Interview

多くのプロを送り込んだ名将も絶賛。さらに輝きが増した二刀流・田村俊介の1年間

2021.10.08

 今年の高校生を代表する二刀流・田村 俊介。高校通算32本塁打、投手としても最速145キロ。明徳義塾中時代から注目を浴びてきた逸材は順調に遂げてきた。

 特にこの1年は高校生を代表する選手にふさわしい活躍を見せてきた。

 そんな田村がラストイヤーとドラフトへ向けての意気込みを語った。

畔柳など愛知の好投手の対戦を経て甲子園に出場

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田村 俊介(愛工大名電)

 田村のこの1年の幸先の良いスタートだった。
 練習試合解禁の一発目の試合が中京大中京だった。速球派右腕・畔柳 亨丞から本塁打を放った。

「ボール速いなと思ったのですが、僕もその試合に合わせて速い練習をしていたので、遅れることはなかったです。それでも今年初めての試合で、初スイングだったので、良いスタートを切れたなと思いました」

 

 その後も県外の好投手と対戦を重ね、県大会へ向けて、調整を重ねていた。そして県大会では左投げながら三塁を任されることがあった。これについて田村は
「監督さん(倉野監督)から指示をされたのですが、実際に守ってみて、違う視野で野球が見られて、サードすることで、投手をしているときに三塁手の難しさ、心理がわかったので良い勉強になります。捕球することはそこまで難しくなかったのですが、一塁に投げるとき、逆向きになるので、送球する難しさはありました」

 二刀流として注目される田村は投手としては強気に投げることを意識。また打者としては冬のトレーニングでパワーアップに成功し、打球の力強さが出てきたことを実感していた。そして夏の大会では投打で奮闘した。

「ピッチングは自分的には右打者の内角にクロスボールを投げることができたと思います。ただ、打撃は力みがあって引っ張りすぎてしまって、普段の打撃ができていないと反省しています。冷静になって逆方向に徹していれば良い打撃になっていたと思います」

 準決勝、決勝ではプロ志望の豪腕と対戦した。準決勝では、再び畔柳と対戦し、適時打を放ったが、レベルの高さを実感していた。
「スピード、ボールの切れは他の投手と違いました。あのタイムリーは、たまたま出たようなものです」と振り返る。
 そして享栄竹山 日向についてもボールの威力を実感していた。
「150キロが出ていて内角に厳しいボールを投げられて苦労しました。対戦した竹山くんは凄いですね。身長も体も大きいので向かってくる。ズドンとくる感じでしたね」

 こうして自身にとって初めての甲子園出場を果たした田村。出場の喜びを感じていたが、東北学院戦では2回3分の1を投げて、2失点とほろ苦い投球に終わった。
「自分の投球はテンポよく打撃に流れを持っていく投球 甲子園はデッドボールを当ててしまって自分の投球ができず、打撃も自分のリズムに乗れず反省している」

 それでも8回表には甲子園初本塁打を放ち、2安打を記録。大会注目打者として最低限の結果を残した。
「本塁打の場面については、8回に攻撃の流れをできるように、まず自分が打席が打席に立って、出塁しようと思っていました。あの本塁打は、浜風が結構つよかったので、思ったより伸びてくれました」

[page_break:改めて二刀流を目指したい]

改めて二刀流を目指したい

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田村 俊介(愛工大名電)

 甲子園初戦敗退となったが、田村にとっては大きな経験になったと語る。
「甲子園という大舞台でできたことはとても良い経験になったと思いますし、どのステージに進むにしても大きな自信になると思います」

 夏が終わり地元の京都に戻り、9月に入るまで静養をしていた。少しずつ走り込みを増やし、次のステージへ向けて体作りをしている。

 取材日では、木製バットの打撃練習を行っていたが、フリー打撃では長打性の打球を連発し、金属バットと変わらずに打てている。また田村はティー打撃で打球速度150キロ超えをマークした。面白かったのは、最初、ティー打撃で140キロ台の打球を撮影したので、それを終えて、他の選手たちの打撃練習を撮影している時に、田村が「温まったのでみてください!」と申し出てきたのだ。

 実際に凄い打球を見せていて、このように自分をアピールしたい性格なのが買いである。これほどの打撃を見せている田村が打撃で意識していることについてこう語る。
「ボールのラインに対して、バットを入れる。結果的にインサイドアウトのスイングになっていると思います」

 また木製バットでもこだわりを持っている。現在は900グラムで、ヘッドが重く感じるタイプだという。
「重くて、先が重く、遠心力で飛ばす打者。金属バットのときとはタイプが違います。イメージとして金属だと、折れる心配がないので無理やり乗せながら打つことができました。木製バットではしならせて、しなりで打つイメージに変わっています」

 これからも自分の理想に合うバットを探すという。
「現在のバットは自分のスイングに合っているのですが、コーチの方からはいろんなバットを使って、自分に合ったバットを探したほうがいいといわれていますので、これからも試していきたいと思っています」

 探究心の深さが伺えた。田村は二刀流だったからこそ成長できた部分が多いと語る。
「投手、野手の練習をやってみて思ったのは、左投手の内角は結構打ちづらいので、逆に投手だったときに左打者の内角を投げる。詰まってアウトを取れることができるので、打者で感じたことは投手に。野手で感じたことは投手に。そこについてうまく活用できたと思います」

 本人は二刀流で勝負したい気持ちはあり、それでもどちらか絞った時は、そこで一流選手を目指したいと思っている。目指す選手像を語った。
「ホームランだけではなく、場面、場面で対応できる打者になりたいです。ホームランを打つ打者になりたいですが、ホームランか三振という打者というよりも 対応力にこだわって、ランナーをかえせる打者になりたいです。投手としてはコントロールは大事だといって、自分自身、他の投手と違って速くないので、コントロールを磨いて打たせて取る投手になりたいと思っています」

 これまで多くのプロ入り選手を指導してきた倉野監督は田村の素質の高さを絶賛する。
「過去にも良い選手がいましたけれど、田村はそれにひけをとらない。歴代でもトップクラスの選手だと思います。打者としては長距離打者でもあるし、アベレージヒッターでもある。いろんな投手としてもマウンド度胸、プレート捌きの上手さは捨てがたい。本人は両方やりたいと思っていますが、大谷 翔平くんではないですけど、二刀流を目指してほしいと思っています」

 ドラフトへ向けて意気込みを語った。
「まだ何位でとってもらえるか。何位であろうと、少しでも即戦力としてチームに加わって、いずれはメジャーで挑戦したい気持ちです」

 中学時代から騒がれてきた二刀流としては果たしてプロの世界でも世代トップの位置に君臨するのか。大いに注目だ。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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