレンドとなっている技術を、中日・木下 拓哉捕手(高知高出身)は高い精度で発揮している選手の1人だ。
高知高時代には甲子園に2度出場した後、法政大、トヨタ自動車と渡り歩いて2015年のドラフトで中日から3位指名を受けてプロ入り。中日の正捕手として活躍し続け、今年8年目を迎える木下のキャッチングは、あらゆるところで特集が配信されている。
木下の捕球技術がいかに上手いのか窺い知れるところだが、本人のなかでは「執拗にやる必要はない」と注意を促す。
「審判も人間ですので、フレーミングをあまり意識しても印象が悪くなります。だから、要所で頑張ればいいと思っています」
フル出場すれば、捕手は1試合でおよそ150球前後受ける。その150球のなかでも、試合開始の1球目とピンチの場面の1球では、1球の重みが違う。木下が伝えたいのは、後者のような勝負どころでストライクにしてもらうために、フレーミングがあるという考えだ。
だから「初球から動かして、『こいつは動かす捕手だ』と審判に思われたら損をする」と執拗に使って審判との信頼関係を悪化させることを懸念する。あくまでフレーミングは捕球技術の引き出しとして捉え、「(初球から)頑張りすぎないことが大事になると思います」と拘り過ぎないように話した。
ただ勝負どころで発揮する木下のフレーミングは美しくもある。本人はどんな感覚で捕球しているのか。
「普通に捕球すると上から被せるように捕ってしまうので、手のひらをできる限り見せる感じです。捕球面を投手に向け続けるように、できる限り親指が頑張ることですかね」