Interview

「三振狙い」から「打たせて取る」に転換し、東都No.1投手に 赤星優志(日本大)の意識改革【後編】

2021.10.01

 大学野球最高峰の東都大学野球。才能豊かな投手が多いこのリーグで、一気に東都NO.1投手になりつつあるのが、日本大の赤星 優志日大鶴ヶ丘)だ。一部昇格後、2試合連続完封。ここまで登板3試合で、防御率0.36と抜群の安定感を発揮している。そんな赤星はなぜ好投を見せているのか。その理由を探るべく、取材を行った。

 大学生らしからぬ老獪な投球を見せる赤星の考えは多くの投手の参考になるはずだ。

下級生時代の失敗を今の活躍につなげた

「三振狙い」から「打たせて取る」に転換し、東都No.1投手に 赤星優志(日本大)の意識改革【後編】 | 高校野球ドットコム
赤星優志(日本大)

 赤星の代名詞といっていいカットボール、ツーシームをマスターしたのは3年秋から。そして4年春までその精度を高めることをテーマとした。小さい変化を描くボールに対して、「ストレートとツーシームと同じ、カットボールを切るイメージでストレートに近いフォームで投げることを意識しています」

 今シーズンは一部昇格最短復帰と明治神宮大会出場。そして個人の目標では、プロ野球選手という目標を掲げ、公式戦に臨んだ。春の二部リーグでは、自分の投球が具現化できた投球だった。防御率0.82の好成績を残し、見事にリーグ優勝に貢献した。

「リーグ戦で心がけていたのは、直球とカットボールで小さく変化するボールを低めに集めて、打たせて取るピッチングをテーマにしてやっていました。この春では、それが上手くハマって良かったです」

 力むことなく、自分の投球スタイルである「打たせて取る」スタイルを確立した。
「昔から意識はしていましたが、それが一年生の頃は力んで三振を取りにいったりが多かったので、ランナーがいてもいなくても変わらない投球スタイルができるようになったので、それが大きいかなと思います。一年生の頃は三振が頭にあって、ピンチだったらこのバッターを三振という意識があったのですが、今年はまずこのバッター、最悪この次のバッターという、くさいところで、ストライクを取りに行くのではなく、ボール球を今年は使えるようになりました」

 

 どんな結果でもアウトになって0点ならばそれでいい。こういう割り切りができるようになったことで、赤星の投球の安定感はさらに増した。

 赤星の投球スタイルでもう1つ特徴的なのは、感情を表に出さないことである。抑えても、勝利しても変わらない。気合が入る東都入れ替え戦。1失点完投勝利を挙げた東洋大戦では淡々と整列に加わる姿を見て驚かされた。

 今までの東都入れ替え戦を振り返ると、どうしてもヒートアップするだけにガッツポーズする投手も多く、それが自然な感情だった。だからこそ、異質さが見えた。

「自分の場合、今まではガッツポーズしたりすることもあったのですが、そういう時は結構力が入ってしまい、バランスを崩してしまうので、1回から9回まで変わらないフォームで投げることで、いい結果に繋がったと思います」

[page_break:マウンドに上がれば、まるで別人]

マウンドに上がれば、まるで別人

「三振狙い」から「打たせて取る」に転換し、東都No.1投手に 赤星優志(日本大)の意識改革【後編】 | 高校野球ドットコム
春季入れ替え戦の最終戦でも好投を見せた赤星優志(日本大)

 東都入れ替え戦については、まさに赤星様々の投球だった。まず東洋大戦では、初回に1点を取られたが、以降は無失点投球。打たれる予感がしない抜群の投球だった。
「東洋大戦では、初回からヒットが出て、先制される形になりましたが、そこまで捉えられた当たりはなく、不運な内野安打でランナーを出すケースが多かったので、それを意識することなく、自分の投球を貫きました」

 立正大戦では、延長12回途中から登板。無失点に抑える好リリーフを見せ、一部復帰に大きく貢献した。
「厳しい試合が予想されたので、いつでも行けるようにと言われていたので、しっかり準備してました。(市川 睦と)2人の粘りのピッチングがあって、チームも点が取れない状況で粘ってくれていたので、それを崩さないようにマウンドに上がりました。入れ替え戦では負けたら終わりという部分が大きかったのですが、春リーグ戦でやってきた投球ができたと思います。勝った瞬間は嬉しい気持ちとホッとした気持ちが大きかったです」

 そんな片岡監督も、冷静な投球ぶりを高く評価している。

 仲間たちからこう評されている。「マウンドに立つと大きく見える投手」。実際に練習を見ると、大学生になると180センチ以上の投手が多いので、175センチの赤星は、やはり目立たない。また物静かな選手なので、見つけるのに、一苦労した。

 主将の峯村はこう語る。

「普段はおとなしめですが、マウンドに立ったらオーラが変わりますし、やってくれるという気迫はすごい感じます。体もデカイわけではないので、たまに練習中でも、どこかなーってなるのですが、投手陣の中でも先頭に立ってやってくれてるので目立つとこにいます」

 秋のリーグ戦に入っても、その存在感を発揮している。リーグ戦では、國學院大、中央大といずれも打力が高いチームに完封勝利。亜細亜大戦でも7回3失点ながら、自責点は1と、防御率0.36は防御率1位、投手タイトルを狙える位置にきており、東都一部は最終チェックのために、NPB全球団が視察をしている。そこでアピール出来たことは非常に大きいだろう。

 ドラフトを控え、赤星はこうアピールしたいと考えている。
「体がそこまで大きくない選手なので、持ち味であるまっすぐと小さく動かす変化球で打たせるピッチングができたらと思います絶対に負けないという気持ちでいつも投げています」

 その思いはマウンドにも表れている。16年秋以来のリーグ優勝と明治神宮大会出場を目指し、自分らしい投球を発揮し、勝利に貢献するだけだ。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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