Interview

中学で150キロ計測も聖地無縁。森木大智が高校3年間を語る

2021.10.09

中学で150キロ計測も聖地無縁。森木大智が高校3年間を語る | 高校野球ドットコム
森木大智(高知)

 高知中時代から常にこの世代の中心にいた最速154キロ右腕・森木 大智(184センチ90キロ・右投右打)。ついに甲子園とは無縁だった高校野球を終え、運命のドラフト会議を迎える彼に今、去来するものとは何か?

「今だから言える」秘話を含めた高校野球からの学びと、プロの世界へ挑む意気込みを語ってもらった。

(聴き手:寺下 友徳 取材日:9月7日)

隠し持っていた「カットボール」

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森木大智(高知)

――夏が終わって1カ月あまりが経ちました。まずは現在、思っていることについて教えてください

森木 大智投手(以下、森木) 夏を振り返って一番思ったことは「チームの意識の高さやまとまりがあるチームが勝つ」ということ。甲子園を見ていても「チームでやるべきことがしっかりしているチームが勝っているんだな」と思いました。

 個人としては今まで高校野球に取り組んできて、いいことばかりではなかったですが、それでもあきらめず、自分のなりたい姿を目指してやってきたことは、これからも継続していきたいと思っています。

――前回のインタビューは春の高知県大会前でした。春は四国大会優勝という結果を残せましたが、まずはこの時期に取り組んできたこと、課題と収穫どのようなものでしたか?

森木 フォームに関して言えば、軸足の部分と股関節に重心を乗せてから投げることに取り組んできて、そこに体重移動がうまくはまってMAX(154キロ)も出ましたし、それなりのいいボールが行っていたと思います。

 そこをベースに課題として取り組んだのは制球。ここも夏に向かって状態がよくなってきていました。

――ストレートに限らず「球質」に最終学年ではこだわりを見せていましたが、その課題は消化できたイメージですか?

森木 自分の理想とする形に近づけたとは思います。打者の手元で伸びる、打者のスイングを押し込むボールを目指してやってきましたが、ストレートについてはある程度できたと思っています。

――変化球についてはどうですか?春先は「カーブをしっかり投げられるようにしたい」と語っていましたが

森木 カーブについては夏の高知大会でカウントを取るボールになりましたし、それなりによかったと思います。他のスライダーやチェンジアップ、カットボールについても自信を持って投げられました。

――今、話に出てきた「カットボール」ですが、持ち球としては言ってなかったですよね?

森木 はい。夏まで隠しておこうと思っていました。ずっと左打者のインコースに対するカットボールは練習していて、明徳義塾との高知大会決勝戦でも使っていました。

――カットボールの修得は、やはり明徳義塾や全国で戦うことを見据えてだったのですか?

森木 もちろん空振りを取れるストレートや変化球を目指してはいますが、上のレベルに行けばなかなか空振りは取れません。そこで打たせて取れるボールを考えた結果、カットボールに行き着きました。

[page_break:夏の収穫・課題。そして「風間球打・小園健太」を見て]

夏の収穫・課題。そして「風間球打・小園健太」を見て

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夏は決勝で明徳義塾を前に敗戦。左から4番目が森木 大智

――そういった成果を試す場として7月初旬には大阪桐蔭履正社との練習試合が組まれました。特に先発で6回を投げ3失点・10奪三振だった大阪桐蔭戦で得られたものは大きかったのでは?

森木 あの試合ではキャッチャーとも話をして、ストレートだけでは抑えられないのは解っていたので、変化球を交ぜながら相手に何を意識させるかを考えました。結果、カウント球の中でストレートを使って打ち取ることもできたので、よかったと思います。

 この試合を通じて僕自身も一皮むけた感じがありましたし、高知大会のベースになったと思います。

――ただ、この試合では春に比べてひじの位置が下がっていた印象があります

森木 はい。そこは解っていました。でも、フォーム修正には時間がかかりますし、そこを意識し過ぎると制球力が下がってしまうと思ったので、意識はしないようにしていました。

――そして高知大会、決勝戦で明徳義塾に敗れ(3対5・森木は先発8回3分の0・124球で被安打4・奪三振10・四死球7・失点3・自責点1・暴投4)、甲子園出場は夢に終わりました。今だからこそ振り返られることはありますか?

森木 明徳義塾さんは野球の技術や能力以上に「絶対に勝つ」という気持ちを戦っていて本当に感じ取れました。そういった部分が後半に出てきたと思いますし、やりづらさを感じながら投げていました。1球に対する執着心は見習わないといけないと思います。

――正直、最後まで投げ切りたい思いはあったと思いますが……

森木 試合終盤には球数も投げさせられましたし、追い込まれた状況にいつの間にかなっていた感じでした。最後の夏ですし、最後まで投げたい思いはありましたけど、自分の状態(握力がなくなった)を考えて勝つ確率を上げるためには、自分が投げない方がいい。自分のエゴより我慢を選びました。

――高校野球の終わりはネクストバッターボックスで迎えました

森木 いろいろな思いがよぎりました。応援してくださっている方々の期待に応えられなかった悔しさ。勝ちきれなかった悔しさがにじみ出てきて……。本当に悔しかったですね。

――試合終了後は明徳義塾・代木 大和投手に声をかける場面もありました

森木 同じ県でライバルとしてやってきて、しのぎを削ってきた仲間なので、悔しい思いを押し殺して僕たちの代表として「甲子園で優勝してくれ」ということは伝えました。

 明徳義塾は甲子園でも相手の状況を見ながら、高知大会ではなかったエンドランや盗塁を仕掛けてくる場面もあったので、全国で勝つために必要なことを学びました。

――甲子園を映像越しに観戦した中では風間 球打投手(ノースアジア大明桜)のピッチングを見る機会もあったと思います。また、和歌山大会での小園健太投手(市立和歌山)のピッチングも映像で見たようですね

森木 風間くんは、僕の中で最初のイメージはストレートで押すパワーピッチャーだったんですが、意外と繊細で変化球も使いながら投げることもできますし、インローのストレートも素晴らしい。やはりいいピッチャーだと思います。

 小園くんに関してはまとまりがある定評があったと思うんですが、実際に見てもその通り。ストレートもいいボールが行っていて、変化球もカットボールやツーシームを使って打ち取っていたし、相手を見て投げられるコンビネーションはさすがだなあと思いました。

――逆にその小園くんを和歌山大会決勝戦で打ち込んだ智辯和歌山が全国制覇するのは……

森木 ハイレベルな試合で打って勝ったことでチームの状態も上がったと思いますし、気持ちの強さが智辯和歌山さんは凄かったと思います。

[page_break:「チームに必要とされて勝てる投手」になるために]

「チームに必要とされて勝てる投手」になるために

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森木大智(高知)

――高知大会決勝戦直後には早々に高卒プロ表明を行いました。今はどのようなトレーニングを行っているのですか?

森木 フォームの修正や身体の筋力を上げることに取り組んで、パフォーマンスもいいものが出せるようになってきました。

 フォームの修正点は自分の癖である右手首が寝てしまう部分と、下半身の動かし方の安定性。ここ1カ月の取り組みの中で右手の使い方が変わってくると全体が変わってくることも分かったので、もう一度土台を固めることに取り組んでいます。(詳しくは動画にて)

――高校野球を終えて、より意識してNPBの試合を見ることも増えたと思います。今、自分に落とし込める部分も含めて参考にしている投手はいますか?

森木 最近よく見るのは東京五輪でも活躍されていた北海道日本ハムファイターズの伊藤 大海さんです。僕があのレベルに達するまではまだ時間がかかると思いますが、ストレートや変化球の質、理想としている上から叩くストレートや縦の変化球は本当に凄いと思うし、あのような勢いのある投手になりたいですね。

――そのレベルに到達するために、もう1つ加えたいことは何ですか?

森木 この夏にも感じたことですが、体力面の強化です。昨年はそこが欠けていたので、走り込みとかはやっていきたいです。あとは自己管理。ストレッチや食事面、睡眠といったところで自分のベストなものを見つけていきたいです。

 自己管理面では今は体重を増やす目的(現在90キロ)があるので、量を食べて間食も入れつつ、お菓子は食べないようにしています。体脂肪も少し上げながら筋肉量も維持できるように、ウエイトトレーニングも導入しています。

――では、プロの世界ではどんな投手になりたいですか?

森木 まずはチームに必要とされて勝てる投手。高校の時にずっと言ってきましたが「アイツが投げるなら勝てる」そういう投手にならないといけないと思っています。

 僕は自分の結果は「チームのために」役割を果たすことでついてくる考えなので、「自分に何ができるか、自分がどうあるべきか」を考え続けることで、成績を上げていきたいです。

――ちなみに新調したグラブにも「志高く」と刺しゅうを入れています

森木 自分の意識を入れました。「こうしよう、ああしよう」というレベルで考えないと、とてもプロの世界では通用しませんし、嫌なことでも必要ならばやるというメンタルが必要だと思っています。

――逆に高知中・高知高での6年間で学んだことはそういったことだったりするのですか?

森木 そうですね。自己管理やチームが徹底するものの管理といったシステム的な野球の部分もそうですが、人間としての成長「自分がどういうプレーをしたらいいのか」状況判断をしてやっていくことを学びました。

 最後に甲子園に連れて行きたかったし、6年間お世話になった濵口(佳久監督)先生や(副部長の)勝賀瀬(拓志)先生、自分にかかわってくださった皆さんには、自分が活躍することで喜んでいただけると思うし、少しずつ恩返ししていきたいと思います。

――それでは最後に、プロの世界に向けての意気込みをお願いします

森木 プロの世界に選ばれたならば、日本を代表する投手を目指して意識高く、見ている方々に感動や勇気を与えて「野球っておもしろいんだな」と思って、子どもたちが野球を始めてもらえるようにしたい。自分の活躍によって周りに影響を与えられる選手になりたいです。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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