Interview

26年ぶり国立大出身ドラ1の実現へ 152キロ左腕・佐藤隼輔を進化させた4年間【後編】

2021.10.09

 今年、26年ぶりの国立大ドラ1を狙う佐藤隼輔(筑波大)。最速152キロの速球、スライダー、チェンジアップと現代の投手では少ない球種ながら、首都大リーグで通算10勝、防御率1点台と圧巻の好成績を残している。そんな佐藤はいかにしてドラ1までかけのぼったのか。これまでの歩みを振り返っていきたい。

大学2年の日本代表経験が大きな経験に

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佐藤隼輔(筑波大)

 仙台高時代からプロのスカウトに注目され、県内屈指の左腕として騒がれた佐藤の実力は入学当時から抜きん出ていた。幸運だったのは筑波大は球数を管理して投手を守る環境があったことだ。当時、川村監督に伺った時、70球〜80球が限度だったと振り返る。

「特にいいピッチャーでも体が細いと7,80球が限度かなと、オープン戦などで気付いたんですね。そうなると、これ以上は投げさせないようにしようと。そういう使い方をしてました」

 1年春は登板なし、1年秋から登板し、25イニングを投げて無失点という圧巻のデビューを果たす。

 ブルペンだと30球〜50球で少ない球数で勝負するスタイルで実力を積み上げていく佐藤は大学2年春に日本代表となった。この経験が非常に大きな経験だったといえる。

「そこが1つ自信になりましたし、大きな経験になりました。インコースにストレートをしっかりと投げきった上で、スライダーを織り交ぜる。自分のボールをしっかりと投げられば、どんな相手でも抑えられることは自信になりました」

 また憧れの早川隆久木更津総合-早稲田大)と一緒に代表入りできたことも大きな経験となった。

「話はそこまでできなかったのですが、日常生活、宿舎の生活を見ていて、しっかりとケアをしていて、几帳面な方だと思います」

 その後も安定したパフォーマンスを残すものの、肘の怪我をする時期があった。

「フォーム的なものも見つめ直し、テークバックをもっとコンパクトにするとか、見つめ直したのもありましたし、体作りに取り組みました」

 昨年は新型コロナウイルスの影響で、春季リーグは中止。グラウンドで活動できない時期があり、その時は近くの公園で練習することもあった。6月から班分けにして、グラウンドでの練習を再開。8月から本格的に練習を再開した。投球練習も本格的にできるようになったのもその時期からだ。

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ドラ1と日本一を狙ったラストイヤー

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佐藤隼輔(筑波大)

「投げてみて、パフォーマンス面でしっくりこない。精度的なものが良くなかったですね」

 その違和感はなかなか変わらなかった。秋のリーグ戦では3試合で防御率0.56と抜群の安定感を発揮していたように感じるが、佐藤自身は納得していなかった。

「ある程度抑えたのですが、僕の中で、投げている感じがしなかった。最後までしっくりこなかったですね」

 3年秋は10月中にリーグ戦が終了。オフシーズンはチーム全体で体作りに着手。半年以上はグラウンドで使えず、まとまった練習ができなかった。そのため、チーム内で目標を立てた。それが除脂肪体重3キロ増だ。

 週2回のウエイトトレーニングをこなしていき、1月の段階では除脂肪体重3キロ増量させ、83キロのうち70キロあるという。

 また投げるスタミナもついてきた。今までは30球程度で終わらせていたが、冬場の投げ込みでは50球投げても、以前より疲れることはなく、実際に計測をしても、スピードが落ちることなく投げることができており、着実に進化を見せていた。

 迎えた春季リーグの開幕戦となった武蔵大戦では完封勝利。ストレートに強い武蔵大相手にチェンジアップを使い6回目の完封勝利を飾った。

「武蔵大さんは、ストレートに強い打線というイメージがあり、多めにチェンジアップを交ぜる投球を心がけました。これまでのオープン戦でチェンジアップが通用することはわかったので、しっかりと投げられました」

 開幕戦の試合前はかなり緊張したが、それをしっかりと受け止めて、普段通りの投球を実践できた。

 春のシーズンでは、2勝にとどまったが、秋の開幕戦では最速152キロをマークし、脇腹を痛め、3.1回を投げたところで降板。それでも春よりスケールアップした投球に高く評価する球団も多い。

 佐藤は筑波大進学時に決めていたことがある。それはドラフト1位でプロにいくことだ。

「筑波にいく時から決めていたことです。4年間成長し、チームとしては全国。日本一。そして個人ではドラ1位でいくことです」

その目標は具現化できる可能性を持っている。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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