高校日本代表にも選ばれた二刀流・野尻幸輝(法政大)の現在地。投げては150キロ、打者としても打球速度170キロ。あとは結果を示すだけ【後編】
9月に入り、各地で大学野球の秋季リーグがスタート。9月10日から東京六大学が開幕するが、ラストイヤーでプロ入りを狙うスラッガーがいる。
それが法政大の野尻幸輝外野手(4年=木更津総合)だ。高校時代、1年春からベンチ入りし、2年夏、3年夏と2度の甲子園出場を経験。強靭な肉体を生かしたパワフルな打撃を武器に、高校通算21本塁打をマークした。投手としても140キロ前半の速球を投げ込み、最後の夏は投打で躍動した。さらに高校日本代表にも選ばれた。後編では法政大での進化の様子を振り返っていく。
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1球で仕留めることを課題に
野尻幸輝(法政大)
目標のプロ入りへ向けて法政大へ入学した野尻。1年春からリーグ戦に出場し、4試合を経験したが、東京六大学のレベルの高さを痛感する。
「まず法政大は毎年プロに行く選手を輩出していて、すごいなと思いました。
そして東京六大学の投手は質が違います。高校の145キロと大学の145キロだと質が違うので、1年生の頃はそこに戸惑いましたね。同じ球速でもこんなに見え方が違うんだと感じました」
その中で、青木前監督から指導を受け、少しずつ東京六大学のレベルに対応していく。
「当時は青木監督でしたが、自分に期待してくれていました。練習に付き合ってくれたり、バッティングピッチャーなどもしてくれて、色々と対応力を磨くために、数を打っていました。2年生の頃にオープン戦でレギュラーで出るようになって、その頃はいい経験ができて、自分の中ではその頃からいい形になっていきました」
ただ、リーグ戦にはベンチ入りするも、なかなかヒットが出ないシーズンが続き、1年春の1安打と3年秋の2安打のみだった。
3年秋を終えて、リーグ戦出場は通算21試合出場。それでも野尻はこの代の中心として寮長を任されるほど人望が厚かった。ラストシーズンとなった4年春は自己最多の12試合に出場した。
「リーグ戦全試合に出場させてもらったのは初めてだったのでいい経験になりましたし、もっと結果を出さないといけないと思うので、自分の中では悔しさが残るシーズンでした」
夏休みでの練習の課題は「1球で仕留める打者」になること。そのレベルに達することがNPBへ向けての課題だと語る。
「1球で仕留めるバッターが一番怖いバッターだと思うので、どうしても1球で決めきれないと追い込まれてしまうので、とにかくコンタクト率を上げて、1球で仕留める。
その中で自分のパワーを生かすにはしっかり捉えることが最優先だと思うので、確実性を上げるための練習をしてきました」
野尻は考えて練習に取り組んでいる。取材日の練習では、雨天練習場でティー打撃、フリー打撃、トレーニング場で練習というメニューだったが、ティー打撃の際にバットを担いでエクササイズする姿があった。
「一つはけが予防として、可動域を広げてから振ることによって、力感もそうですし、引っ張られる感覚を養う動きをしていました」
ティー打撃ではスタンスを広くしたり、片手スイングや、半身の状態からのティー打撃など、工夫を凝らした練習をしていた。
「日によって変わりますね。前で打つと打球速度や強さが出るが対応する率が少なくなってしまう。いいバッターは広いスイートスポットを持っているので、今日は横で打つような感覚を養う練習でした」
勝負強いスラッガーになるために、着々と準備している。ただ野尻の武器はそれだけではなく、投手・野尻としても高い潜在能力を秘めていた。
現在、高校時代の最速144キロからさらに伸びて、練習では最速150キロ。オープン戦での最速は147キロと、二刀流・野尻が見られるかもしれないのだ。
個人練習では、キャッチボールをしていたが、鋭い投球を見せ、見ていて惚れ惚れする球質だった。
[page_break:投手としてのレベルアップは、後輩の存在が大きく影響]投手としてのレベルアップは、後輩の存在が大きく影響
野尻幸輝(法政大)
球速アップのきっかけは高校時代からの後輩・篠木健太郎投手(2年=木更津総合)の影響が大きい。野尻と篠木は寮の同部屋で、投球フォームについて色々学んだという。
「篠木は体重移動が始まった時に右半身を残すのが非常に上手いので、そこを参考にしていました。高校の時は最速144キロとかでしたが、冬場で速くなりました」
二刀流・野尻は加藤監督へ直訴したことが始まりであった。
「大学ラストシーズンでは自分で持っているものをリーグ戦で全て出したいと思っていたので、春のリーグ戦が終わった時に、監督さんに言いに行って、やってみようと言って下さった。非常にありがたいです」
投手としてのレベルアップは、外部指導者の影響も大きい。昨年12月からは、投手指導に定評のある北川雄介氏からも指導をいただいた。きっかけは高校日本代表のチームメイトだった巨人の山田龍聖投手(高岡商出身)の紹介だった。
「山田もコントロールが悪くて悩んでいた時に、北川さんから指導をいただいてから一気によくなってプロ入りしたのもあって、彼から薦められました。プロを目指している以上、色々な方のお力を借りればと思い、通うことにしました」
北川氏のもとには月1回は通い、後輩・篠木の動きからヒントを得た「右半身を残す」動作について、さらに踏み込んだ指導をもらい、150キロを投げるまでになった。また、ラプソードでも常時2400回転、好調時では2500回転をマークするなど、明らかに投手としても勝負できるレベルにある。
プロを狙うからこそ充実の日々を送っている。
「やることは非常に多いので、プロを目指すからこそ1日の生活が大事。充実度はすごいあります」
夏場のオープン戦では結果を残した。8月の専修大とのオープン戦で本塁打を記録し、投手として147キロをマークしたのもこの試合だった。
ラストシーズンのテーマは「恩返し」だ。
「ラストシーズンはいろいろお世話になった方に恩返しになるようなシーズンにしたいと思っているので、今この瞬間を未来につなげられるようにやっていきたいです」
野尻の成長には色々な人が関わっている。高校時代は叱咤激励をしてきた五島監督、大学時代は熱心な指導をしてくれた青木監督、二刀流を受け入れた加藤監督、そして投手成長のきっかけを作った後輩の篠木、そして12月から指導に携わっている北川氏。
最大の恩返しは「結果」で示すこと。
ドラフト会議が行われる10月20日。これまで苦楽を共にしてきた仲間たちとともに歓喜の瞬間を迎えるつもりだ。
マサキ
2024-01-24 at 11:52 AM
頑張れ、幸輝☆