Interview

来年の京都にも楽しみな大器。指揮官も「久しぶりの怪物ですよ」と太鼓判を押す京都翔英の二刀流・小笠原蒼とは?

2022.11.27

来年の京都にも楽しみな大器。指揮官も「久しぶりの怪物ですよ」と太鼓判を押す京都翔英の二刀流・小笠原蒼とは? | 高校野球ドットコム
京都翔英・小笠原蒼

 小野寺 暖外野手(阪神)、石原 彪捕手(楽天)、山本 祐大捕手(DeNA)と、これまでに3名のプロ野球選手を輩出している京都翔英(京都)。そんな同校に山下勝弘監督が「久しぶりの怪物ですよ」と太鼓判を押す選手がいる。それが2年生の小笠原 蒼だ。

 179センチ、91キロの恵まれた体格を持つ右投左打の選手で、打者としては夏以降に10本以上の本塁打を放っており、投手としても最速141キロを誇る。二刀流として2023年の京都を湧かせるであろう大器に単独インタビューを行った。

愛知港ボーイズから京都翔英へ

 愛知県豊田市出身の小笠原は、小学1年生の時に山之手少年野球クラブで野球を始めた。小学生時代は主に捕手と一塁手をやっていたそうだ。

 中学では愛知港ボーイズに所属。「パワーには自信があったので、周りの子よりは飛ばしていました」と長打力を発揮していた一方で、1年の秋には球が速かったことを買われて投手を始めるようにもなった。中学生の間に球速は130キロを超える速球を投げていたという。

 京都翔英に進学の話が出たのは中学3年の6月。山下監督から誘いを受けたのがきっかけだった。親元を離れることに不安もあったが、「他の県で試してみたい気持ちがあったので、勝負しようという気持ちになりました」と近畿地区の強豪校に進むことを決心した。

 意気揚々と京都翔英の門を叩いたが、2年春までは結果を出せず、公式戦に出場することができなかった。

「ピッチャーの球のキレであったり、変化球の精度であったり、今のままだったら追いつけないとレベルの高さを感じました」

高校野球のレベルの高さに挫折していた小笠原を救ったのが山下監督の言葉だった。「結果を気にするのではなくて、どんどん振っていけ」というアドバイスをもらったことで精神的に楽になり、次第に結果が出るようになると、夏にはレギュラーを獲得。4番打者を任されるまでになった。


夏の初戦でバックスクリーン弾を放つ

 夏の京都大会は準々決勝敗退。個人の成績としては「思うように打てなかったです」と振り返る。

「何とかして3年生と長く野球をやりたいという中であのような結果になってしまって、バッティングでも先輩方に助けてもらった部分がたくさんあったので、悔いしかなかったです」

 集大成となる夏の大会で活躍することの難しさを痛感。新チームになってからは投手でも試合に出場するようになった。投手と野手の二刀流をこなすのは負担が大きく、注目も集まるが、「チームが勝てばそれで良いので、二刀流ということはあまり意識していないです」と意に介さない。名実ともにチームの大黒柱として秋の大会に挑むことになった。

 小笠原が打棒を発揮したのが初戦の京都成章戦。0対1と1点を追う2回表の第1打席にバックスクリーン直撃の同点本塁打を放ったのだ。

 この試合は前日に試合途中で降雨ノーゲームとなっており、その試合では無安打に抑えられていた。「1打席目(前日の試合と)も同じ球が来て、何とか打たなければと思って振り抜いた打球が当たりました」と前日の反省が生かされた結果だったという。この一打で勢いに乗った京都翔英は6対1で快勝。その後も立命館宇治に7回コールド勝ちを収めるなど、順調に勝ち進んだ。

 しかし、準々決勝の乙訓戦は5対16の7回コールド負け。小笠原は先発して3回2失点だったが、後続の投手が打ち込まれてしまった。打撃では1安打を放つもチームの勝利に繋げることができなかった。

「自分が投打において引っ張っていかないといけない中であまり結果が出ず、戦っていく中で3年生の偉大さを感じました」と秋の戦いを振り返った小笠原。周囲から注目される中でプレーしやすいように配慮してくれた先輩のありがたみを感じた秋だったようだ。

「秋は全然打てなかったので、春の大会は勝負強いバッティングをして、ピッチャーでは無失点で抑えられるように練習しています」と現在は春以降に向けて練習に励んでいる。

 変化球はスライダー、カーブ、ツーシームに加え、チェンジアップを練習中だが、こだわりを持っているのはやはり直球だ。

「自分の武器は真っすぐだと思っているので、真っすぐで押せるようなピッチャーになりたいです。春には145キロは投げたいと思います」

ヤクルト2位・西村瑠伊斗に刺激を受ける

 打撃面では今秋のドラフト会議で指名されたあの選手を目標に掲げている。

西村 瑠伊斗外野手(京都外大西/ヤクルト2位)のような、ここぞという時にホームランや適時打を打てるようなバッターになりたいです」

 夏の京都大会では準々決勝の立命館宇治戦で9回表に勝ち越し弾を放った場面を待機場所で目撃し、「プロに行く選手はあのような場面でも自分のバッティングができるんだなと自分とのレベルの差を感じました」と感心するしかなかった。

 西村の活躍に刺激を受けた小笠原も高卒でのプロ入りを目指しており、「自分の中ではバッティングで勝負したい」と将来的には野手一本に絞ることを考えているようだ。

 プロで対戦したいと思っている投手は日本ハムの畔柳 亨丞投手(中京大中京出身)。実家が近く、初詣に行った際には写真を撮ってもらったこともあるという。

 取材日はフリー打撃やブルペン投球を行っていたが、投打ともにスケールの大きさを感じる選手だった。再現性が高まり、安定して高パフォーマンスを発揮することができれば、スカウトの評価も自ずと上がってくるだろう。

「山下先生を日本一の男にできるように春、夏と優勝したいと思います」と来年に向けての意気込みを語ってくれた小笠原。チームを甲子園に導くような活躍を見せることができるだろうか。

(取材=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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