Interview

「中学時代実績なし→愛工大名電の4番」宮崎海の野球人生に迫る

2021.07.06

 12年ぶりに春の愛知県王者に輝いた愛工大名電。名将・倉野監督の指揮のもと、二刀流・田村 俊介、エース・寺嶋 大希など強力な投手たちが揃う今年のチームだが、打線の軸を担っているのは4番・宮崎 海だ。

 愛知県大会では27打数11安打1本塁打と活躍した。同じ愛知私学4強・東邦との準々決勝ではサヨナラ打。決勝の享栄戦ではホームランと、優勝に大きく貢献するバッティングを見せてくれた。今回は東海大会でも活躍が楽しみなスラッガーの野球人生を追っていきたい。

実績なくても、バットを振り続けてアピール

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練習中の宮崎海

 宮崎の野球人生の始まりは幼稚園の年中と早い。小さな野球教室から始め、1もしくは4番に座るバッターとして活躍。長打力を持ち味にしていたというが、中学2年生から名古屋北リトルシニアに入団。硬式野球に転向することを決意した。

 ボールやバットの変化によって、硬式を始めた最初は苦労する選手もいる。そのなか「逆に硬式の方が合っていました」と一言。硬式に変わったことによる苦労をあまり感じることなく、スムーズに硬式野球の世界になじんでいった。

 「練習は週6日あったんですが、とにかくバットをたくさん振ったことは覚えています。ランニングやトレーニングも、もちろん大変でしたが、そのおかげもあって下半身を使ってバットを振れるようになりました。なので、上半身はリラックスしてミート重視のスイングにしても、下半身に力があって使えているので、ボールを遠くに飛ばすことが出来ました」

 中学時代は通算8本塁打とまずまずの結果を残したが、大きな大会への出場実績は残せなかった。そんな宮崎が高校で選んだのは地元愛知の名門・愛工大名電だった。
「中学3年生の時に甲子園に出場したこと。あとは中学時代の先輩だった西脇 大晴さん(現亜細亜大)が進学されていたのが、自分の中の決め手になりました」

 愛知だけにとどまらず、高校野球界のなかでも屈指の名門校である愛工大名電。スイングスピードは140キロほどを計測する能力はあったものの、練習はハードで、選手間の競争も激しい。田村のような全国での実績がない宮崎は、とにかくバットを振ることで首脳陣にアピールを続けてきた。こうして公式戦デビューを掴んだのは秋の1年生大会だった。

[page_break:スイング力アップで、逆方向にもアーチ]

スイング力アップで、逆方向にもアーチ

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享栄戦の宮崎海

 チームは決勝戦の享栄戦で敗れたものの準優勝。初めての公式戦を終えて、宮崎も「進塁打といったチームバッティングの大切さを学ぶことが出来ました」と収穫のある大会になった。

 この課題を胸にしながら、冬場の期間、あえて再びバットを振り込むようにしたという。
 「春になってからバッティングの技術を磨いていければと思っていたので、冬場はとにかく振りました。それで最終的に、逆方向に強い打球を打てるようになれればと思っていました」

 しかし、昨年末から蔓延している新型コロナウイルスの蔓延に伴って、愛工大名電は練習自粛を余儀なくされた。練習を再開したものの夏の独自大会ではメンバーに入れず。宮崎は現在のチームになり、主力選手としてポジションを確保するようになった。

 夏休みは新型コロナウイルスに伴って短期間となり、チームはできる限り練習試合を組んできた。宮崎も結果を残してきたが、秋季県大会では2回戦・愛知産大三河の前に敗れた。「チーム全体で守備は課題でしたが、自分のエラーで負けました。バッティングでもチャンスで打てませんでした」

 冬場はパワーを上げながら、今度こそチームバッティングを習得するべく練習を積み重ねた宮崎。その成果として、春の県大会ではバットでチームに貢献することができ、秋の悔しさを晴らした。

 「春の大会で打点はチームトップ。東海地区でもホームラン数はトップになれるように頑張りたい」と意気込んで迎えた春の県大会で、打点チームトップの7打点をマークした。まさに有言実行の結果だが、宮崎はバッティングに対してどういった意識を持っているのか。

 「野球を始めたころはアッパースイングだったこと。そしてボールに回転をかけるためにも、上から叩く。ボールに対して強くミートすることを意識するようにしました」

 なかでも大事にしてきたのが、ティーバッティング。そのなかでスイング軌道を意識してきた。ただ、軌道だけではなく、ポイントの広がりも高校通算20本塁打に繋がっている。
 「新チームから増えてきましたが、逆方向に打てるようになって、ミートポイントが広がりました。おかげでチームバッティングもですが、ホームランも逆方向に打てるようになりました」

 すり足でタイミングを計るようにしたこともあるが、大事にしているのは引っ張るイメージだ。
 「基本的に体の前にポイントを置いて打つようにしています。ただセンターから逆方向については、踏み込んで逆方向に引っ張るイメージでスイングをしています。元々引っ張ることが得意なこともありますので、ポイントは変えずに打つようにしています」

 愛工大名電では倉野監督の育成方針のもと、1年生の時はスイング力をとにかくつけさせる。2年生から対応力を磨くように指導にあたっている。宮崎はまさに典型的な選手であり、倉野監督も「試合の中で結果を残せているので、宮崎本人も成長に気づいていると思います」と語っていた。

 倉野監督の指導のもとでスラッガーとしての才能を開花させつつある宮崎。東海大会では2試合で打率4割という結果を残し、夏へ向けて弾みを付けた。愛工大名電が誇る強打者として夏の大会で活躍することを楽しみにしたい。

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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