Interview

高校通算56本塁打の吉野創士(昌平)の勝負強さは別格。高校野球終了後もさらに進化

2021.09.06

 9月に入り、プロ志望届提出者が解禁されてきている。その中で、今年の高校生を代表する外野手なのが、昌平吉野 創士ではないだろうか。高校通算56本塁打のスラッガー、俊足、強肩の大型外野手として注目を浴びてきた。そんな吉野の魅力に迫りつつ、この1年の取り組み、そしてプロ志望を決め、改めて思いについて聞きたい。

相手が強いほど燃えるタイプ

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吉野創士(昌平)

 吉野の成績を振り返ると同世代の外野手の中でもずば抜けている。1年春から公式戦に出場し、1年夏はいきなり2本塁打。2年生になって、厳しいマークを受けながらも結果を残し続けている。高校2年夏には打率.409,1本塁打という好成績を残し、準優勝した。

 そして高校2年秋は大爆発し、22打数13安打、3本塁打、12打点、出塁率.625、規格外の成績を残し、県大会初優勝に貢献した。

3年春 打率.357、2本塁打、4打点
3年夏 打率.292、1本塁打、4打点

 公式戦通算9本塁打。高校通算56本塁打のうち、16%を公式戦で打っており、公式戦11本塁打の智辯学園前川 右京に次ぐ本塁打数だ。

 さらに勝負強い場面を振り返ると、2年夏の浦和学院戦では、当時、プロ注目投手として話題だった美又 王寿(中大)から痛烈な二塁打、秋の大会では準々決勝、決勝戦で先制2ラン。春の県大会でも浦和学院の好投手・三奈木 亜星から2ランと、今年の昌平の勝ち上がりを支えていた。

 この1年、吉野はチームのためにどれだけ打てるかにこだわっていた。この春の浦和学院戦で本塁打を打った時、どんな心境で打席に立っていたのか?

 「相手投手(三奈木投手)も良かったですし。対戦はワクワクしていました。
初球、真っ直ぐがきたので、次、変化球と思ったら狙い通りきたので、上手く打つことができました」

 吉野自身、大事な試合ほど燃えると思っている。
 「関東、甲子園がかかった試合。良いチームと戦うほど気持ちのギアを1つでも高めるので、集中力がなおさら高まっています」

 ピンチの場面でも、ひるまずにポジティブな心境で打席に立てている。ここで打てば目立つという場面の一打で、ますます注目度が高まっていく。春の県大会では2打席連続の申告敬遠も経験した。厳しいマークを受け、なかなか結果が出ず、練習試合でも結果が出ない時が続く。

 「以前と比べて、厳しい攻めがきているのは実感していました。その時、黒坂監督から打てない時は我慢できるかだと言われているので、我慢しつつ、チームでできることを心がけていました」

 迎えた最後の夏では、5回戦の武南戦で本塁打を放つ。
 「今年の夏はいろんなプレッシャーもあり、さらに(1試合ごとに)甲子園がかかった試合でもありましたので、ホームランが出たことは、良い経験になったといいますか、良い形でホームランを打てたと思います」

 独自大会を含め、2年連続で決勝進出。決勝の浦和学院戦では、3打数0安打に終わり、吉野の夏が終わった。

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高卒プロ。そして活躍するために吉野の課題

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吉野創士(昌平)

 次の進路へ向けて一から打撃、守備を見直した。まず木製バットへの対応だ。

 「金属バットと違って、技術がないと飛ばせないです。イメージとしてはボールのラインに合わせて振るイメージです。でも木製は夏の大会前からずっと打てて、結構飛ばせていましたし、チーム内の紅白戦でも柵越えは打ったことがあります」

 実際に打撃練習を見てみると、鋭い打球を連発している。取材日で、吉野はティー打撃、マシン相手の打撃を繰り返し行っていたが、緩いカーブを打ち返す練習を行っていた。どんな目的があって行っているのか。緩いボールに対し、下半身が突っ込んでしまうと泳いだ形になってしまうため、踏み出し足(左足)で溜めた状態で打つ練習だという。この練習によって変化球にも待つことができて、さらにタイミングを合わせる練習にもなりる。また吉野はこうした練習の中で、スイング軌道を確かめていた。

 いかにボールに力が伝わるスイング軌道ができるか。そのことに試行錯誤している様子が見られた。

 さらに守備面についても見直した。
「この夏の大会で、自分自身、隙というのがあって、あまり満足いく守備ではありませんでした。この夏休みでは、一歩目の確認、打球感覚を身につけました」

 後輩との守備練習に参加した吉野は、外野手として交じり、内野ノックではサードの練習も行っていた。野球選手としての幅を広げる工夫も行っていた。
「サードの守備についてはそれほど違和感なく動くことができています」

 吉野はプロ志望を表明した。現在は練習を続け、指名を待つ。
 「何があるかわからないので、練習できる限り、アピールをしていきたいと思います」

 最後に意気込みを語ってもらった。
 「誰からも愛される選手になりたいと思います」

 近年、埼玉は浦和学院花咲徳栄の両名門の選手の指名が続いているが、この2校以外の埼玉の高校から、高卒で、さらにドラフト本指名された野手は、14年のドラフトで北海道日本ハムから8位指名を受けた川越工出身の太田 賢吾が最後となっており、吉野は7年ぶりの快挙を狙うこととなる。

 1年春から同世代の外野手では突出した活躍を見せていた逸材は、そのままスタープレイヤーになることができるか。ぜひ吉野が語った意気込みを叶えてほしい。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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