東京五輪女子ソフトボールで、日本代表金メダル獲得の立役者と呼ぶに相応しいのが、鉄腕エース・上野由岐子投手(ビックカメラ高崎)だろう。
大会では全6試合のうち4試合に先発と獅子奮迅の投球を見せ、特に決勝では1次リーグ最終戦で敗れたライバル米国と対戦。後藤希友投手(トヨタ自動車)に一度マウンドを譲ったものの、最終回に再登板してして無失点。13年前の北京五輪に続く大会連覇、そして胴上げ投手となった。
上野投手は今年で現役21年目の39歳。ベテランでありながら、最前線でチームを引っ張り続けることができる背景には、若手時代から積み上げてきたメンタルコントロール術と日々のコンディショニングがある。
vol.2の今回は、トップレベルのパフォーマンスを維持するためのコンディショニングについて語っていただいた。
前編はこちらから!
女子ソフト代表・上野由岐子投手 金メダルを引き寄せた柔軟なメンタルコントロール術
体の声を聞くことは怪我の防止にも繋がる
メンタルコントロールについて伺った前回、不確定要素の多いゲームの中で、いかにその場その場で柔軟に対応することの重要性を語った上野投手だが、コンディショニング術においても基本姿勢は同じだ。
自身の体が何を求めているのかを常に意識し、決めごとは作らずその時その時に最も必要だと感じる行動を取っていく。
東京五輪の試合前も、グラウンドコンディションや体調、筋肉の状態などを鑑みて調整を行った。
「普段は土のグラウンドで練習をやっているのですが、今回は人工芝でのプレーだったので、体への反応が普段と全然違いました。事前練習の次の日も、背中やハムストリングといった体の裏側に張りを感じ、力の出し加減や重心の置き方を変えて、とにかく少しでも疲労感を残さず投球できるかを意識しましたね」
また大会がスタートすると、連戦を勝ち抜いていくために普段以上に「体の声」には耳を傾けた。体の変化や筋肉の張りに応じて、ストレッチの時間、種類を変えていき、その時その時のベストコンディションを模索。
またコンディショニング以外にも、課題の振り返りや次戦の相手選手のデータも頭に入れる必要があり、五輪に限らず大会期間中はやるべきことが山積みとなる。
「地面が固いと普段より臀部が張りやすいなとか、意外と足首も固くなるなとか、そういったものを敏感に感じることでパフォーマンス向上だけでなく、怪我の防止にも繋がります。
今回であれば、足首のストレッチや足の指をしっかり広げてから、パフォーマンスに入るように工夫して試合を迎えました」