Interview

12球団から調査書届く大分のスラッガー・古川雄大 最終学年は不振もスカウト評価は「育成から上位候補」へ【後編】

2022.10.13

 身長186センチ、体重90キロ、屈強な体格から長打を連発する九州の大型スラッガー・古川 雄大外野手(佐伯鶴城)。高校通算21本塁打の長打力を誇り、また遠投110メートル、50メートル走は6.0秒と身体能力は抜群。俊足を活かして果敢に次の塁を狙う走塁も目を引き、その底知れぬ能力の高さから「ギータ2世」の呼び声もある。

 古川自身も「ずっと目標にしてきたのは福岡ソフトバンクホークスの柳田選手」と憧れを口にし、10月20日のドラフト会議での指名を心待ちにしているが、そんな古川にはこの春大きな課題が突きつけられた。

マークが厳しくなり最終学年で失速

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古川雄大

 中学時代には40校近いスカウトから声がかかり、佐伯鶴城でも入学直後から試合への出場機会をつかんだ古川。持ち前のパワーに加え実戦力も身につけ、本塁打は1年生で8本、2年生では11本と着実に成長を見せていたが、3年生になるとその打棒は鳴りを潜めるようになった。

「3年生になるとマークが厳しくなり、攻め方が大きく変わりました。2年秋頃から県内では注目されるようになって、厳しいコースや苦手なコースを突かれることが多くなったんです。低めの変化球やインコース高めのストレートを打たされ、凡打や空振りが多くなり、結局3年生では本塁打は2本しか打てませんでした」

 古川が初めてプロを意識したのは、高校2年生の秋だという。プロ野球のスカウトが球場へ視察にきていたと聞かされ、ぼんやりとした夢が明確な目標へと変わった。

 だが、プロ注目の噂は瞬時に大分県内に広まり、一冬の間に各校は対策を練ってきたのだ。インコース攻めや外角低めの変化球を振らされることが多くなり、古川は打撃フォームを崩した。春以降、本塁打数が減ったことにとても苦しんだが、その一方で渡邉監督は最終学年になって技術は確実に上がったと断言する。

「最終学年でホームランは減り、結果的に最後の夏も準決勝で負けましたが、彼の技術は確実に上がったと思います。本人の感覚とは違い、打撃技術はプロのスカウトからも成長を褒めていただいており、4月まで育成と言われた古川が、夏の大会には上位候補まで評価が上がったのは、プロに行くために試行錯誤して身に着けた最高のパフォーマンスだったと思います。むしろスカウトの方からは春以降、とてつもなく苦しんで成長した姿があったと評価してもらいました」

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今は期待より不安しかない

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古川雄大

 甲子園を視界にとらえていたが、その姿は幻のものとなった最後の夏。敗退直後は悔しさだけが込み上げたが、それでも冷静に振り返ると野球の技術以外にも多くの成長があったと古川は話す。

「昔は感情的な人間だったんです。すぐ感情だけで動いてしまったり、試合でも感情を表に出してしまい、結果が出ないときには声を荒げてしまったり。でも、それではやっぱりチームの雰囲気が悪くなるし、自分の評価も悪くなる。そのことをしっかり考えて、人に対する接し方、人から見られる態度をしっかり考えて行動できるようになったと思います。チームで戦う中で成長できたのかなと」

 現役を引退した現在も、次のステージに向けて練習に取り組む日々だ。課題として浮き彫りとなった低めの変化球やインハイの直球への対応を克服すべく、右方向への意識を持ちながら打撃練習を行っているという。

 だが、ドラフト会議を目前に控えた現在は不安も大きく、「なかなか練習に身が入らないんですよ」と素直な思いも口にする。

「今はやっぱり期待よりも不安の方が大きいですね。周りは甲子園に出場して、すごい結果を残している選手ばかりで、しかも高校生だけじゃなくて大学生や社会人の選手もいます。その中で選ばれなくてはいけないので、今はすごく不安でしょうがない感じですね」

 憧れの存在として名前を挙げるのが、ソフトバンクホークスの柳田 悠岐外野手(広島商出身)だ。地元・九州のスター選手であり、長打、強肩、俊足とプレースタイルも同じ。その姿を追い求めるうちに、自身も「ギータ2世」と称されるようになり、柳田への思いは年々増していった。

「柳田選手はずっと球界最強バッターと言われていて、自分はそれを超えたいと思っていました。憧れであり目標とする存在で、柳田選手がいたからこそ、ずっとプロ野球選手になりたいと思い続けることができました。昔は漠然と考えていただけでしたが、今は本気で柳田選手を超えたい、それ以上の選手になりたいと思っています」

 現在、古川のもとには12球団すべてから調査書が届いているという。10月20日のドラフト会議で、古川 雄大の名が声高らかに読み上げられるのか注目だ。

(取材=栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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