さらなる高みを目指し大学野球最高峰の舞台へ



齊藤大輝(法政大)

 横浜高校を卒業後、すぐにプロに行くことは考えなかったのだろうか。

「最初は高卒プロも考えていました。でも実はあまり自信がなかったというのが正直なところです。プロは入るだけではダメ。活躍しないといけない。だったら大学に行って自信をつけてからでも遅くはないと思い、進学を決意しました」

 次なるステージは華の東京六大学。進学先の法政大は毎年のようにプロ野球選手を輩出する名門校だ。横浜高出身といえども全く安穏できない全国レベルの選手が各地から集まってくる東京六大学野球のレベルの高さに、流石の齊藤も舌を巻いた。

「キレだったり、球の速さだったり、やっぱり六大学ってすごいなと感じました」

 入学直後の2019年春季リーグは1打席しか立てなかった。それでも同年の秋季リーグでは2試合に出場し、計6打数4安打と実力を見せた。

「1年の時が一番気持ちを切り替えやすかったというのがあります。打てなくてもいいやという思いで打席に入っていましたから。そうしたら東大戦のスタメンで打てたので、そのくらい気楽に行った方がいいのかなと」

 しかし、レギュラー定着には至らず、大学2年生の2020年は苦しい時期を過ごす。春季リーグは6打数1安打で打率1割6分7厘。秋季リーグも11打数2安打で打率1割8分2厘。打撃を売りにしてきた選手として屈辱的な数字が並んだ。

「2年生の時はスタメン争いをしているなか、打たなきゃという思いが強かった。あまり気負わないほうがいいのかなと感じました。あと2年生のときは代打での出場が多かった。代打は難しいです。たとえば早稲田大の早川 隆久(現楽天)のような良い投手を、いきなり出場して打つことはなかなかできなかったです」

 課題はなんだったのだろう。

「速いストレートを打たないといけない。これはプロに入ってもそうだと思います。あとは体力面で食事を増やしたり、お尻や足回りといった野球の中で必要な筋肉をスクワットやデッドリフトで鍛えています」

 そして大学3年になった2021年シーズン。ついに大器の花が開く。技術面はもちろん、心境面での変化も大きかったという。

「3年生になって、自分が打たないと勝てないと感じていました。変に気負うことなく、自分のハツラツしたプレーを見せたら結果は自ずとついてくる。打席内で余裕を持てるようになってきました」

 春は38打数13安打3本塁打、打率3割4分2厘。5盗塁と足でもアピールした。極めつけは秋季シーズン。32打数14安打、打率4割3分8厘。好投手目白押しの六大学の舞台で三振わずかに4つ。四死球10の選球眼も含めて手が付けられない状態だった。春秋連続でベストナインを獲得し、名実ともに六大学最強打者に登りつめたのだ。

 前年の活躍を受け、警戒が強まることが予想される2022年。大学4年という最終年をどのように過ごしていくのだろうか。

「一打席一打席を集中すれば、もっと打てるんじゃないかなと思います。春は集中して打ちたいです。まだまだ成績はのばせると考えています」

 今季は主将にも就任し、法政大というチームをより客観的に見る機会も増えている。慶應義塾大が3連覇を目指して開幕するシーズン、名門復活を目指すためにも負けるわけにはいかないところ。主将の目にはいまの法政大はどのように映っているのだろう。

「法政の良さはハツラツとした姿ですね。どの大学にも負けない明るさや元気。勢いに乗ったら法政が一番怖いぞ、というのは感じます。個の力だったらどの大学にも負けません。

 あとは今年のスローガンでもある『一心』。心を一つにするということ、一という文字にこだわりを持っていこうというスローガンなので、それができれば日本一も見えてくると思います」

 高校時代から“勝つ”野球を身に着けてきた齊藤。大学4年間で迷いや焦りが消え、自分の実力に自信を持った。そのうえで主将として心を一つにまとめることができれば、これほど強いチームもないだろう。プロ入りという夢も膨らむ中、あくまで日本一を目指して己を磨き続ける姿と言葉が印象的だった。どのような集大成を見せてくれるのか、期待は膨らむばかりだ。

(取材:編集部)