大学野球最速160キロに挑戦 東洋大の156キロ右腕がラストイヤーにかける思い【後編】
大学野球界屈指の名門・東洋大に今年もドラフト上位候補の速球派右腕がいる。副主将を務める羽田野 温生投手(4年=汎愛)は最速156キロの直球を武器に主に抑え投手として投手陣を牽引している。
188センチの長身右腕として汎愛高時代から激戦区・大阪府屈指の投手として注目を集める存在だったが、2018年のドラフトでは指名漏れを経験。4年後の指名を目指し関西を飛び出し東都リーグの強豪・東洋大へ進んだ。現在、最上級生となった浪速の剛腕は2022年の「ドラフト1位」候補まで成長を遂げた。
羽田野にこれまでの野球人生を振り返ってもらった。【後編】
力で押す最速156キロ 大学で10キロ近くUP
東洋大・羽田野 温生投手(4年=汎愛)
大学入学後の体づくりとフォームの改良で高校卒業時の最速147キロから現在は156キロと、10キロ近く更新した。回転数も安定して平均2400~2500回転は計測する。常時90%を超えるという回転効率についても、計測してくれた専門のスタッフからも「縦の伸びは素晴らしい」と声をかけられたという。自身の直球の性質についてはこう表現する。「力で押すスタイルなので、伸びる球というよりはズドンと一直線でミットに突き刺すイメージで投げています」。
体への負担も考慮し、柔軟も欠かさない。「柔軟性がないと怪我にもつながりますし、逆に柔軟性があるとパフォーマンスアップに繋がると思っています」とトレーニング後はストレッチなどで体をほぐす時間を必ずとっている。
ラストイヤーの2022年春のシーズンには大きな目標を抱いて臨んでいる。
「今シーズンは2部で優勝して、入れ替え戦も勝って1部に昇格して、その先の1部の舞台で優勝して、神宮優勝という下剋上を果たしたいと思っています」
昨秋は入れ替え戦が実施されなかったことから、今季にかける思いは強い。そして個人の目標として「リーグ戦でしっかり結果を残してプロ野球という舞台に『ドラフト1位』で行くというのはずっと口にしています」と東洋大からは2018年の現ソフトバンク・甲斐野 央投手(東洋大姫路出身)、現DeNA・上茶谷 大河投手(京都学園出身)以来の1位指名へアピールを続ける。
大学では入れ違いだった甲斐野や上茶谷らの存在はもちろん意識している。
「甲斐野さんは遠投が好きだと聞いたので、自分も重点的にやっています。その効果で球が速くなった部分もあったのかもしれないですし、そういったところをマネさせていただいてます」
偉大な先輩の背中を追いかけながら、自身も伝統ある東洋大野球部の歴史に名を刻もうとしている。羽田野は大学野球生活でのもう一つの夢を口にした。
[page_break:「大学野球最速160キロ」に挑戦]「大学野球最速160キロ」に挑戦
東洋大・羽田野 温生投手(4年=汎愛)
「大学野球最速を目指してやっているので、在学中に160キロ以上の目標を持ってやっています」
「大学野球最速160キロ」へ、手応えもある。「オープン戦からはいい感じで、球速も出てますし、これから上げていけばいいかなと思います」と状態は好調。また、今年の東洋大投手陣では羽田野の他にも154キロ左腕・細野 晴希投手(3年=東亜学園)、151キロ右腕・一條 力真投手(2年=常総学院)が150キロ超の速球を投げる。チームメイトに速球派投手が複数いるということも刺激になっている。
「東洋大学の投手はレベル高いと思います。下級生にも150キロを投げるピッチャーもいますので、自分も負けないようにやっています。刺激もありますし、自分も立場的に引っ張っていかないといけないので、負けないように日本一の投手陣を目指して頑張りたいです」
さらに今年入学した新入生も頼もしいメンバーが加わったと声を弾ませる。「今年の1年生は島田がすでに149キロを出していますし、左も良いピッチャーがいます。全体的にもレベルは高いと思うので、将来の東洋大学にも期待できます」。昨夏千葉大会準優勝の実績がある島田 舜也投手(1年=木更津総合)や、センバツ準V左腕・太田虎次朗投手(1年=明豊)、夏の山口大会で全7試合を投げ、甲子園へ牽引した左腕・河野 颯投手(1年=高川学園)など全国トップレベルの投手たちの成長も楽しみだという。
「日本一の投手陣」を掲げ、静かに闘志を燃やしている。「下剋上を果たしたい」。1部昇格、日本一、ドラフト1位、そして大学最速160キロの挑戦状を胸にラストイヤーで有終の美を飾ることができるか。歓喜の瞬間を心待ちにしたい。
(取材:藤木 拓弥)