Interview

アメフト経由でNPB挑戦 中等部出身組から「早実の背番号1」を勝ち取る vol.2

2022.01.09

 先日、徳島インディゴソックスから特別合格となった150キロ右腕・吉村 優投手。高校野球屈指の名門・早稲田実業でエースを任され、最後の夏はベスト8進出。早稲田大進学後は、米式蹴球部に入り、アメリカンフットボールに挑戦し活躍した異色の経歴を持っている。

 前回は高校1年生までの歩みに迫ってきたが、今回はその後、エースになるまでの道のりに迫った。

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■vol.1
早実エース→早大アメフト部→独立リーグ入団 常識外れな挑戦のルーツは?
■vol.2
アメフト経由でNPB挑戦 中等部出身組から「早実の背番号1」を勝ち取る
■vol.3
元早実エースはなぜアメフトに転向したのか?次の挑戦も「幻想」ではない
■コラム
2競技で「甲子園」経験 型破りな経歴でNPB入り目指す150キロ右腕が得たもの
■コラム
アメフト経由の150キロ右腕が明かす「早実野球」と後輩・清宮幸太郎の素顔

明確な目標をもって量をこなす

アメフト経由でNPB挑戦 中等部出身組から「早実の背番号1」を勝ち取る vol.2 | 高校野球ドットコム
高校時代の吉村優(早稲田実業)

 2年夏の西東京大会では公式戦デビューを果たすなど、投球で勝利に貢献して決勝進出。決勝戦ではライバル・東海大菅生に決勝で勝利し、甲子園行きの切符を掴んだ。

 優勝の嬉しさはもちろん、「自分の目標であるエースで全国制覇に近いものを間近で体験ができましたので、目標がより具体的になりました」と自身が描く目標設計のなかでも、西東京大会優勝は大きかった。

 甲子園へ進むと当時主将だった加藤 雅樹捕手(現東京ガス)、そして怪物1年・清宮 幸太郎内野手(現日本ハム)を中心とした強力打線でベスト4進出。優勝とはならなかったが、甲子園を存分に味わった。

 最高の舞台を知ったこと、そして想定よりも早くベンチ入りをした吉村は、最後の1年で「エースナンバーを背負う」ことを目標に、練習に打ち込んだ。

 休み時間の10分間でもシャドーピッチング。練習でも、ただ投げ込みをするのではなく、シート打撃での登板を志願。練習試合でも、「どんなテーマで投げるのか考えたうえで、前日の過ごし方を決めました」とより明確に定性、定量ともにこなせる練習を重ねて自信を深めた。

 そして6月に開催された招待試合から背番号1をつける機会が増えていくと、ついに最後の夏にエースナンバーを渡された。

 打線は1つ下の清宮、さらに2つ下には現在ソフトバンクで奮闘する当時1年・野村 大樹内野手と、充実の戦力。最終目標であるエースナンバーをつけて全国制覇する、という夢をかなえるためには、吉村はじめ投手陣がどれだけ奮起できるか。図らずも、自身の投球がポイントとなり、「エースとして持てる力を発揮しよう」と意気込んで臨んだ。

 大会は順当に勝ち上がっていくが、準々決勝・八王子の前に止められた。
 先発したものの、5回途中で吉村はマウンドを後続に譲りベンチへ。直後、逆転を許し、そのまま試合をひっくり返すことができず、4対6で敗戦した。目標だった全国制覇のための甲子園にも手が届かず、高校野球3年間が終わった。

[page_break:エースへのルーツは勉強にあった]

エースへのルーツは勉強にあった

アメフト経由でNPB挑戦 中等部出身組から「早実の背番号1」を勝ち取る vol.2 | 高校野球ドットコム
徳島インディゴソックスからNPB入りを目指す吉村優

 目標だったエースとして甲子園優勝には手が届かなかった。当時の敗戦は「今でも夢に時々出てきます」と悔しさをにじませるが、中等部の軟式出身から2人ほどしかベンチに入れないほど厳しい現実が予想される中、エースナンバーを背負うまでになった。

早稲田実業でエースになって全国制覇する」

 この目標を見失うことなく、ひたむきに練習をしてきた。入学当初は些細なところからアピールを続け、エースまでなった。しかし、なかには試合に出られずに心が折れる、妥協をする選手も当然いる。

 吉村はなぜ折れなかったのか。

「ベンチに入れないときは悔しさを持っていました。けど、当時の実力でベンチに入っても、やれることがなかったので糧にして練習するしかなかったですし、それまでに試合出場するのは最後の夏に全国制覇するための途中の目標でした。あとは人生にもかかわる中学受験で中等部に入学したのは、大きな目標を達成のためにやってきました。だから目標が揺らぐわけがないですし、ネガティブにもなりませんでした」

 揺るがぬ目標達成のため、吉村は3年間高校野球に打ち込んできたが、大事にしてきたのは数をこなすことだった。

「目標に対して、やるべきことをコツコツやるのは得意だったのもありますが、当時は『時間を作って、量をこなしていけば何とかなる』と思っていたので、質よりも量を大事にしていきました。そうなったのも、中学受験のときに勉強量をこなしたおかげで、試験当日は自信をもって迎えられたんです。その時に身をもって量をこなすことの大切さを学んだからだと思います」

 振り返れば、中学の時も、いち早く硬式になれるために1人でやるのではなく、チームに所属し、河合コーチから宿題をもらいながら、ほぼ毎日練習するなど、時間をかけて順応してきた。そして、早稲田実業でも休み時間にシャドーピッチングや、シート打撃で積極的に投げ込んだ。

「勉強にルーツがあります」と本人も自負するが、細やかで、かつ正確な目標設定の裏付けにあった練習量が、エースへの道を切り開いた。

(取材:田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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