Interview

濱地真澄に憧れて。超高校級投手・三浦銀二のターニングポイントは2年秋【前編】

2021.09.09

 今年の大学生を代表する投手として注目されるのは、法政大の三浦 銀二だろう。福岡大大濠時代は2年秋からエースとなり、秋季九州大会では3試合連続完封した。

 選抜大会では滋賀学園戦で再試合を経験し選抜ベスト8。最後の夏の福岡大会では決勝で敗れたが、防御率0点台の快投だった。そしてU-18代表に選出され、捕手の古賀 悠斗とともに出場した第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップに出場。3位決定戦のカナダ戦で快投を披露し、3位入賞に大きく貢献した。

 法政大進学後は、1年春から登板し、2度のリーグ優勝を経験。リーグ戦通算10勝、投球回数167回の三分の1、149奪三振は東京六大学に所属する現役投手の中ではトップの数字だ。

 今回はそんな三浦投手の野球人生やプロ入りにかける思いを聞いた。

濱地真澄に憧れて入学した福岡大大濠

濱地真澄に憧れて。超高校級投手・三浦銀二のターニングポイントは2年秋【前編】 | 高校野球ドットコム
高校時代の三浦銀二(福岡大大濠)

 三浦は、筑紫丘中時代、福岡軟式の選抜チームに選ばれるなど、当時から評判の好投手だった。そんな三浦が高校の進学先として選んだのが、福岡大大濠だった。

「一学年上にプロに行った濱地 真澄さん(阪神)がいたことがきっかけです。濱地さんは同じく福岡選抜に選ばれていて、その凄さを実感していて、自分の憧れでありました。浜地さんのような真っすぐが投げたくて大濠に行きました」

 入学すると、濱地だけではなく、2学年上には坂本 裕哉(立命館大-横浜DeNA)も在籍。投手陣のレベルの高さに驚いた。それでも好投手が多い福岡大大濠の環境は自分を高められる良い経験だった。

 好投手が多くても、一番の憧れは濱地であることは変わらなかった。濱地は15年夏、センバツ出場の九産大九州相手に3安打完封。ほぼストレートで押し切って完封勝利した試合を見て、その思いはさらに強くなった。

 「変化球はもっていたのですが、それでもそれに頼らずに、ほぼ真っ直ぐだけで抑えていく姿に憧れていました」

 

 新チームがスタートしてからは濱地のキャッチボール相手を務めることも多くなった。筆者は、濱地のキャッチボールを見たことがあるが、80メートルの距離ぐらいでもライナー性の軌道で投げ込む姿を見て驚かされた。三浦も同じ感想だった。

 「一緒にキャッチボールをすることが多くて、本当にすごくて、トレーニングも一緒にやっていましたが意識も全然違いました。濱地さんや、そして2学年上の坂本さんの2人の取り組みは大きな参考になりました」

 そして2年秋からエースとなった三浦。2年秋までと2年秋からの三浦では別人のような投球を見せるが、覚醒のきっかけは濱地だった。

[page_break:濱地真澄の左手の使い方を参考に覚醒。甲子園、世界の舞台で活躍]

濱地真澄の左手の使い方を参考に覚醒。甲子園、世界の舞台で活躍

濱地真澄に憧れて。超高校級投手・三浦銀二のターニングポイントは2年秋【前編】 | 高校野球ドットコム
高校時代の三浦銀二(福岡大大濠)

 「濱地さんの投球練習をじっくりと見ていたのですが、左手をもっと使えるのではないか。グラブをイメージより前に出すことを意識して投げるようになりました。こうすることで、コントロールも改善され、リリース時に指にかかるようになって、ストレートも速くなりました」

 理想の投球フォームを掴んだ三浦は、九州大会3試合連続完封を果たし、甲子園出場を決める。

 「濱地さんのような試合を支配する投球をしたかったので、それができてよかったです。2年秋は調子が悪くても修正ができるようになったのは成長点でした。九州大会はかなり疲れていたのですが、良い力の抜け方が出来ましたね。

 これまで頼りにしていた先輩たちがいなくなって、自分たちがやるしかない。自分たちが考えるしかない。それで自覚が出来たと思います」

 明治神宮大会では清宮 幸太郎擁する早稲田実業と対戦した。

 「自分の投球ができたかといえば、神宮で投げられたこと、清宮(幸太郎)、野村(大樹)と対戦できたことは自分にとって大きな財産です」

 この冬ではストレートの球威、コントロールをレベルアップさせることをテーマにトレーニングや投げ込みに打ち込んだ。

 甲子園ではベスト8。2回戦の滋賀学園戦では延長再試合を経験した。トータルで33イニングを投げ、自責点6と期待通りの投球を披露した。滋賀学園戦での投球を振り返ると、

 「あんまり覚えてないのですが、凄い疲れてて、負けるのは嫌だったんですけど、早く終わってくれと思っていました。それでも大会を振り返ると、冬にやってきたことが自信となって自分の力はある程度出せたと思っています」

 3年夏の福岡大会では、全7戦で3完封を含む6完投と圧巻の投球。惜しくも決勝戦に敗れ、甲子園出場は逃したものの、三浦の独擅場といっていい投球内容だった。

 「夏の大会は何があるか分からないと思っていました。というのも、濱地さんの最後の夏は初戦敗退でしたし、自分にとって夏投げるのは初めての経験。そういう不安を振り払うには、相手を圧倒できるぐらいの投球をしようと思っていました。

 初戦を切り抜けて、決勝までいけたのですが、最後詰めの甘さが出てしまったと思います。それでもあの悔しさがあったからこそ、現在まで頑張られたというのもあります」

 さらに自身の高校野球が終わった8月に高校日本代表に選ばれた。これまで実績からすれば納得の選出。しかし三浦は急ピッチで準備していた。発表されたのは21日。事前に伝えられたのは、16日だった。選ばれるとは思っていなかった三浦は、慌ててトレーニングと投げ込みを行って、代表に合流。強化試合ではあまり調子が上がらず、ストレスが溜まる日々だったと振り返る。

 それでも現地のマウンドは硬い仕様で、三浦にとって投げやすい環境だった。カナダ入りしてから徐々に調子を上げていき、3位決定戦のカナダ戦で先発。

 常時145キロ前後の速球でカナダの強打者を次々と三振を奪い、7回12奪三振、無失点の快投で3位入賞に大きく貢献した。

 「自分が登板機会がなくてストレスなどもあったのでその鬱憤もありました。三位決定戦で負けられないというのも分かっていたので自分のピッチングをしようと開き直れていたので、いい経験になりました。調子はめちゃくちゃ良くて打たれる気はしませんでした。高校3年間でストレートの勢いは一番良かったと思います」

 そして三浦は東京六大学の名門・法政大進学を決断する。法政大の歩みについては後編にて紹介したい。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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