日本のアマ野球では最強の二刀流・矢澤宏太(日体大)。高次元のパフォーマンスを発揮させたフォーム改善とトレーニング【前編】
11月19日(現地時間18日)、MLBは今季のMVP受賞選手を発表。二刀流として活躍したエンゼルス大谷 翔平(花巻東出身)が見事にア・リーグのMVPを獲得した。
そんな中、大学球界に高レベルの二刀流を実践しているのが、日体大の矢澤 宏太(3年=藤嶺藤沢)ではないだろうか。
173センチ、70キロという体格ではあるが、最速150キロの速球を武器に、首都大通算7勝を挙げ、打者としても4本塁打をマーク。外野手、投手でベストナインを一度ずつ獲得しており、逸材が多い大学3年世代でもトップレベルを誇る。その矢澤に今シーズンを振り返ってもらった。
昨年オフは投手メインのトレーニングを行い、1年だけで6勝
外野手用のグラブでガッツポーズを見せる矢澤 宏太(日体大)
今シーズンは二刀流として印象的な活躍を見せてくれた。
春季リーグ戦の東海大との開幕戦(4月10日)で3番投手として先発。試合を作り、豪快な打球を披露した。4月25日の帝京大戦では、サヨナラホームラン。5月1日の筑波大戦では10奪三振の完封勝利。秋のリーグ戦の初戦では最速150キロのストレートをマークし、完封勝利。今季だけで6勝を挙げ、投手としては大躍進した1年だった。
矢澤も投手としての自信を深めた。
「去年は試合で投げないと、どんなピッチングができるか分からなかったのですが、今年はある程度このくらいのピッチングができるだろうと、イメージの中でそのイメージ通りのピッチングができたのかなと思います」
二刀流としてポジションを確立した矢澤だったが、昨秋まで投手としてパフォーマンスに満足しておらず、投手メインの練習を増やしたという。
「ピッチャーの練習は全て入って、自主練習でティーをやったり、バッティングだけ一緒に入ったりという感じで過ごしてきました」
「オフシーズン中は投げ込みはあまりしていなかったのですが、ウエイトトレーニングだったり、色々なトレーニングで体を作っていきました」
そしてシーズンに入っては、実戦的な投球をするために投球練習でも工夫を行った。
「試合とは別の日に週に一回ブルペンに入ったのですが、その時は次対戦するチームのバッターをイメージしながら、キャッチャーとコミュニケーションをとりながら、ピッチングしていきました」
イメージトレーニングや、通常のトレーニングも、すべて投手として結果を残すために力を注ぎ、投球フォームにも目を向けた。
「踏み込み足(右足)の使い方が自分では良くなったと思っていて、踏み込む際に下半身が回りきらずにリリースしていたという部分がありましたが、しっかりと下半身から逃げずにリリースまで球に力が伝わったので、球がばらつくことなく投げられたのかなと思います」
[page_break:課題は平均球速の向上]課題は平均球速の向上
矢澤 宏太(日体大)
躍動感溢れる矢澤の投球フォームだが、バランスを崩してしまう点が大きな課題だった。ただ意識するだけではフォームは改善しない。矢澤は自身が求めるフォーム技術を確立する上で、トレーニングを工夫した。それがメディシンボールを使ったトレーニングである。
投球動作に入って軸足をプレートに押さえつけるイメージでボックスの上に乗る。そして投げ手がメディシンボールを投げて、リリースに入る瞬間にボールを受け取り、リストで返し、バランスを崩れないように右足の踏み込み足で我慢をする。
この練習を繰り返し行ってフォームを固めてきた。自分の動きを実現するために、自分に合ったトレーニング法を確立している点が素晴らしい。
この1年は投打ともに高次元のパフォーマンスを見せてくれたが、矢澤自身、最後に息切れしてしまったことを反省点に挙げた。
「前半はそれなりにスピードも出て、ある程度、自分が思い描いたピッチングができました。
しかし後半は出力も若干落ちて、その中で試合を作ったり完封できたりはあったのですが、もっと球速的にもアベレージとかを上げていければと思いました」
今ではほぼ毎日、ウエイトトレーニングを行っている。取材日ではウエイトトレーニングの様子を見せてくれたが、173センチ、70キロと細身に見えるが、両腕の筋肉の盛り上がりはすごいものがあった。
平均球速の向上も目指している。
「アベレージをとにかく140キロ後半を意識していて、今であればスピードを出そうと思ったらピンチになったら140キロ後半出せますが、出そうと思ったら150キロでるという感じにしたいです」
今では来年のドラフト候補を紹介するとトップの扱いを受ける矢澤。高校時代から速球派左腕として注目されていたが、このように順調に育っているのは、日体大の育成環境、育成方針があるに違いない。後編では矢澤の二刀流の原点に迫る。
(記事:河嶋 宗一)