通算19本、投げては130キロ中盤 鹿児島にいた別格の中学生内野手「中学でも侍ジャパンに」
鹿児島市内から車で約40分、県西部のいちき串木野市で活動を行う串木野ドリームズ(フレッシュリーグ)に未来のスター候補内野手がいる。桑元 信祐(しんすけ)選手は、小学校6年生の時にU-12日本代表に選ばれた新中学3年生。通算本塁打は19本を数え、投手としても130キロ中盤の直球を計測する。
すでに九州地区のライバルチームからも、その実力を絶賛する声が挙がっており、指導する佐藤正剛監督は「まだまだです」と辛口だが、その将来性には「大きく育ってほしい」と期待を寄せる。
パワーではなく技術で打球を飛ばす
桑元 信祐
173センチ、75キロ。体だけを見ればもっと大柄な中学生は他にもいるが、卓越した野球センスを持つ。パワーではなく技術で打球を飛ばすタイプで、バットを軽く振っているように見えても、打球はグングン伸びていき簡単にフェンスを越えていく。スイングが非常に柔らかく、ヘッドを利かせてコースに逆らわずに広角へ長打を連発する打撃は、見ていて惚れ惚れする。
中学通算本塁打は19本だが、これは狭い球場やグラウンドでの本塁打を除いた数字で、佐藤監督によるとすべてを合わせると30本を超えるという。
また投手としては130キロ中盤を計測し、本職である遊撃の守備では三遊間の深い位置からでも矢のようなスローイングを見せる。まさに攻守の要と言える選手だ。
「プレー面では守備が課題ですが、打撃もまだまだレベルを上げないといけないと思います。この1年は、チームでも個人でも結果を出さないといけないので、結果を求めていきたいです」
元球児だった父の影響で、5歳からホークスアカデミーで野球に慣れ親しんだ。小学校に入学すると、少年野球チームのガッツ鹿児島に入団し、内野手としてプレー。その高い野球センスは次第に県内でも評判となり、小学校6年生の時にはU-12日本代表に選出された。
「日本代表を経験して一番変わったのは、試合中の声かけです。人見知りでは野球はできません。自分がチームを盛り上げて、引っ張っていこうと意識が変わりました」
不安と焦りからベンチで一人涙したことも
練習中の桑元 信祐
頭一つ抜けた野球センスを持つ桑元だが、指導者たちが口を揃えて評価するのが野球へのストイックな姿勢だ。
印象的なエピソードがある。昨年、練習終わりの誰もいないグラウンドで、桑元がベンチで一人涙を流していた。コーチが驚いて事情を聞くと、自身が伸び悩んでいるのではないかという不安と焦りから、感情があふれて涙を流してしまったというのだ。
「このままじゃ中学では日本代表になれない」
桑元は危機感を持ちながら、常に練習に取り組んできた。
「落ち込むと、ネガティブな気持ちが邪魔します。そのことがあってからは、落ち込む暇があったら練習しようと思うようになりました。もっと強くなるためにどうすれば良いか、今も必死に探しながら練習しています」
課題は攻守である。現在はより正確な守備と確実性の高い打撃を目指しており、主将も務める今年はリーダーシップを発揮することも求められる。目標は小学生時代に続き侍ジャパンU-15代表選出、そしてチームとしての全国優勝だ。
「打撃も守備も、まだまだ上には上がいると思っています。この1年間はチームでも、個人でも結果を出さないといけない。負けるのは嫌いなので、結果を求めていきたいです」
甲子園出場やその先の野球人生も見据えるが、今は目先の一球一打に全力を注ぐことを誓う。不安や焦りを凌駕した先に、どんな成長した姿を見せてくれるか楽しみだ。
(取材:編集部)